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AS-1 Editorバージョンアップ。が。

App Storeを見ていたら、iPad版のToraiz AS-1 Editorが初めてバージョンアップしていました。
更新されたのは、どうやらここ1ヶ月以内のようです。

PioneerDJから2017年に発売されたモノフォニック・アナログ・シンセサイザーToraiz AS-1は、Dave Smith Instruments(現Sequential)との協業により、あのProphet-6をほぼ完全に移植したという、それはもうすごいマシンです。

Prophetシリーズの開発者のひとりだったデイヴ・スミスさんは、惜しくも昨年亡くなられました。
そのためこのAS-1は、氏が開発に関わった最後のモノフォニック・シンセということになります。

こちらが本家Prophet-6

当然ポリフォニック/ユニゾン機能はありませんが、そこを除けば、実はパラメータ、アルペジエイターやシーケンサーなどの機能もほとんど同じ、という大盤振る舞いです。

が、AS-1はコンパクトなA4サイズゆえ、パネル上のノブの数がかなり絞られています。

最近のシンセではかなり堅牢な筺体

もちろん、メニューを掘っていけば全てのパラメーターにアクセスでき、操作に慣れれば大して苦でもありませんが、やはり視覚的に弄りたいのが人のサガ。

そのため、本体発売の直後、サードパーティのSoundtower社からPC用エディタが配布されました。

Windows版エディター

ノブの配色や形状など、かなり本体を意識したデザインです。

SoundtowerからはProphetシリーズのPCエディターも多数リリースされており、おそらくこちらもデイヴ・スミス側からの提案と想像できます。

無料版のLEでは、音色エディットやグローバルモードの設定、ライブラリー機能などがあり、本体でできることはひと通り可能です。

そして、なぜか発売から3年以上経って、iPad用エディターがリリースされました。
価格は2023年1月現在で4,000円。PC版のLEが無料ということを考えると、結構強気の設定です。

なお本体の端子はUSB-Bタイプです。LightningなiPadとの接続にはこちらのケーブルが必要です。
僕が買ったものを紹介しておきます。

iPad版エディター

さて、iPad版の画面。
パラメータの配置はPC版と同じですが、パネル面の彩色はブラックよりもグレーな感じ。
液晶越しだとかなり明るく見えます。

そもそも本体が1オクターブのタッチ式鍵盤なので、そんなに違和感ないどころか、むしろ便利。

ベンドとホイールの分割は嬉しい

その鍵盤を画面の上半分にドラッグすると、2オクターブ仕様となります。
iPad miniでは演奏にしにくいところですが、無印以上の画面サイズならそこそこ弾けそうです。

ノブについても、KORGなどのシンセアプリ同様の操作感。
パラメータをタップすると、そのセクションごと拡大表示され、操作しやすくなります。
やはり直感的に弄れるメリットは大きく、音作りが捗るのは間違いありません。

エンベロープのドラッグでパラメータが追随

個人的に嬉しいのはシーケンサー画面。
本体入力でLEDを見ながら1ステップずつ進めていくのに「MC-4かっ!」とキレそうになった貴兄もこれで安心です。

ちなみにステップに音階を増やしたり減らしたい時は、まずベロシティ値を上げ下げしてください。
これがわからずに10秒ほど悩みました。

Slewを試しながらの入力は楽しい

さて、このiPad版エディターですが、それなりのお値段がするわりに、いくつか問題があるのです。
最初のバージョンを入れた時には「まあいいか」と思ってましたが、バージョンアップしても変わらなかったので、あえて書いておきます。

まず軽いところ。
パネルについてですが、アプリを立ち上げた時、LFOセクションの[LFO SYNC]のボタンが表示されません。

(左)タップ前(右)タップ後

タップすればボタンが出現するので支障はないんですが、有償アプリゆえ、ここは修正いただきたいところ。

そして、エディット画面左上のハンバーガーボタンを押すと表示されるライブラリ。

問題のライブラリー画面

本体とは別に音色をメモリできる機能のはずですが、なぜか.libファイルを選択・ロードできません。
保存フォルダの問題かと思い、ファイルフォルダや本体フォルダへもアクセスしましたが、セーブできているはずのデータが、表示はすれど読み込めないのです。

よく見ると、アンダーバーとドットが間違っていて、拡張子が認識されてない。

ファイル名の変更からアンダーバーをドットに直したけど、やっぱり読み込めない。
しかもファイルサイズは0kbで、書き出しでしくじってるパターン。
なぜなんだぜ。

同じ現象は、プログラムデータにも起こります。
こちらもエディターで保存したデータが読み込めない不思議な仕様になってます。
念のため、PCエディターで保存したプログラム(.synth)をコピーしてみましたが、こちらも読み込み不可でした。

まあAS-1の場合、本体に495ものユーザーメモリがあるので、足らなくて困ることもないですし、同じく495のプリセット音がどれも即戦力となるクオリティなので、わざわざiPadで管理するまでもないんですけどね。

ただ、iOSアプリとしては音源過積載なKORG Gadget2並みのお値段なので、せめてPC版LEと同等に使えるものとなってほしいところです。

まさに叱咤激励で、よいアプリとなって末長く使わせてくれると喜ばしいかぎりであります。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。