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【映画】屍人荘の殺人 メディアミックスの理想型

2020/01/03
屍人荘の殺人を見ました。
すでに過去のエントリーでも多少この映画や作品について触れているので、同じことを繰り返すかもしれませんが、ご容赦ください。

剣崎比留子は怪物である/みうあお

また、この記事には屍人荘の殺人(原作、映画版)のネタバレが含まれます。

ネタバレは悪です。それがミステリーならば許されない重罪といっていいでしょう。
くれぐれも、この映画を視聴予定、もしくは原作小説を読む予定のある方は、この記事を読まないでください。

この映画版は、メディアミックスのお手本と言っていい内容だと思います。
トリックやキャラクターの役割はそのままに、映像で説明すると冗長な点や、不要と判断した部分をすっぱり切っています。
その上で、説明として必要な要素を継ぎ足して、きれいに再構成されている。
ここまでスマートな再構成はなかなか見ません。
(とはいえ、これまであまり原作付き実写映画を見てこなかったのですが。
今まで見て面白いと感じた原作付き映画と比べますと、突然『謎の忍者が出てきて殺す』をやった天地明察や、原作キャラの情報収集パートらしき部分がやや浮いてしまっていた地獄少女よりも無理を感じませんでした。)

・主人公が同行するサークルが、惨事の発生源であるフェスに参加するフェス研に変更されている
・ペンションに逃げ込んできた外部の人間、という要素を加える
・実はゾンビに噛まれていたので、籠城後に発症してしまったキャラを別途追加する

などなど、事態をスムーズに理解させる変更が多々ありました。

中でも、主人公3人のキャラクターの変更点は見事だったと思います。

原作の、怪物のようなできすぎたキャラクター性を「ちょっと変だけどポップでキュート」というラインに収めた、浜辺美波さんの剣崎比留子。
一挙手一投足が可愛らしく、仕草や表情を追うだけでも楽しかったです。

傷跡、被災、くすぶる怒りなどの要素をカットし、絶対に犯人を正解できない異能持ちの可愛らしい助手となった、神木隆之介さんの葉村譲。

ミステリオタのめんどくささを抑えて、ちょっと迷惑な点はそのままに、ホームズとしての面目も保った中村倫也さんの明智恭介。
明智さんに関しては、コミカライズ、原作、映画と、「俺の明智が一番キュートだ」対決をしてるとしか思えない愛されっぷりです。

全体的に、癖をなくしてキュートに仕上げ、飲み込みやすくなっていると感じました。
(複雑な思いはありますが、見ている間は気にならなかったのでここでは言わないことにします)

ゾンビのメイクや損壊描写はかなりマイルドで、ともすればちょっとギャグっぽくなっていましたが、「ゾンビが出る」という最大のネタバレを隠された状態で2時間劇場に閉じ込められることを思えば、苦手な人に配慮するのは当然でしょう。これでも駄目な人はだめだと思います。

メディアミックスでは、「原作への愛」を求める向きがあります。
私もそれを言ってしまいがちですが、「愛」は可視化できませんし定量化もできませんから、これを求めるのはあまり得策とは思いません。

この映画化はとても丁寧に配慮して作られています。この内容の作品を、どうやって多くの人に見てもらうか? という配慮です。

一方で、妙に挟まれるしょうもないギャグや、いじりコメント付きのパンフレットのキャラクター紹介など様々な点で悪ふざけや茶化しが見受けられ、前述したキャラ性の大幅な変更なども加味すれば、「愛はない」と判断されても不思議のない作品とも思います。

それでもこれは、小説の実写化、メディアミックスのお手本とされてしかるべき作品ではないかと感じました。

最後に、3つだけ文句を言います。

明智ゾンビの意思を残したかのような描写や、彼が自衛隊撤収後にぽつんと残されたりしていたのは、ちょっと興ざめではないでしょうか。

俺たちのゾンビマスターの活躍がもっと見たかった。

謎の機関が削られてる!!!!!

以上です。

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