第19話 村山談話は朝日新聞の「おかげ」

 日本会議は、村山談話が大嫌いだ。こんな屈辱的な談話は、絶対に許せんらしい。どこが屈辱的なのだかちっともわからない。原文を引用しますので、読んでください。

(引用開始)
村山内閣総理大臣談話

「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)
平成7(1995)年8月15日

 先の大戦が終わりを告げてから、50年の歳月が流れました。今、あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。
 敗戦後、日本は、あの焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり、そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、米国をはじめ、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを、心から喜びたいと思います。
 平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。
 いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。
 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
 敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。
 「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。
(引用終了)

 上記の一体何が問題だと言うのだろう?まさか、侵略戦争ではないといいたいのか?そんなことを主張するものは、馬鹿もしくはカルトというしかない。
 貿易立国の日本の首相が、50年間も被害国のアジアへの謝罪を公式発表して来なかった方が異常である。自民党が単独で政権を維持し続けていたら、75年以上を経た現在でも、このような謝罪をせず、アジアで孤立していたことだろう。
 社会党と連立し、社会党党首の村山富市氏が首相だったから発表できただけなのである。
 なお、この問題については、日本会議の前身である「日本を守る会」及び「日本を守る国民会議」と村山内閣の間で侵略に関する文面を巡っての激しい攻防があった。そのことは、菅野完著『日本会議の研究』で解説されており、下記で読むことができる。

「安倍談話」の有識者会議座長代理の変節から浮かぶ「圧力」の歴史――シリーズ【草の根保守の蠢動 第7回】 https://hbol.jp/33866

「安倍談話」に垣間見える日本会議主要メンバーによる「20年前の意趣返し」――シリーズ【草の根保守の蠢動 第14回】 https://hbol.jp/56319

「日本会議を作った男」・村上正邦に聞く、「安倍談話」と「戦後50年決議」の真相――シリーズ【草の根保守の蠢動 番外編第5回】 https://hbol.jp/57851

長文を読むのが苦手な人用↓
 
安倍政権を見極める㉒
政権を支える特異な人々③ 日本会議①
 http://naotatsu-muramoto.info/nihonnomondai/mondai.seiji30.html
 
 なんと、自民党タカ派は、日本軍のアジアでの行いを侵略とは考えていないのである。あれが、侵略でなくて、何だと言うのだ?超大国となった21世紀の中国が日本を同じように占領支配しても侵略ではないと喜んで受け入れるのだろうか?加害の歴史を認めようとしない愚か者たちであることがよくわかる。はっきり言えば馬〇である。嘆かわしいことに、その〇鹿の代表格が戦後最長の長期政権である安倍首相自身なのである。トホホ。

 なお、この談話が発表された背景として、中国との国交回復がある。それまでは、東西冷戦で国交がなかったので、日本は中国に対して謝罪をすることを免除されていた。しかし、アジア諸国が徐々に経済発展をし、日本の大事な貿易相手国に成長していくようになると、まともなハト派の政治家は、先の大戦について、政府が明確に反省をし、謝罪すべきだと考えたのである。

 この前には、1972年に朝日新聞記者の本多勝一著『中国の旅』が発行され、中国での日本軍の蛮行が紹介されたり(前述のように「万人坑」は作り話だったのだが=A)、 慰安婦問題について、吉田清治の嘘の証言を報道したり(=B)した。また、いわゆる第一次教科書問題(「侵略を侵攻に訂正させた」は誤報=C、だったし、そもそも内政干渉だという疑問は残るが=D)が起こり、政府としてけじめをつける必要があったのである。

 いずれにしても、日本軍がアジア諸国を侵略し、蛮行を行ったことは誤魔化しようのない事実なので、上記の朝日新聞他のミスであるAやBやCやDは、アジアとの友好を重視する点からいえば、塞翁が馬の有益なミスであったともいえる。今まで公式に謝罪してこなかった自民党政権が悪いのである。

 ということで、
 村山談話は朝日新聞のおかげなのである。

 そして、この村山談話と後に続く河野談話が、歴史修正主義者達の怒りを招き、日本会議の結成、歴史修正主義の大躍進を招き、今日に至るのである。
 全く迷惑な話だ。おとなしく、村山談話と河野談話を踏襲すれば良いだけなのに?馬鹿な歴史修正主義者のために、日本は戦争への亡国の道を歩むことになるのである。