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2秒の衝撃:だからSDGsが必要です。

僕は仕事柄、分母を地球1個で考えることが多いです。例えば、今日時点で人口約78億人、195ヵ国(国連加盟国は193か国)、インターネットユーザー約46億人、二酸化炭素排出量約190億トンなど。これらのデータはここで見ています。仕事でよく使うごみのデータで言うと、都市ごみは年間で約20億トン発生しているから半年過ぎた7月時点で約10.5億トン、プラスチックは年間で約3億トン程度発生しているので、同じく約1.5億とちょいくらいかな。ちなみにここのデータには面白いのもあって、車・自転車・パソコンの生産台数、ブログの掲載数や電子メールの送信数(1日単位)など。また、真剣に考えるべき課題に関するデータ(森林削減、環境中への化学物質排出量、栄養不足の人口、飢餓による死者数、飲料水にアクセスできない人の数等)もあります。これらのデータを見ると、普段の自分の生活の物理的な範囲・空間、考え方や習慣がいかに狭いかという事が良くわかります。自分の日々の生活を普通に送りつつも、分母を地球1個で考えた場合の自分の生活がどのようなものか、を考えてみるのと良いと思います。視野を広くすると、幅広い世界の中で自分がするべき事が良くわかると思います。

持続可能な開発目標2030、SDGsを理解するためにも、自分の生活が関連するデータや情報を、地球まるごと一個の分母と結び付けてみると、より身近に感じます。ぜひ、皆さんもお考えください。

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もう一つ分母を地球1個で見てみましょう。それは地球の歴史。今回は、地球の歴史46億年を身近な例で伝える地球カレンダーを改めて考えてみたいと思います。小学校の時に社会科でよく使う、地球の歴史46億年を人間の時間軸、1年で例えるのがこの地球カレンダー。皆さんも覚えていませんか?宇宙空間で地球が誕生したのを1月1日とすると、私たちヒトの祖先と言われるホモ・サピエンスが誕生したのが、12月31日午後11時37分、現代社会のはじめの一歩となる農耕が始まったのが、午後11時58分52秒、産業革命が始まったのが午後11時59分58秒、そして今は、翌年の午前0時ちょうど、というのが、この地球カレンダーです。SDGsを理解するためにも、地球カレンダーのレンズを通して、今、地球上で何が起きているか改めて考えてみましょう。

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でも、今さら何で地球カレンダーなのか、という事ですが、最近書いているプラスチック関係の記事で伝えたいこと、それとSDGsを関連付けてもっと強調したいからです。この問題の深層を見てきましたが、地球環境に負荷がかかる全ての人工的な出来事は、産業革命が始まったわずか300年弱の間に起こっていること。つまり、地球カレンダーに当てはめたら、わずか2秒の出来事であるという事実を理解することが重要です。地球環境や自然としてありとあらゆる気候・地殻変動・生物入れ替えが起こってきましたが、地球上の進化の”結果”として、自らの手で地球環境に負の影響を与えているのは、私たち”ヒト”が不名誉な史上初です。この瞬間、宇宙のはるか先の惑星にいるかもしれない宇宙人が、地球を望遠鏡で見た場合このように言うでしょう「自然は素晴らしい、だって、ヒトと言うのは自分で自分たちの自然を汚す」。

ここで、環境問題の一番身近な例の質問です。皆さんに質問、地球上に「ごみ」はいつから捨てられるようになったでしょうか?

この問いに答える前に、もう一つ質問が必要ですね、「ごみ」とは?広辞苑第六版「ごみ」が出展元になっているウィキペディアでは、「ものの役に立たず、ないほうが良いもの」となっています。「ごみ」を専門的に言い換えると「廃棄物」、ウィキペディアでは「不要になり廃棄の対象となった物および既に廃棄された無価物」と説明されています。ここでもう一つ質問です「自然の力では対応できない”ごみ”はいつから捨てられるようになったのか?」

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今から約40億年前(地球カレンダー:2月17日)には、原始の海の中で化学反応を起こしたタンパク質や核酸が作られるようになり、そこから約2億年経った約38億年前(地球カレンダー:2月25日)、それらが硫化水素を利用し始めたバクテリアとなり最初の生命となりました(諸説あり)。これを、生物学 x 化学 x 廃棄物学に考えると、その最初のバクテリアが生命を全うした瞬間に、地球史上最初の「ごみ」が排出されたことになります。でもこの最初の「ごみ」は、自然由来100%の天然物質から作られたもの(実際は単細胞生物)なので、自然に分解されます。この一歩が、今につながる地球の自然が完全なる生態系ピラミッド型のエコシステムにつながっています。

そして、今から12億年前(地球カレンダー:9月27日)に多細胞生物が誕生→5億年前(地球カレンダー:11月20日)に魚類の出現→4億年前(地球カレンダー11月29日)に両生類が陸へ上がる→3.7億年前(地球カレンダー:12月3日)に両生類から爬虫類が分化する→2.5億年前(地球カレンダー:12月13日)恐竜時代が始まる。さて、改めて質問です、「自然の力では対応できない”ごみ”はいつから捨てられるようになったのか?」。答えは...見つかりませんね。

今から6500万年前(地球カレンダー:12月25日)巨大隕石が地球に衝突し、恐竜が絶滅→20万年前(地球カレンダー:12月31日午後11時37分)ホモ・サピエンスが出現→1万年前(地球カレンダー:12月31日午後11時58分52秒)農耕社会が始まる。同じ質問です、「自然の力では対応できない”ごみ”はいつから捨てられるようになったのか?」。答えは...まだ、出てきませんね。

300年前(地球カレンダー:12月31日午後11時59分58秒)、産業革命が始まる。さて、改めて質問です、「自然の力では対応できない”ごみ”はいつから捨てられるようになったのか?」。答えは、「ここから2秒間に発生した」です。石炭をエネルギー変換することを手に入れた第一次産業革命では、それまでの手工芸・小規模伝統職人による自給自足の経済から解き放たれ、市場経済へのパラダイムシフトが加速化された。”安定的・強力的”動力を用いて大量生産する現代に繋がる資本主義経済社会が、誕生した瞬間です。

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それまでの地球、正確に言うと人間社会は、太陽エネルギーだけで十分な社会構造でした。言い換えると、今、私たちが目指しているSDGs社会はそこにあった、です。第一次産業革命を機に、化学 x 工学 x 社会科学が劇的に交わりあい、知と産業が爆発的に解き放たれた瞬間に、太陽エネルギーだけで賄われていた社会構造も破壊的にパラダイムシフトしました。太陽エネルギーだけの社会構造では、ありとあらゆる天然資源由来のモノを生産して利用し、資源を使い果たして最後は自然に返す、と言う、今でいう持続可能な社会、つまりSDGsの社会が”普通”でした。でもこの瞬間から、その社会的構造が破壊され、資源の流れが一方通行となり、合理性を追求した人間社会により、何かが地球上に増えるようになりました。その何かとは、大気中の二酸化炭素です。

この破壊的な瞬間には何が起こったであろうか?経済学 x 社会科学 x 廃棄物学で考えると、この質問の答えがここにあります。「自然の力では対応できない”ごみ”はいつから捨てられるようになったのか?」。地球カレンダーの2秒の事実です。当時の主力産業はコットン等の天然資源由来が中心でしたが、地球カレンダーの0.2-0.3秒のうちに化学合成製品・天然資源と化学合成製品を加工した、自然では分解困難な製品が大量生産されるようになり、「ヒト」は、自然の力では対応できない”ごみ”を出すようになりました。でもこのパラダイムシフトがあるからこそ、経済社会 x 産業が発展し、自然の太陽エネルギーだけでは作ることができない、ありとあらゆる高度的工業製品が作り出されるようになしました。スマホがない生活はもうできませんよね。

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「自然の力では対応できない”ごみ”はいつから捨てられるようになったのか?」をかみ砕いていうと、過去何千万年・何億年の地球上のエコシステムが自然と地中に蓄積してきた炭素を、この2秒の間に”石油”として取り出し、人間社会で目の前の利益のために使用して、最終的には二酸化炭素として大気中に”捨てた”、という事です。2秒前までは、少なくとも人間社会は、太陽のエネルギーから得られた地球の恵みのみを使用しており、しかもその地球の恵みは過去数年の太陽エネルギーが地球のエコシステムで”変換された”ものなのです。地球の恵み100%のモノを最終的に捨てようが燃やそうが発生する二酸化炭素は、次の植物の源の一部となって再び地球の恵みに戻る、という究極なエコシステムとして循環してました。でも、人間の手による産業革命により、それまで太陽エネルギー100%依存していた持続可能な社会を完全に崩壊させ、自然の力では吸収する事のできない、人為的二酸化炭素の排出や様々な廃棄物の排出、一部の勝者のみ手にする巨額の富、他の人との大きなギャップ、弱い立場の人はさらに追いやられる貧困問題、その狭間から埋まれる差別も埋まれました。それまで続いていた何十万年の持続可能な社会を、人間の自らの手で完全に破壊しました。その事実を言い換えると、「その昔、確かに存在していたSDGsを、私たちの手で完全に消滅させた」、となります。

ここで一つのキーワード、アントロポセン(人類の時代)を考えてみましょう。1995年にノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェン氏が提唱した新たな造語。地球の歴史上、初めて、単一の生物種が地球上のありとあらゆる”自然”に対して破壊的な影響を及ぼしている時代、を示している。その根拠として使われるデータが、世界の二酸化炭素(CO2)排出量。第一次産業革命から徐々に増え始め、今では爆発的に排出量が増加しています。

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廃棄物の統計データはこちら。二酸化炭素排出量のような長期的な経年変化を推計したデータは限られているので、いくつかの参考文献を基に自作してますので、ご了承を。第一次産業革命直前の1700年頃は、約1億トンの都市ごみが排出されており、その多くは天然資源由来の有機物と推測。なので、自然の力のみで分解が可能であった、たとえポイ捨てしても。でも今はどうでしょうか?天然資源由来の有機物質もごみとして廃棄されますが、私たちが使用している製品のほとんどが、何らかの加工がされているモノだと思います。でも、人口が約78億人もいれば、そもそも自然の力ではキャパオーバーとなりますね。

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アントロポセンに関しても多くの科学者がそれぞれの得意分野に基づく解釈が多数あり、大論戦があったみたいですが、一つ共通する考え方としては、第一次産業革命以降の人による破滅的な行為により、自然環境の大変革が現在進行形で進んでいることです。私もこの大論戦に参加させてもらうと、廃棄物学 x 化学 x 社会科学の知見から導き出したのが、「地球上でごみと言う概念・単語を使うのは人間だけ」、と言う考え方です。地球カレンダーでたった2秒しか今のところ続いていなアントロポセン時代に入り、この完全なる生態系ピラミッドのエコシステムが完全に崩壊し、地球の資源を人間が救い上げ、環境中にごみなどとして排出し続ける、という一方通行システムが出来上がってしまいました。これにより、生態系も完全に崩壊し、それを元に戻すために、色々なウイルスが登場、とも言われています。もしかしたら、このウイルスはSDGsを成し遂げなければならない私たちにとって、自然が発するメッセージかもしれませんね。

人間が要らないものを人間がごみと呼びますが、これは地球上全生物からずれた感覚。分母を地球一つで考えると、人間以外の生物界にはごみと言うのは概念すら存在しません。人間社会以外の生物は、全て自然と一体化しており、その生物の全てのモノは、全て自然に戻るという究極的に美しいエコシステムがあります。地球上の生物の中で唯一理性を持つ我々は、その理性で今我々が手にしている社会を構築してきましたが、それと同時に自然を不可逆的に破壊してきました。その原因の一つが、地球上で人間だけが排出する「ごみ」です。でも、少なくとも産業革命前の「持続可能な社会」にも、ゴミという考え方はあまりなかったでしょう。

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でもこういう論点もあります。少なくとも食品廃棄物や紙類、プラスチック廃棄物は、化学的には有機性化合物なので、最終的には自然界に分解されるから大丈夫なのでは、と言う意見。確かにそうかもしれません、化学的に考えると。でも自然学 x 倫理学 x 社会科学として考えるとそうでしょうか?そもそも人工物は、人間が天然資源を活用して人工的に作ったものなので、それを捨てる時も人間が製造者・使用者としての責任を果たして、安全に自然と一体化となるような手を加えなくてはなりません。また、微生物学的に考えれば、食品廃棄物は数日から数週間で炭素や水素等に分解されます。別の単語で言い換えると、コンポスト化や堆肥化です。紙類も数週間から数年で、ぼろぼろに分解し、やがて土に帰るでしょう。でもプラスチックは?プラスチックも、いろいろ言われていますが、化学的には数百年経てば分解さされます。その考え方でいいでしょうか?SDGsも2030年を目指してがんばってますよね。でもそれがSDGs2100だったら、皆さんがんばりますか?それと同じです。

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皆さん、ナショナルジオグラフィックが2008年に作成した「Aftermath: Population Zero」という映画は見たことはありますか?地球上から人間が一瞬で消えたらどうなるか、を描いたドキュメンタリーです。これを見ると、人間が作り出した人工物が自然と朽ち果てるまでが描写されています。人工物がほぼ消えたにもかかわらず、最後に残る一つのがプラスチック、人類最後の遺産の一つとされています。人間が滅びた後に地球のキープレイヤーは、歴史博物館でこのように言うでしょう、「息子よ。これは昔地球にいた人間が使っていたモノの破片だ。人間は自らの手でこの地球を破滅に追いやり、そして自らも滅亡したんだよ」。これでも、最後は自然が分解するからプラスチックもそのまま捨ててよい、と言いますか?

もし、このドキュメンタリーのように、この瞬間に地球上から人間がいなくなり、プラスチックが数百から数万年残っていたとしても、それは「2秒間の事実」の誤差でしかありません。少なくとも、世代を超えて残るものは「自然に分解されるごみ」とは言えないでしょう。未来世代へ負荷をかけない・未来世代が使うべき天然資源を今使わない、これを達成するためには何をするべきか、と私たちは自分自身に質問を投げかけて、その解となるサステナビリティアクションを実施していく必要があります。私たちのごみを未来世代に残してはいけません。だからこそ、私たちはSDGsを目指してがんばらないといけません。

地球にとって人間は破壊的な存在です。人間が自らの手で作り上げてきた人間社会は、地球のとって驚異となっています。でも、地球上で唯一理性を持っている人間は、今まで培ってきた英知・テクノロージーをパラダイムシフトさせ、サステナブルな社会に転換が必要です。今ならまだ間に合います。自分の生活の分母を地球1個で考えてみると、私たちの行動も変わってきます。その何気ない日々のアクション、地球の未来につながっています。そのアクションをサステナブルにしませんか?サステイナビリティアクション!一緒にSDGs達成を目指しましょう!

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