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未来の家とは?地球環境問題の観点から考えてみる。

はじめに

毎回同じようなフレーズで記事をスタートしていますが、今回も同じかもしれません。テレワークがほぼニューノーマルな生活となり、早や5カ月。自宅自前オフィスで必要な追加のガジェット類、例えば、昇降デスク、椅子、オンライン会議用ライト、ケーブル類などは一通りそろいました。あとは、動作が鈍くなっているタブレットPCをどうにかするのと、大きめのモニターがあれば作業しやすいな。新たなオンライン会議用背景のグリーンのスクリーンがあれば、自宅でのオフィス環境、言い換えるとミニスタジオが完璧に整います。最近の世界保健機構(WHO)の報道を見ていると、しばらくは、もしかしたら数年?はテレワークとなる可能性が高いので、テレワークに必要な機器・ガジェット関係は色々と考えたいと思います。

テレワークの現状を考えてみる

でも現実的には、テレワークができる人は少数派だと思います。色々な数値は出ていますが、内閣府の調査によると、今年6月の時点でテレワーク率34.6%となっています。職業別テレワーク実施状況の結果を見ると、教育機関が約50%と高くいわゆるホワイトカラーの職種が高いことは明確です。でも正規雇用のテレワーク率は約42%、非正規雇用は18%と差があります。さらに、東京23区のテレワーク率は約55%、大阪圏・名古屋圏は約33%と全国平均の34.6%とほぼ同じ、地方圏が約26%となっており、東京、特に23区内が平均値を引き上げているという数値となっています。この調査結果は面白い数値がいくつか出ていて、「家族の重要性をより意識するようになった」、「新しいことへのチャレンジ」の上昇、「生活の満足度」の低下、都市部居住者の地方移住への関心が若干高まった、など。

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もう一つテレワークで見るべき数値があります。それは経団連会員企業のテレワーク実施率は約98%、東京商工会議所の調査によると、同じ時期の従業員30人未満の企業のテレワーク率は約12%、それが6月末の時点で45%まで上昇している事実です。さらに中小企業庁のデータによると、日本にある約421万企業のうち中小企業は約99.7%の約419.8万社、全従業員数4,013万人のうち中小企業の従業員数はその69%の約2,784万人です。多くの専門家の方も指摘しておりますが、コロナ禍においては企業の勤務体制や福利厚生の格差が明確に表れてきています。

世界を見てもこれは同じような傾向があります。世界銀行の報告のよると、低所得国においては、わずか3.8%の職種しかテレワークができないそうです。経済レベルでのデータの集め方や分析は異なりますが、明らかにテレワーク環境格差はどの国でも存在しており、その傾向も同じです。大企業や高所得者はテレワーク制度や環境が整っていますが、中小企業や低所得者層はその条件が整っておらず、新型コロナウイルス感染への可能性も高くなっていると思います。この状況を冷静に考えると、資本主義経済の格差がそのまま出ているのではないでしょうか?別の言葉で言うと、資本主義経済の華やかな舞台には乗ることができなかった人、乗ることさえできなかった人、つまり資本主義経済の”ハザマ”が顕著に出ています。ここにも今までの資本主義経済が生み出した結果として、新型コロナウイルス感染拡大の一つの要因が見れます。経済格差がテレワーク格差を生み、そして新型コロナウイルス感染率も高めるという現実がここにあります。今回の新型コロナウイルスとの戦い、アフターコロナでの”新たなウイルス”との戦いを想定すると、私たちの未来社会における働き方の在り方にパラダイムシフトを起こす必要があるでしょう。

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気候変動と未来の家

今後も続くウイルスとの戦いを考えた場合、長期的にはテレワークによる働き方にシフトしていくでしょう。プライベートな空間からオン・オフが繋がる家、暮らしにも地球にもやさしい家が求められます。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の本題、地球環境問題の観点から考えた場合、今後の住宅事情はどのような考え方が必要でしょうか?今後の住宅事情で重要な要素としては気候変動、つまり地球温暖化による気温上昇、それに伴う環境変化です。先ずは、NASAのデータで気温と大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が過去にどれだけ起きているかを図で見てみるとこうなります。1950年から2019年までに世界平均気温は約1度上昇。その原因となる大気中のCO2濃度は1950年の310 ppmから100 ppm上昇した414 ppm。

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では今後、気候変動に伴う温度上昇はどうなるかと言うと、ここのデータによると、中位安定シナリオ(RC4.5)によると大阪では約3℃上昇、東京も約3度上昇、高位参照シナリオ(RC 8.5)によると大阪では約4.8℃上昇、東京は約4.7℃上昇する予想が出ています。

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どう考えても気温が下がる余地は全くなく、環境省が作成した2100年の天気予報が現実になる確率が非常に高いです。真夏の大阪の気温は何と42.7℃、東京は43.3℃、2020年8月だと中東のドバイエジプトの日中の気温と同じぐらいです。

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この科学的な根拠による未来の住宅に関するポイントは、気候変動に適応した住宅が必要になります。これに耐えうる住まいが、今後の日本には必要です。SDGsで言えば、SDG11の住み続けられるまちづくりが必要になります。気候変動に適応した強靭かつグリーンなまちづくりそして住まいが求められています。ここから少し技術的な観点を議論していきたいと思います。

先ずは気候変動、特に気温上昇と未来の住まいについて。今年の夏も酷暑ですが、酷暑が普通の夏の気温となり、真夏は最低気温が30度以上、日中の気温が40度近くなることが見込まれています。でもこの記事をアップした前日の8月16日には、フェーン現象の影響もあり浜松で40℃越え。酷暑の影響による生活のしにくさが顕著となるため、酷暑に耐える住まい環境が必要となります。住まいの断熱や風通しの効率性を設計すること、エアコンを適切かつ省エネに使いこなせるような間取りの工夫が必要になります。環境省や経済産業省を中心として地球温暖化対策の一環として様々な政策も行われています。その一つが2014年の第4次エネルギー基本計画に盛り込まれた省エネ住宅ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。ZEHとは住宅の断熱性能を向上させつつ高効率な設備システムを導入し、さらに再生可能エネルギー等を導入することで、住宅で使用される一次エネルギー消費量ゼロを目指す住宅です。詳細は検索すると出てきますので、そちらをご参照ください。

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では気候変動における省エネ住宅の役割を考えてみたいと思います。多くの方が省エネ住宅、特にソーラーパネルからの発電を聞いて思い浮かべるのが、停電時に電気が使える安心感だと思います。でもそれ以上に重要な要素があることを認識しましょう。それは、各家庭での省エネ→脱炭素化を目指す、さらにエネルギー生産の分散化を進めていくということです。気候変動による気温上昇の影響を受けて、特に夏場の電気需要量が見込まれる中、逆に太陽光エネルギーを活用してそれを電力として使用していく必要性が高まってきています。これは日本だけの話しではなく、各国の経済レベル関係なく、将来を見据えた重要なエネルギー政策の転換が迫られています。日本や欧州、中国をはじめとした多くのでは化石燃料から再生可能エネルギーへの政策転換、グリーンニューディールの導入が始まっています。多くの経済学者等の論点や考え方を参考にすると、この気候変動対策で必要とされているグリーンニューディール政策は加速度的に進んでおり、化石燃料産業文明は2020年代後半に崩壊が始まると言われています。太陽光に加えて風力発電コストが急落の傾向を見せており、さらに石油関連業界からの投資撤退などの新たな資本的価値観から、エネルギー生産として使用されている石油産業は、近い将来座礁資産となると言われています。

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となると、自分たちの家に電線から電気が来なくなるのか?という事はないと思いますが、世界の動きとしては化石燃料由来のエネルギー依存から脱出を図る、脱炭素化が今後急速に進むのは間違いありません。ZEHもそうですが、今求められているのは、各家庭に設置されたソーラーパネルによるグリーン発電、その一歩先を行ったスマートグリッドと言う考え方です。ソーラーパネルで発電し売電による収入があるというのが現実的ですが、世界が一つの目標ととしている2050年脱炭素ビジョンにおいては、分散型エネルギー戦略がキーポイントになっています。簡単に言うと、中央集権型の石炭・石油・原子力エネルギー発電に代わり、分散型の各住居や公共施設で発電し電気を共有するシステムです。ソーラーパネルを使って各家庭で発電し、各家庭で余った電気を必要な場所で共有することが可能になります。梅雨時期は?雨が続いた場合は?どうするのか、と言うご心配もあると思います。リチウムイオン電池が加速度的に高性能になってきています。近い将来、省エネ機器の開発も含め、天候に左右されない分散型スマートグリッドのシステムが可能となるでしょう。もちろん日本も2050年二酸化炭素排出実質ゼロに向けて大きく動いています。皆さんも自分の家を二酸化炭素排出実質ゼロを目指してみませんか?

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コストが見合わない・高すぎる、と言うご意見もあります。国等の補助金もありますが、数百万円単位の初期投資が必要です。ここで私たちの考え方を変えなければなりません。化石燃料は現在の資本主義ではなくてはならないもであり、開拓者が勝者、開発者が勝者と言うように、数億年かけて自然に蓄積した自然資本を経済資本として変換して巨大な富を生みましたが、その結果として、しかも地球の自然の反応として起こっているのが気候変動です。その気候変動対策には今後30年間で最低6000~8000兆円必要と言われています。本来であれば、事後対策のコストも入れた資本主義経済社会を構築するべきでした。一つの例をお話しすると:あの水俣病は当時、約1億円の排水処理施設を設置して水銀を含む排水を適正に処理しなかったため、患者さんへの賠償金・医療負担金や水俣湾環境復旧事業で費やされたのは約4000億円にも及びます。気候変動も同じです。気候変動対策の初期導入コストは、確かに高く感じます。でも、地球環境を守るため、気候変動対策のためと考えると、その選択の答えは一つしかありません。化石燃料に依存しない未来の住まい、グリーンなエネルギーによるスマートグリッドに貢献する住まい、これが求められています。

ではもう一つのデータを見てみましょう。それは海水レベル上昇データ。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書によると、高位参照シナリオ(RC 8.5)の場合は2100年には、1m海水レベルが上昇する予測が出ています。低位安定化シナリオ(RC 2.6)でも65cm上昇する予想もあります。

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それでは大阪と東京の海水レベル上昇のデータを見てみましょう。仮に高位参照シナリオ(RC 8.5)の1mとした場合、大阪では広い範囲で、東京では江東区周辺に水没エリアが出てきます。参考までに海水レベルを2mと3mにした場合、大阪ではかなりの広範囲で水没し、東京でも水没エリアがかなり拡大します。なお、この傾向は世界的に共通します、例えば、ロンドン、ニューヨーク、ムンバイ、上海、ラゴス、リオデジャネイロ、サンフランシスコなどです。これらはGoogleの海面上昇と沿岸都市の将来で見ることができます。

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僕が住む大阪は水没地図を見る限り、かなり深刻な影響があるかもしれません。一番良いのは水没可能性エリアに住まない事ですが、都市部ではなかなか難しいと思います。何ができるか?技術的な対策に加えて、世界各地で、気候変動対策のための大都市の新たな街づくり戦略が必要になります。しかも世代を超えた長期的な戦略が必要になります。その戦略とは大きく分けて二つあります:①水没予想エリアの機能を全て移転させる、②気候変動を食い止めるために手を打つ。どちらの戦略の方が良いでしょうか?

日本は全国的に自然災害対策が必要です。忘れてはいけないのが、南海トラフ地震。30年以内の発生確率は70-80%。その時、津波が関東から関西、四国、九州の多くの都市を襲います。以下図は気象庁のウェブに掲載されているものです。詳細は国交省の重ねるハザードマップで確認しましょう。

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おわりに

テレワークを取巻く最近の情報、そこでふと思った未来の家の姿、特に気候変動に強靭かつ気候変動対策としての未来の家について考えてみました。その未来の家は、ZEHは、既にここ数年の新築住宅では約50%の普及率ですが、政府の政策・補助金制度もあるため今後も増えていくと思います。また、日本は人口減少や空き家問題など様々な課題を抱えていますが、”SDG11の住み続けられるまちづくり”を目指した長期戦略・計画的に、地球にやさしい街づくりを行うチャンスでもあります。2050年、私たちの家が発電所として私たちの町に電気を供給し、サステナブルな街となるように必要なサステナビリティアクションを行っていきましょう。

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