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E-wasteの未来は?

今僕がいる国際的なごみ管理”界”に入りたてから取組んできているこの電気電子機器ごみ、E-waste。それから20年経ち、様々なレベルでのプロジェクトを実施したり、講義したり、プレゼンしたり、報告書書いたりしてきましたが、果たして20年前と状況が変わったのだろうか?今回、E-wasteに関してインタビューを受ける機会があったので、頭の中を整理してnoteを書いてみました。

さて、まずは電気電子機器の使用から考えたいと思います。この20年間で生活は劇的に変わったのは事実。デスクトップからノートPCとなり常に持ち歩く日々となり、ガラケーからスマホで生活に欠かせないデバイスとなり、LANからWIFI・4Gとなりオンラインでないとなんか不安となり、冊子の辞書からグーグル検索となりありとあらゆる情報が瞬間で手に入るようになり(どうでも良いことも調べるようになり)、紙の新聞や本が電子媒体となり、メモ用紙もスマホやパソコンのメモ機能を使うようになり、などなど、電気電子機器がないと生活できない毎日ですね。家電製品も見た目こそ変化はそれほどないけど、省エネはもちろん、調理系は高性能機能搭載で時短かつおいしい料理を作ることができたり、テレビは普通の地上波を見るのが目的ではなくオンライン映画を映画館のような臨場感で見ることができたり、より普段の生活のプロ化が進んでいると思います。

ではそのごみはどうなったのか?こちらはざっくり言えば二極化となっていていると認識します。日本や欧州の高所得国は徹底した法制度整備やインフラ整備を進め、環境上適正なE-wasteの管理体制が行われています。もちろん100%完璧と言う事はなく、未だに不法投棄や、E-wasteと中古品の国際取引問題はあります。ごみ問題が100%完璧に管理されることはないのが現実なので、それと同等の管理レベルまで進んできていると思います。

高所得国以外の国の状況というと、低所得国以外もそこそこE-wasteの管理体制が整備されてきていると思います。でも、E-waste管理するよりかは、完全に壊れたもの、リユースできない部品、リサイクルできない素材まで使い倒されてから、E-wasteではなく一般ごみで出てくる場合が通常です。と言う状態なので、法体制は出来つつあるも、実際のプレイヤーは中古市場が中古品として取扱っているのが現状。言い換えると、高所得国の最新デバイスを数年使用して買い替える、と言う贅沢習慣よりかは、遥かに良い循環型経済が自然発生的に成り立っています。でも、ここでの問題は人権問題だったり、闇市的なビジネスモデルだったり、環境上不適正な小規模リサイクル事業だったり、と言う社会的な課題の上に成り立っている場合が多いです。

ここで今回はあえて日本の状況をもう少し深堀したいと思います。なお、もちろんこの記事も個人的な見解です。
まずは家電リサイクル。家電リサイクル法が施行開始したのが2001年4月、それから22年分の統計データを見ると累積取引台数が約2.8億台、年間の取引台数がだいたい1300万から1500万台がここ数年の数値。対象家電5品目のリサイクル率も法律上の目標数値を安定して越えてきているので、日本の家電リサイクル事業は順調と認識します。でも不法投棄が年間4万から5万台もいまだにある、という現実も考えないといけません。大阪市内の幹線道路沿いに洗濯機が捨てられていたり、運河の遊歩道にもテレビが捨ててあったり、それを見ると多分処理費を払えない(払いたくない)などの社会経済的な影響として、不法投棄が発生しているのではないでしょうか?

次に小型家電リサイクル。ここ数年の回収量は10万トンぐらいで、回収した使用済み小型家電の90%以上はリサイクルされている、と言う非常に優秀なリサイクル制度があります。回収された金属類の総資源価格は70億円となっており、都市鉱山ビジネスとしても資源循環の観点で注目を浴びています。でも、分母が決まっている業界なので、今後どこまでこのビジネスが拡大するのか、どの時点で飽和状態を迎えるのか、都市鉱山美辞根雨の次の展開は?と言う問いの答えも常に探さないといけないでしょう。

小型家電リサイクルにおける2024年の数値目標は、日本人一人当たり1キロ回収と設定している14万トン。とここで疑問、果たして僕自身、年間1キロも小型家電をリサイクルに出しているのかどうか?僕が住んでいる大阪市の回収品目一覧を見て考えると、年間1キロは結構難しいのでは、と思います。小型家電の中でも重量級のパソコンを除けば、僕が持っているのは一つのデバイスが100gを切るものばかり。と言う事は、僕のライフスタイルは、日本の標準とは違う、と言う事かな?ちなみに、2010年から2019年までに世界で製造されたスマホは130億台、現在使用されているのはそのうち30億台分。100億台はどこに行ったのだろうか?皆さんのスマホの一部?地球環境のどこか?

政策面としては、日本の家電リサイクルと小型家電リサイクルは順調に進んでいると思います。でも日本だからこそ、より洗練されたより高度化された政策を実施するべきでしょう。例えば先ほど取り上げた不法投棄問題。一般ごみもそうですが、日本国内でポイ捨てがなくなることはありません。街中のポイ捨てと家電の不法投棄、言葉は違いますが両方とも同じで立派な犯罪です。小さいからいいや、人が見ていないからいいや、と言う人間としての問題や、さっきも言及しましたが人間が抱えている社会的問題の果ての一つがポイ捨てや不法投棄でもあること、人間は自然を無料のゴミ箱のように扱ってきた歴史・習慣があることなど、人間自身の問題、つまり全ての環境問題の根本的な問題を解決しない限り、E-waste問題もしかり、プラスチック汚染問題もしかり、気候変動問題もしかり、全ての地球環境問題を解決することができません。もう一度強調します、地球環境問題の根本的な問題は人間の問題です。人間が人間の問題を解決しない限り、地球環境も改善することはありません。

ビジネスの視点で家電・小型家電リサイクルを見ると等なるだろうか?多分2つの目線が中心となります。①リサイクル業界から見た目線。②製造側から見た視点。

先ずは①リサイクル業界から見た目線。国内家電・小型家電リサイクル事業は、法律上の数値目標を既に超えており、今後の人口減少に伴い、リサイクル業界も今後は縮小傾向になることは間違いありません。でも縮小傾向となったとしても、都市鉱山ビジネスモデルは、日本が目指している循環経済に合致し、天然資源を持たない日本の資源確保戦略かつ循環経済社会における基幹産業と成長していくでしょう。

②製造側から見た視点。循環経済社会においては、こっちの視点の方が重要です。決して必要ではないが新し製品を世の中に出し続け売り続け、経済を成長していかなければならない、と言う資本主義社会のそもそも論・根本的な問題を直視しないといけません。特に家電・小型家電業界では、その新製品を世に届けるサイクルが非常に短いので、今使っている機能も全く問題でない製品を、最先端なデバイスを使いこなす自分へのあこがれ(欲望)を促しているマーケティングに巻き込まれ、どんどん買い替えていく社会。廃棄物管理的に言えば、リサイクルするべき量がどんどん増えていくので、例えリサイクル技術の高度化を遂げたとしても、製品が廃棄される量に追いつかない限り、実質のリサイクル率の向上は起きない、というパラドックスがここに隠されています。

簡単に言えば、100人が毎年スマホを買い替えれば10年後は10000万台の累積スマホ台数となり、その中で200台のスマホがリサイクルされるとリサイクル率は200/10000 = 2%。例えば100人が5年に一度スマホを買い替えるのであれば、10年での累積台数は200台。200台リサイクルできるキャパがあれば、リサイクル率は100%達成する、と言うような感じです。

何でもそうですが、入ってくる量を減らさない限り、ごみは減りませんしリサイクル率も増えることはありません。家電・小型家電だけでなく、資本主義社会で取り扱われる全ての製品に共通することです。どんどんモノが製造されているということは、それに応じた大量な天然資源を使用し、それを廃棄している状態です。今後の循環型経済社会を構築するためにも、このパラドックスも解決する必要があります。天然資源使用量に上限を設けるとか課税するとか、リサイクル素材のみ使用を許可するとか、家電・小型家電の製品設計を見直すとか、サブスクシステムを拡大するとか、モジュール組み立て方式を導入するとか、新素材の開発・導入をするとか、などなどです。資本主義社会で経済発展を遂げていくため経済成長は不可欠である、と言う常識をぶち壊す必要もあります。

とは言うものの、私たちが暮らしているこの社会において資本主義から逃れることはできません。家電・小型家電がないと生活できませんし、そのデバイスを活用することが、少なくとも日々の暮らしを支えています。スマホもそうです。スマホを家に忘れて出かけたあの日、めちゃくちゃ困りますよね。無いと生活ができません。でもそろそろ毎年買い替えするのではないシステムも選択できるようにしてほしいです。毎年最新デバイスを届けるビジネスモデルと、大切で愛着のあるデバイスを修理しながら長年使えるようなシステムをお客様に届けるも、このSDGs時代では求められているマーケットです。そんな暮らしを届けてくれる企業が、今後多くのユーザーを獲得し、共にSDGs社会を推し進め、循環型経済社会を作り上げて行くことができるのではないでしょうか?

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