ニュー・シネマ・パラダイス 音楽考察①

音楽がとっても美しいことでも有名なこの映画。
用いられているテーマと、物語の結びつき、役割を紐解いてみます。

作品概要(wikipediaより引用)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(伊: Nuovo Cinema Paradiso)は、1988年公開のイタリア映画。監督はジュゼッペ・トルナトーレ。
中年を迎えた映画監督が、映画に魅せられた少年時代の出来事と青年時代の恋愛を回想する物語。感傷と郷愁、映画への愛情が描かれた作品である。後述の劇場公開版が国外において好評を博し、しばらく停滞期に入っていたイタリア映画の復活を、内外一般に印象付ける作品となった。映画の内容と相まってエンニオ・モリコーネの音楽がよく知られている。

劇場版と完全版がありますが、劇場版に基づいて進めさせていただきます。
Amazonプライムビデオで観られます!サウンドトラックもAmazon musicにあります。
すっかりアマプラの犬です。笑

主要テーマ
・Nuovo Cinema Paradiso (主題)
・Infanzia e Maturità (子供時代と成熟)
・Tema D'amore (愛のテーマ)

今回は、表題曲 Nuovo Cinema Paradiso を見ていきたいと思います。

テーマの分解(抜粋)

Nuovo Cinema Paradiso (主題)

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冒頭の7度の跳躍。別のテーマのキーポイントにもなっています。

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一番上の音を少しずつ更新していき、テーマの最初の音に帰結します。
イレギュラーな2/4からの最初の和音への収束。よかった確認。

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最初のモチーフを展開。初めて臨時記号(その調の構成音に含まれない音)を使い、雰囲気を大きく変えています。また、この部分の対旋律がテーマを厚くふくらませます。
7度の跳躍を短いスパンで繰り返すことで強調。
そしてテーマを繰り返します。弦楽器が一層厚く旋律を支えます。
9の次のところから以下に飛びます。

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末尾を繰り返して収束します。

補足
・フラット調(B♭ dur)は暖色、セピア感をイメージさせます。
・冒頭のピアノの水面を表すかのような分散和音が、曲の合間にも印象的に用いられます。中音域で留まって装飾することで、豊かさを表しています。
・メロメロのソプラノサックスの旋律が際立ちます。唯一新しい時代の楽器を使うことで、唯一出てくるネオン電飾を表現。懐古に振り切りすぎない効果もあります。
・旋律に弦楽器が寄り添い、情感を分厚く高めます。佳境には対旋律も担います。
・湿度の高いメロメロな旋律を、B♭maj7によって明るく仕上げています。

使用箇所

①タイトル
景色がゆっくりとズームアウトしていきながら、表題曲が流れます。
テーマの繰り返しをした後、ネオンのタイトルロゴが表示されます。タイトルのフェードアウトとともに曲も終わります。

②新しい映画館のお披露目
ちょうど映画全体の折り返し地点。
冒頭のネオンのタイトルロゴが、メインテーマの提示とともにパッと現れます。
リボンを切るセレモニーから実際の上映までシーンがあるのですが、客席にどっと客が押し寄せるところでメインテーマを聞かせる演出になっています。

③映画挿入曲 4アレンジ
街の娯楽施設の復活、映画の豊穣時代。
このシーン以外でも、時代の流れや背景を説明するのに、映画による演出が巧みに行われています。
全体を通して映画についている音声は、あえて室内反響の効果をつけたり、音割れを再現したり、本編の台詞や音とは差別化が図られています。このシーンも映画用の効果が付けられているところと、本編BGMとして利用されているところが分かれています。
このシーンでは、映画館の黄金期の始まり、トト(青年期)の仕事風景、燃えにくい素材で作られたフィルムの導入、子供時代からのつながり(常連客同士のやりとりの変化)等が、3分半という短い時間で、4本の映画の紹介とともに見て取れます。

④トト(現在の姿)が、取り壊し前の映画館に入る
館内の映像に切り替わると同時に冒頭から流れ始めます。
まず客席、続いて客席から見た映写室、そして2階の映写室、と3段階に音楽的盛り上がりが当てがわれています。
トトにとって思い入れの深い場所に入っていく毎に、曲が盛り上がっていきます。

まとめ

表題曲は、映画館(パラダイス)の象徴としてだけではなく、良い時代の象徴として用いられています。

おまけ

以前の金曜ロードショーのテーマ曲(Cinema Nostalgia / 久石譲)はG minor。♭2つの調です。
Nuovo Cinema ParadisoはB♭ dur。こちらも♭2つ。
どちらもテーマは郷愁。
弦楽器の横への推進力によって曲が情感たっぷりに押し上げられています。
また、2回テーマを繰り返して、3回目で調性の音から外れることで大きく世界感を広げ、同じ終止形で曲を綴じる点も共通しています。
久石譲さんは相当この曲を意識して作曲したんだなー、ということが読み取れます。

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