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私を育ててくれたもの⑧            フランソワーズ・サガン

1977年に誕生した集英社の『MORE』にフランソワーズ・サガンのインタビュー記事が掲載されたことがあった。サガンは1954年『悲しみよ こんにちは』を出し、その翌年には出版部数が100万部を超えた。
サガンのことはご存じの方も多いだろう。私は『MORE』のインタビューを読み、小説ではなく生きているサガンに触れられたことに喜びを感じた。
インタビューでは、結婚して子どもを産み、毎日どのように考え、生きているのかを赤裸々に語っていたと思う。

多くのサガンの本のなかでも、私が特にすきなのは『愛と同じくらい孤独』である。この本のあとがきで翻訳者の朝吹由紀子は次のように書いている。

処女作『悲しみよ こんにちは』以来のインタビューをサガン自身が読み返し、手を入れてまとめられたこの本は、彼女のおいたち、結婚、息子ドニとの今の生活を語るとともに、彼女が人生について、愛、子供、社会についてどのように考え、どのように反応しているかをはっきりと描き出している。

フランソワーズ・サガン『愛と同じくらい孤独』あとがきより

 サガンがデビューしたのは18歳、瞬く間に時の人となった。しかし、サガン自身はカメラマンや記者の質問にすっかり当惑したと語っている。そのため、はじめは「さあ…わかりません」と答えていたが、答えられない質問には口を閉ざすようになると、いつのまにか「サガンは沈みがちな人」だと勝手に作り上げられてしまった、という。

インタビュアーに、「スキャンダル的なところが受けたと言う人もありました。何年かあとだったら、きっと話題にならなかったと」
そう言われ、サガンは次のように答えている。

……複雑な恋愛関係を背景に、一人の女の子が男の子と肉体関係を結ぶ、というごく簡単な物語ですが、その女の子は結果としての道徳上の悩みを持たないわけです。今はそういう肉体関係に結果だとか当然の帰結のようなものを伴わせたらかえってスキャンダルになるでしょう。当時は逆だったのです。今でしたら完全に時代遅れですけど。

サガン『愛と同じくらい孤独』

「あなたは自由な女性ですか?」にはこう答えている。

 責任のある職を持って、1日7時間個室のオフィスにいる自信たっぷりの自由な女性のくどくどしたお説教はひどく退屈に思うのです。わたしは夢見たり、何もしないで、ただ時間が過ぎるのを待っているのが好きです、だからと言って空しいと思ったり退屈したりすることは決してありません、これが自由です。わたしは相変らずいやなことを自分に強いることができません、人生をあるがままに受け取っていて、右を見たり左を見たりはしますが、前や後は見ません。

サガン『愛と同じくらい孤独』

 サガンを書きはじめると止まらないwww。みなさんに知ってほしい言葉はたくさんあるけれど、これで最後にします。

 肝心なのは時間というものを1つの矢としてではなく、際限なく繰り返される贈り物として受け取ることです。

サガン『愛と同じくらい孤独』

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