#231 「パーム油」って何?

地理の授業でたまに出てくる「パーム油」とは、具体的にどんな油なのか。
パーム油とは、「アブラヤシ」から採れる植物性の油である。
「ヤシ」の実からつくる油は「ココナッツオイル」なのでパーム油とは異なる。

熱帯地域で育つアブラヤシの原産国は西アフリカや中南米だが、1960年代から70年代にかけて東南アジアでプランテーションが開発されたことから、現在では生産量のほとんどをインドネシアとマレーシアが占めている。

アブラヤシは20m以上に成長する。木の先端付近に実がなるため、収穫の際は長いカマを使ってひとつづつ実を切り落とさなくてはならない。それを高温多湿の気候の中で行わなければならないため、労働者にとっては過酷な労働となる。

また、プランテーション開発のために森林伐採が進み、深刻な環境問題となっている。森林伐採はその地域を乾燥しやすくしてしまい、山火事が発生する原因となっている。
広範囲の山火事による煙は「ヘイズ(煙害)」とよばれ、深刻な大気汚染をもたらしている。

畑の近くの熱帯雨林に暮らすゾウやオラウータンが畑に入り込んでしまうと「害獣」として扱われ、捕獲されたり殺されたりしてしまうという問題もある。

なぜこれほどまでに環境破壊を顧みずアブラヤシの栽培がおこなれているのか。それは、パーム油が現代人にとってかかせない食料となっているからである。

日本に輸入されるパーム油の80%は食用で、インスタント麺や調理済み冷凍食品、ポテトチップスなどのスナック菓子、ファストフード店や外食店舗の業務用揚げ油として、マーガリンやショートニングの原料として、また加工食品の材料としてチョコレート、アイスクリーム、ドーナツ、ビスケット、コーヒーフレッシュ、カレーのルー、乳児用粉ミルクなど、わたしたちが毎日のように食べる食品の材料に使われています。また非食品としても洗剤やシャンプー、口紅、塗料、ねり歯磨きなどに使用されます。

「3分でわかるパーム油」https://www.bctj.jp/3minutes-palmoil/

このように、パーム油は主に加工食品の原料や揚げ油として使用されているため、「見えない油」とよぶこともある。オリーブ油や菜種油、ラードなどと違って、直接買うことはほとんどないかもしれないが、実はわたしたちが毎日のように口にしている油である。

パーム油に使用される酸化防止剤は発がん性物質であり、パーム油の接種は健康面のリスクもあると指摘されている。

環境面・健康面への問題など、さまざまな課題のあるパーム油だが、現代社会にとって欠かせないものとなっている理由はその生産性にある。

アブラヤシは、1ヘクタールの土地からとれる植物油の量が圧倒的に多い。
菜種油が0.59トン、ヒマワリ油が0.42トン、大豆油が0.36トンなのに対し、パーム油は3.8トンである。

パーム油が担っている消費量を他の植物性油で補おうとすると、新たに広大な畑をつくる必要がある。パーム油に頼らなければいけないという現状があるものの、パーム油の大量生産が引き起こすさまざまな問題に目を背けてはならない。

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【参考】


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