#141 投票用紙に書いて良いことダメなこと

選挙の投票用紙には書いて良いこととダメなことが明確に定められている。
個人を選ぶ選挙の場合、書いて良いのは候補者の名前だけで、それ以外のことを書くとその票は無効票となる。

例えば、応援メッセージや記号、場合によっては線一本でもその票が無効になる場合がある。なぜかというと、特定の記号やメッセージが、誰が票を入れたかを表わす合図になりかねないからだ。例えば、「私に票を入れてくれたら10万円あげます。投票用紙に自分の名前は書けないので、右上に☆マークを書いておいてください。それが確認できればお金をあげます」というような具合だ。このような候補者による買収を防ぐために投票用紙には候補者の氏名以外は書いてはいけないと定められているのである。

しかし、例外的に書いて良いこともある。
・「さん」「くん」「様」などの敬称(「ちゃん」は無効)
・候補者の所属政党(所属していない政党を書いたら無効)
・住所、生年月日、旧姓、職業
こうした情報は書いても無効にはならない。しかし、本来名前だけ書けば良いので、余計なことを書けば書くほど誤記などで無効票になる可能性は高くなる。名前だけ書くのが無難だ。

では逆に、必要なことを書かなかった場合はどうなるのか。
2023年4月23日に行われた中野区市議選。定数42名で60名が立候補し、参政党の田中裕史氏が43番目の票数となり落選した。42番目の当選者の得票は1585票、落選した田中氏の得票は1584.585票だった。「0.415票差」の落選だった。

1人1票の平等選挙が原則のはずだが、なぜ選挙結果に小数が生まれたのか。こうした小数の票は「按分(あんぶん)」とよばれている。名字や下の名前が同じ候補がいた時に、同じ部分だけが書かれた投票用紙があると、候補者が得た票の割合に応じて該当の票が分割される。
今回の中野区では下の名前が同じ候補がいたため、按分が生じたのである。

投票用紙に必要ないことは書かない方が良いものの、候補者を判別するために必要なことは書く必要がある。
2019年の千葉県勝浦市議選では、現職と新人で同姓同名の「鈴木かつみ」氏が2名立候補した。選挙管理委員会は2人を区別するために「住所」を投票用紙に書くように呼び掛けた。現職の鈴木さんの住所は「勝浦市植野」、新人の鈴木さんは「勝浦市佐野」、それぞれ投票用紙に「植野 鈴木」「佐野 鈴木」と書くように、街頭演説やポスターなどで呼びかけが行われた。
選挙当日、投票用紙を記載する机にある候補者一覧表には通常は候補者の氏名・政党のみが書かれているが、例外的に住所も記載されたそうだ。

投票用紙には余計なことは書いてはいけないが、必要なことは書かなければならない。

【参考】



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