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名古屋国民として名古屋めしを語ってみる。

というお題ですが、「穴場の店はここだ」みたいなガイド的なものは期待しないでください。

生まれて50年以上名古屋国で生活する者が、地元の食生活などについて書き殴るだけのもので、もしかしたら「名古屋国民の食生活のリアル」のタイトルが相応しいかもしれません。

ちなみにここで言う「名古屋国」の国土は、他の地方の人に「名古屋の方から来ました」と言える範囲です。
ご承知おきください。

平均点の高い飲食店

妻の実家は東京都新宿区の高田馬場にあります。
結婚して20年ですが、帰省した時は、家族と離れて山手線や中央線、都電荒川線に乗って、ふらりと食べ歩きに出かけることがあります。

ところが飲食店に入って、オーダーしたものに箸をつけて「あれ?」と思うことがたまにあります。

つまりその、あまり美味しくないんです。

僕が名古屋の味付けに慣れているから、というわけじゃありません。

ご飯の香り、揚げ物の衣、そばの風味、ポテトサラダの出来など、全国どこでも食べられる献立のスペックが低い店に当たるんですね。

この経験は多くはないものの、一度や二度ではありません。
ゆえに都内で飲食する際は、名古屋ではまず参照することのない「食べログ」が欠かせなくなってしまいました。

そんなことからふと「名古屋の飯屋ってアドバンテージが高いんじゃないか」と考えたわけです。

高性能な基本ユニット

名古屋国は、そこかしこに喫茶店があることで有名です。
路地で1軒見かけたら、その奥には30軒潜んでいるというほど。
まるでゴキブリです。

全国的に見ると、喫茶店は憩いの場、もしくはMacBookをこれ見よがしに開く場所でしかないんですが、実は名古屋国においては「飲食コンポーネントの基本ユニット」という位置付けとなるのです。

システム根幹を支える「モーニングサービス」は各店舗のビジネスドメインであり、激戦区ゆえ量ばかりか味も客入りに影響します。
つまり名古屋国民の多くは、朝から質量ともに充実した食生活に親しんでいるのです。

この舌を引っ提げて日々のランチとディナーを堪能するわけですから、名古屋国内の非喫茶店は戦々恐々です。

ちょっとした定食セットでも、付け合わせの隅々まで妥協は許されません。
このことが、名古屋国において飲食店の基本スペックを高めるに至ったのだと考えるわけです。

濃い味付けの陰謀

名古屋国の料理は、他国民から「味付けが濃い」と言われます。
確かに国宝とされる赤味噌やたまり醤油の濃度に関しては否定できません。

またあんかけスパゲティや台湾ラーメン、手羽先など、何かしら辛めのアクセントをつけたメニューも目立ちます。

これはあくまで私論ですが、つかこのnoteの投稿すべてが私論ですが、この濃かったり辛かったりという味付けは、名古屋国民の肥えた舌への自衛策なのかもしれません。

「とりあえず濃くしとけ」と。

濃ゆさの代名詞

あんこだらけのアレ

一方で名古屋国は和菓子処でもあり、創業数百年の老舗も現存します。
経済産業省の統計によると、愛知県の和生菓子出荷額は京都府に次ぐ規模です。

大泉洋さんが「あんこだらけの箱に入ったアレだろ?」と評した伊勢名物・赤福を頂点に、大口屋の麩まんじゅう、きよめ餅、三重県桑名市界隈のなが餅、しるこサンド、東区の至宝・芳光のわらび餅、そして今は亡き納屋橋まんじゅうと、名古屋国の和菓子店はとにかくあんこを使用します。

周辺に展開するファストフードチェーン「スガキヤ」の主力商品はラーメンです。

しかし国民の多くが「クリームぜんざい」とのコンボが欠かせないと考えており、「スガキヤラーメンにはあんこも含まれる」と言っても過言ではありません。

単なるソフトクリームではなく、わざわざつぶあんを乗せてしまうところに、甘味処・名古屋国への誇りが伺えます。

他には、鬼まんじゅう、ういろう、半田市の覇王・生せんべい、岐阜県東濃地方に伝わる謎の米菓・からすみと、古式ゆかしく素朴な「蒸し甘味」が多く、逆に干菓子や手の込んだ工芸菓子といった文化は歴史が浅い特徴があります。

半田市の覇王近影

味付けが濃い料理に甘味まみれ、不健康極まりない名古屋国民ですが、その主要自治体である愛知県は、2021年の都道府県別平均寿命ランキングでなんと8位。
構成自治体の岐阜は14位、三重も19位と平均以上です。

ここから「まあこまいことは気にせんと喰っとれ」という雑な結論が導かれます。

日常の名古屋めし

誤解されがちですが、毎週のようにきしめんをすすり、味噌かつを喰らい、名古屋コーチンに齧りつき、ういろうを飲むという名古屋国民はいません。

例えばきしめんは、ごく最近まで絶滅危惧食だったのです。

何につけ「名古屋駅のホームのきしめん最高」と言われますが、きしめんを食べるためだけに入場券でホームに入る国民はほとんどいません。
やはりきしめんは国民食ではなく、観光食なのです。

じゃあ「味噌煮込みばかり喰ってんでしょ?」というと、それも正解とは言い難い。

名古屋国では「ころ蕎麦」「ころうどん」「ころきし」というメニューが多く見られます。
この「ころ」とは冷たいつゆをかけた麺類全般を指します。

例えれば、讃岐のぶっかけうどん(冷)的なものです。

長命うどんのころきし中華ミックスコロッケ乗せ

一連の「ころ」は夏場に食されることが多いですが、店によっては年中メニューに置かれ、さらに中華そばにも適用されることもあります。

そして麺類といえば、「あんかけスパゲティ」と「鉄板イタリアン」の2大スパを欠かすことはできません。
ちなみに「ナポリタン」などという料理は名古屋には存在しません。

どちらも極太麺が特徴で、「アルデンテとか笑かすな」と返すしかない弾力と、もはやエサと呼んでもおかしくないボリュームで提供されます。

揚げ物と極太麺とトロミのあるソース

繁華街には町中華もイタリアンもバーガーキングもくら寿司もありますし、アパのレストランに行けばカレーも普通に食べられます。

また地方メシ界隈には「スーパーを覗けば、本当の地元メシに会えるはず」という小売店主義者も多くいますが、過度な期待は禁物です。

名古屋国ならではという商品は、ナカモの「つけて味噌かけて味噌」と名城食品の「味付けスパゲッティ」くらいなもので、あとはここに書いたメニューや銘菓が少量置かれているという感じでしょうか。

大都市圏ゆえの豊富なバリエーションに土着メニューも程よくあるのが、名古屋国民の食生活だと思います。

ただし、愛知県の野菜摂取量は全国ワースト。
交通事故死亡者数もワーストです。

本当に長寿8位なのかと。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。