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「ボカロネイティブ」に囲まれた

「〇〇ネイティブ」という言葉があります。おそらく起源としては「デジタルネイティブ」じゃないかと思うんですけども。
派生として「スマホネイティブ」なんて言葉がありまして、要は「物心ついたら〇〇があった世代」というわけですね。

「ラジオネイティブ」とか言い出したら、現在世界に住む人の9割が該当しそうで、ちょっと気持ち悪いです。

さて、僕が「初音ミク」関連の仕事を始めるにあたり意識したのが「ボカロネイティブ」という言葉になります。

少子化も手伝い、さまざまな分野で「10代に向けてアピールしよう」が叫ばれる中、どうにも手応えがないとお嘆きのご同輩は腐るほどいるでしょう。

とりわけ予算を動かせるナイスミドルは、そのPRのど真ん中にアイドルグループを置きがちで、イベントやってみたら大きなおともだちしか集まらず「なぜなんだぜ」とボヤく日々。
おニャン子クラブの時代なんかとっくに終わってますがな。

本気で10代をリサーチした結果なら仕方ないとは思いますが、そもそも親子仲睦まじくMステ観てる、みたいな想定も崩壊するほどにスマホネイティブの勢いは加速しているのです。

動画ひとつも満足に配信できないオトナとは断絶した世界がそこにあるんだろうと、ご同輩の動きを冷静に見てきました。

もちろん、テレビを通じて坂道グループやK-POPSに熱を上げるティーンも存在します。
ただ僕の周りにいる既存メディアの人間が自分の足元ばかり見ていて、頭上で起こっていることにほとんど気づいてないと感じることも多々あるわけです。
その最たるものが「ボカロネイティブ」なんですね。

YAMAHAが歌声合成ソフト「VOCALOID」を発表したのは2003年の2月。少なくとも90年代後半生まれの世代を「ボカロネイティブ」扱いしてもよいのかもしれません。
ただ世間的な認知度を考えると、「初音ミク」発売の2007年8月直後にいきなりピークが来てしまったことから、ゼロ年代以降に生まれた世代を括るのが現実的かなと。

ちなみに身近な標本である2006年生まれの娘(ボカロ廃)に聞くと、「初音ミク」を意識したのは、2012年にファミリーマートで販売された野菜ジュースの「未来野菜」といいます。僕のニコニコアカウントで関連動画を漁り始めたのがそれから3年ほど経った頃です。

全国どこにでもあり、幼児でも手に取れる点で、このファミマコラボはひとつのエポックです。
強引ですが、この2012年のコラボをキャラクターとしての「初音ミク」のキャズム超えと仮定すれば、当時小学生であるゼロ年代生まれを「ボカロネイティブ」の起点とするのが妥当かなと考えます。

この世代、特にゼロ年代後半以降に生まれたこどもたちは、個人情報保護法の強化から、学校における連絡網としてLINEが躊躇なく指定される環境にあります。
つまり「親公認のスマホネイティブ」ということが言え、動画ポータルの人気を底上げさせる大票田となりました。

さらにボカロのみならず、「歌ってみた」ジャンルにも喰らいついており、米津玄師、WOWAKA、syudou、かいりきベア、まふまふ、天月-あまつき-、Eve(以上敬称略)、夜好性などを頂点とするボカロ・歌い手山脈が緩やかに形成されています。

この山脈に挑むためのベースメントとなったのは、ニコニコ動画や広告の出ないNicoBox。
YouTubeと比較するネットおじさんからは凋落が囁かれながら、ニコニコがなんとか継続されてきたのは、まさにこの層のおかげではないかと邪推するのであります。

先に書いたようにマスメディア経由のリアルアイドル好きもいますが、こうしたネット経由のカリスマクリエイターに接している小中学生が、コミュニティによって半数を超えるのは間違いないようです。

先日、担当するバーチャルシンガー番組でローティーンからの投稿だけを紹介した回があり、放送後に上記のツイートを投下しました。
その日のうちは数人のフォロワー諸氏(おそらく30-40代)からリツイ&いいねされたりしたんですが、異変が起こったのは翌朝でした。

朝からフォロワー外のいいねがつき始め、夕方にはその数が100人を超えました。

「な、なにこれ」

業務用アカウントではまるで気にならないんですが、個人アカで見知らぬ人からチェックされるのはちょっと震えました。なにオレ炎上してんの?

パワーユーザーのリツイから起こったのかと思い、タイムラインから追跡を試みましたが、出火場所の特定には至りませんでした。

ただプロフィールを見ていると「高校生」「中学生」「18↓」「18↑」前後のツイートでは「試験終了」などのワードが並び、明らかに学生だとわかりました。

「ボカロネイティブ、か」

そう思い当たった瞬間に震えは収まり、むしろ彼らのリアルな声を聴いてみたいなと思いました。

残念ながらリツイはあまりなく、当該ツイートに対する意見が見られなかったのは残念ですが、まるで妖精のように存在する、多数の残留ボカロ思念をなんとか実体化させたいなと、決意を新たにする次第でありました。

それにしても、どこで話題になるのかよくわからんもんです。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。