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「コロナでも強い」ファストフード業態の作り方

コロナ禍以降大きく変化した外食業界における外部環境。そうした変化に応え成長している業態が専門店型ファストフード業態です。同業態の開発に取り組むうえでのポイントをお伝えします。

「ファストフード業態」の需要が高まり続ける背景とは?

はじめに、コロナ禍を受けて、外食産業に起こった変化を立地・客層・利用同機・組人数といった観点から見ていきましょう。
コロナ以前であれば、客単価も大きく合計金額も見込みやすかった宴会の需要をいかに開拓するかが大事であり、そうした需要に応える業態開発が業績向上のカギでした。
けれども、コロナ禍以降のニューノーマルの市況ではそうした団体需要は激減。日常に近い立ち位置で利用されるおひとり様需要が活況となりました。
結果、従来の一番立地であるビジネス街や駅前・繁華街よりも郊外ロードサイド、飲み利用よりも食事・お持ち帰りの利用同機を押さえた業態を開発できるかが、ニューノーマル時代の業績向上のカギとなっています。

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加えて、相対的に外食の機会が貴重なものとなったことで、消費者が1回あたりの外食を大事にするようになりました。
そのため、消費者の動き方は、「とりあえず店へ赴きメニューを見ながらその場で食べたいものを探す」という動き方から、「外食ならではのものを食べに行く」という動き方に変化。
総合型の品ぞろえの居酒屋やファミレスよりも、専門性や本物感・実演による価値等を有した業態、更に節約志向や生活防衛の意識に応える業態が求められるようになりつつあります。
こうした大きな変化を受け、「外食ならではの価値を提供できるファストフード業態」の需要が高まっているのです。
翻ってみれば、高級店ばかりだった焼き肉店は食べ放題業態、次いで一人焼肉業態へ。ハレの日の代名詞であった鮨が回転寿司業態、次いで立ち食い寿司・おむすび業態へとそれぞれカジュアル化しました。
こう考えると、原理原則に即したファストフード業態は今後も成長基調にあると言えるでしょう。


時流業態「専門店型ファストフード業態」7つのポイント

ただし、ファストフード業態であればどのような業態でも良いわけではありません。ファストフード業態であることに加え、高い専門性とお客様の多様なニーズに応えられる業態、即ち専門店型のファストフード業態である必要があります。
では「専門店型」とはどのようなポイントを押さえた業態なのでしょうか?具体的には、以下の7つのポイントが挙げられると私たちは考えています。

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こうした点が専門店型のファストフード業態を確立させるうえでのポイントとなります。明確にイメージをいただくために、経営戦略セミナーで講演いただいたやる気様のファストフード業態である韓丼を参考に、具体的に見ていきましょう。
①商品構成の考え方(料理ジャンルの選定方法)
市場規模の大きいものを初めに押さえるという、外食の王道は変わりません。けれども、ファストフード業態とすることで客層の裾野が広がり、成立可能な業態の候補が広げることが可能となります。
実際に韓丼では、焼肉等のマーケットサイズの大きな商材を、ファストフード業態化することで、更に裾野を広げることに成功しています。

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②日常利用動機を獲得する価格戦略
ファストフード業態の予算帯は500円前後で、ファストフードならではの気軽に食べられるのが訴求ポイントです。
ですので韓丼では「500円から食べられる」と店頭で打ち出し、入口価格を下げることでお客様の入店をしやすくしています。その上で、サイドメニューや追加注文への誘導等を通じて1000円予算へのチャレンジを行っているのです。

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③商品の専門性を高めるための実演機能の作り方
もちろん、ただ追加はどうですか?と言うだけでは500円で食べるつもりだったお客様も戸惑いますから「追加料金を払っても食べたい」と納得して行動していただくよう誘導する必要があります。
そのために重要なのが「シズル感」それを見せる実演機能を店舗中央に据えることで、ファストフード“なのに”本格的な料理を提供しているという訴求が可能となります。これが専門店としての訴求に繋がり、ファストフード業態でありながら1000円予算へのチャレンジが可能となるのです。

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④生産性向上を実現するためのポイント
生産性向上のために、やらないことを決める専門特化は欠かせません。韓丼では、売るための必要機能に絞り込むセルフサービス化を徹底しています。郊外でも定着が進むとともに、非接触な市況もこうした取り組みを進める後押しとなっています。

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⑤テイクアウト比率を高めるためのポイント
店舗を利用されたことのある方はもちろん、初めての方にもテイクアウト利用がしやすい点を訴求する必要があります。
そのため、韓丼では、徹底的に店頭告知を行うだけでなく、店内設置のパンフレットで品揃えを見える化。更に、TEL/WEB事前予約を推奨し、利便性向上を促しています。

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⑥人材活用(PA.スタッフ×職人活用)
ファストフード業態を新規に開発する場合、従来活躍していた職人を軽んじることを意味しません。むしろ今まで培ってきたノウハウを活かし商品開発に回ってもらい、そのノウハウを機械化&簡易化でPAスタッフでも回せる体制をつくるという視点が肝要です。
⑦出店戦略のポイント
駅前・繁華街やビジネス街ではなく、郊外ロードサイドに出店することがポイントです。出店候補地が多く、賃料が低いだけでなく、大手チェーンと競合しづらい点が挙げられます。更に、地域でドミナントを形成しやすいことも見逃せません。
以上、やる気様のファストフード業態である韓丼を参考に、専門店型のファストフード業態を具体的に見てきました。
そして、こうした「専門店型」という切り口は、外食だけでなくテイクアウト専門店の業界でも求められるようになりつつあります。
テイクアウト専門店は、ホール接客がオペレーションや教育、初期投資が低いというメリットから参入しやすい一方、今回のコロナ禍を受けて新規参入が続出。自社の強みを活かした業態設計を行う、実演やチルド食材を活用する等、大手や他社がやりたがらない「専門店」要素を盛り込むことが差別化上必要となりつつあるためです。
飲食業界において、ニューノーマル時代に適応した新規事業開発の成否は、今後益々経営の趨勢を分けるカギとなることは明らかです。
現在は新たな取り組みを進めるための補助金などを活用し、そうした推進が行いやすい時流となっていると言えます。

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