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安保委:長期契約法改正案 質疑(重徳和彦2019/03/08)

特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法(通称「長期契約法」)の一部を改正する法律案 趣旨説明に対する質疑(衆議院安全保障委員会) ※要旨

産業再編の必要性

○重徳和彦委員 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。
 昨日の本会議でも質問したが、防衛産業の再編の必要性について、質問をさせていただきたい。
 長期契約法の目的は調達コストの縮減・安定化と言われているが、先月、国内メーカーのコマツが装甲車両の開発・生産から撤退されることになった。長期契約法は、ひいては国内産業の育成につながるというイメージをおそらく国会議員の皆さんも持っていると思うが、ここ数年のFMSの急増やコマツの撤退など、その印象が随分変わってしまった。そういうこともあって野党からは反対論も出ている面もあると私は思っている。
 実際、防衛装備品は各企業が頑張ってつくっていただいているという感じで、「もう企業努力も限界を超えている」「もう使命感でやっている」と聞いている。こういうときは本当に、最新技術をどう育てていくのか、真剣に考えていかないといけない。
 再編、いわゆる統合というイメージだが、きのうの大臣の答弁だと、もしかしたら再編になるかもしれない、そんなことを期待しながらいろいろやっていきますという感じで、強い指導力を発揮するという印象はなかった。
 大臣にお伺いする前に、きのうの大臣の答弁の中で「効率化を促す各種政策に取り組む」とあったが、これは具体的にどういうことをやられるのか。参考人に伺いたい。
○深山延暁防衛装備庁長官 昨日岩屋大臣が答弁した「企業への効率化を促す施策」とは、中期防に具体的に記述しているが、装備品等の価格算定をより精緻化・適正化するため企業の提出する価格等に係る情報のデータベース化を推進する、民生品の活用や部品の共通化など価格低減に資する提案を企業側への要求事項として盛り込む、企業による競争力強化やコスト低減に資する取り組みや成果を積極的に評価し利益に反映するなど企業間の競争環境を創出するための契約制度の見直し、などを念頭に置いている。
 個々の企業の組織のあり方はあくまでも各社の経営判断によるものであろうとは思うが、こうした取り組みを通じて、結果として生じる企業の再編統合も視野に、防衛基盤の効率化・強靭化を図ってまいりたい。
○重徳和彦委員 主にコストの低減を促すという答弁だったが、唯一の発注者である防衛省がしっかりしないと、つくる側も意識が変わらない。
 欧米では90年代から、ロッキード・マーティンという非常に大きな会社が生まれたり、ボーイングもマクドネル・ダグラスを合併し非常に大きな会社になったり、ヨーロッパでもエアバスが国境・国籍も越えて大きな企業グループへと集約されたり、もう20年来の取り組みを続けている。こんな状況の中で、日本だけは使命感でギリギリやっている。
 こういうことに対して、再編という大きな方向性として、防衛省が発注者側としてもっと対話を。日常のいろいろなやりとりをしていると思うが、もう少し具体的に、担当者レベルというか、誰が、どういう人たちと、防衛省側と企業側が対話をしているのか。そういう中で再編ということについてどの程度意識を促しているのかお聞きしたい。
○深山延暁防衛装備庁長官 どのようなレベルの者がどのような対応しているかというお尋ねだった。
 私は防衛装備庁長官を拝命しているが、着任以来、企業の方々とは私のレベルで、防衛部門の幹部の方あるいは会社の幹部の方に、現在の防衛産業が置かれている状況、発注者側から見た状況をいろいろとお話しする機会をできるだけ多く持ちたいと思い、持たせていただいている。
 また、部長・課長レベルにおいても、これはどちらかというと「今行おうとしている施策について、こういうことが必要なんだ」という観点だが、企業との勉強会などを持ち進めている。
 「こういうふうに統合しろ」みたいなことを我々が一義的に申し上げるのはなかなか難しい点もあるが、意見交換をしていく中で、効率化あるいは再編も念頭に防衛基盤全体の底上げを図ることをやっていきたい。
○重徳和彦委員 なかなか防衛省からは言いにくいという、それはわかるような気もするが、一方で三菱重工の大宮英明会長、要するに民間企業側も、「日本版エアバス」と称する再編の必要性があるとおっしゃっている。長官も官僚トップであるが、やはりここは政治責任者である岩屋大臣に一層のリーダーシップを発揮していただくべきではないか。
○岩屋毅防衛大臣 今ご紹介された企業側の発言は承知しているが、防衛大臣という立場からそのご発言に直接コメントすることは差し控えたい。
 その上で、先生の問題意識は私も共有している。日本の防衛産業は防衛省だけがずっと顧客だったこともあり、高コスト構造や国際競争力の不足といった問題を抱えている。昔は武器輸出禁止三原則があり、一切の装備移転はまかりならんという時代が長く続いた。この三原則を新しい防衛装備移転三原則に改め、我が国の安全保障に資することであれば国際共同開発・生産にも道は開かれているが、長らくそういったことに対する取り組みが積極的にはなされてこなかったことも事実だ。
 こうした現状を打破していくために、どう防衛産業を将来に向けて構築していくべきか。まずは防衛関連産業間で再編を含めてしっかりと意見交換していただくことが重要だと考えており、防衛省としてもそういった企業側の取り組みをしっかり後押ししていきたい。
○重徳和彦委員 大臣の現時点での認識はわかった。引き続きこのテーマは追いかけていきたい。

長期契約の実績

○重徳和彦委員 長期契約法について事実確認だが、これまで長期契約の適用対象となった装備品が、どのくらい実績としてあったのか。全体の数に占める機種数、それから金額ベースでお示しいただきたい。
○武田博史防衛省大臣官房長 平成25年に決定した中期防において整備することとされている主要装備品は22種類。これまでに長期契約の対象となった装備品は、P1固定翼哨戒機、SH60K哨戒ヘリ、CH47JA輸送ヘリの3種類で、全体に占める割合は約13.6%となっている。
 金額は、平成31年度予算案を踏まえた後年度負担の総額、すなわち平成32年度以降に支払う経費の総額は、SACO米軍再編関係経費等を含め、約5兆3613億円。このうち長期契約に係る後年度負担の額は約4108億円。総額に占める割合は約7.7%となっている。
○重徳和彦委員 今の数字を見ると、数ベースで13.2%、金額ベースで7.7%。全部が長期契約なわけでもなく、むしろ限られた数であり金額だと見ることができると思う。
 新しい中期防において、今回改正される法律に基づいてどのように装備品の選択をしていくのか。今のようなイメージを持っているのか、もっとふやしていこうとしているのか、あるいは減ることもあるのか。大臣の見通しを伺いたい。
○岩屋毅防衛大臣 長期契約法というと、何か防衛省の調達を全部そうするのではないかかと誤解をされることもあるが、もちろんそういうことではなく、もともと平成27年の法制定後、長期契約の対象となる装備品の選定に係る基本的な考え方を示した指針ができている。
 その要件は、中長期的な防衛所要を勘案した上で、確実かつ計画的に調達することが不可欠な装備品のうち、仕様が安定し長期契約によるコスト縮減効果と調達の安定化の効果が十分見込まれるものを対象にして、財務大臣との協議を経た上で慎重に判断しており、今後もこの方針は変わらない。
 したがって、まだふえるか減るかということについてまで言及はできないが、この指針に基づいてこれからもやっていく。

FMS調達 F35完成機輸入方針への転換

○重徳和彦委員 最後にFMSについて1点お聞きしたい。
 今、F35Aを調達しているが、これまで数年間はFACO機、国内企業が最終組み立てや検査をやり製造に関与していた。これによって、もちろん若干割高なコストになってしまっている面もあるが、国内技術者が最新のステルス機の製作に直接触れる機会になり、一定の技術の習熟に資するという観点からいうと意味のある、国内技術を涵養するという意味でも意味があることであったが、いろいろな事情を加味して、このたび完成機のアメリカからの輸入に完全に切りかえる方針になった。
 このことをどう大臣は捉えておられるか。今までのFACO機も大変意味があったので、本当に苦渋の決断ということなのか、いろいろやってみたけども、全部買ったほうが安いという感覚なのか。そのあたりの認識をお聞きしたい。
○岩屋毅防衛大臣 ご指摘のように、今般、FACO機による調達ではなく完成機を調達することにした。それはやはりF35Aの機体価格を一層低減する必要があるということが最大の理由だ。完成機輸入における機体単価は、国内企業が製造参加した機体単価に比べてコスト面で非常に有利であるからだ。
 しかし、FACOによって一定量、30機だが、最新鋭の戦闘機の製造技術等に習熟できたこと、まだ34年まで続いていくので習熟できることは非常に意味のあったことだと思う。必要な機数をできるだけ低価格で調達する観点から完成機輸入に切りかえるという苦渋の決断をしたが、FACOでの知見経験はこれからに生かしていかなければいけないと思っている。

(以上)

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