定額働かせ放題の編プロで、残業代を取り戻す話

編集プロダクション勤務。4年目。
2019年3月の終わり。年度末で忙しくて、もう体も心もボロボロだった。
21連勤目。謎の腹痛が続いても、仕事が終わらなくて休めない。
でも、誰かに助けてほしくて連絡した先が、「裁量労働制ユニオン」だった。
思い当たる証拠もなかった。手取りは20万円なくて、弁護士を頼む貯金もない。だけど、どうにかなるかもしれない、って3%くらいの希望だけでメールした。

そこから半年、会社の違法性を労基が認め、残業代を取り戻す交渉中。金額は言えないが、取り戻すことは決まってます。

編集プロダクションや裁量労働制の働き方がこんなに「ヤバイ」ってことを知ってほしい、働いている人が「自分も取り戻せるかも?」と思ってほしいと思って書きます。


目次
・どんな働き方をしていたか
・どうやって違法を会社に認めさせたか
タイムカード改ざん
裁量労働制の不適切な運用
何時間分の固定残業代か、最初から明確でない
・あなたの会社の違法チェックリスト

◾️どんな働き方をしていたか

編集プロダクションというのは、出版社の下請けとして本の中身を作ったり、広告代理店の下請けとして、企業の広告を作ったりする会社。

そして、編集プロダクションに所属してる人の多くは「裁量労働制」で働いている。
これは、「定額使い放題サービス」みたいなもの。
1日1分でも出勤すれば、その日は出勤したことになる。しかし、どれだけ残業しても、その分の残業代を払われない。
手取り20万円いかない給料で、どれだけでも働かせることができる。
一応、使える職種は限られているけれど、そりゃ経営者として使わない手はない。

私は実際に月80時間は残業してたし、多いときは150時間くらい残業代していた。繁忙期は土日も出勤。
しかし、どれだけ働いても、手取り20万円いかなかった。

一応、裁量労働制でも22時以降や土日に働いていたら、その分の残業代を別途払う義務が会社にはある。
しかし、22時までに帰っていることにタイムカード上は改ざんされていた。
土日は勤務記録さえなかった。
タイムカード上は60時間も残業していないことになっていた。
しかも、誰も私が本当は何時間働いているか正しい時間を把握してもない。


◾️どうやって違法を会社に認めさせたか

【①タイムカードの改ざんについて】
裁量労働制ユニオンにメールを送った当初、私にはなんの証拠もない、と思っていた。だって、タイムカード改ざんさせられているんだもん。

ネットで証拠となるものを調べると
・手書きメモ
・セキュリティー会社の退勤記録
・退社時の会社の時計の写真
など出てくるが、どれも手元にない。

そこで出したのが「会社のメール記録」です。
22時以降に送ったメールが記録となり、労基にも、タイムカード外の労働があったことを認めてもらえました。


【②裁量労働制の不適切な運用】

裁量労働制が正当にするためには、本当はいくつか厳格な決まりがある。だけど、会社はそんなこと無視して適当に運用していた。

そして、多くの裁量労働制の会社で無視されてると思うので、当てはまらないかぜひ検討してみてください。
取り戻せる残業代が、一気に跳ね上がります。
論点は大きく2つ。

1.自分の仕事は、裁量があるのか?

裁量労働制は、その名前の通り、個人に裁量がないと有効性がない。

私はいわゆる「平社員」だった。
書いた原稿やラフなどは必ず「ディレクター」と呼ばれる人にチェックを出し、赤字をもらって修正してから取引先に提出していた。
まずこの時点で裁量があるとはいえない。

そして、どの案件も数人がグループになって1つの広告や雑誌、本などを作っていた。
これも違法。個人に裁量があるとは言えない。
どちらも完全に違法。裁量労働制が有効ではなくなります。


2.裁量労働制の手続きをきちんと踏んでいるか?

これはよく覚えていてほしいのですが、会社が「うちは裁量労働制だからね!」って一方的に裁量労働制にしていいわけではない。
原則、年に1回、社員に裁量労働制でいいか許可を取る手続きが必要だ。
そのために必要なのが、「従業員の代表者」。
そして、この代表者は従業員の過半数の同意を得なければならない。

……と、なかなかわかりにくいのですが、要は年に1回くらいは社員集めて代表者を話し合ったり、投票したり、「この人が代表でいいですよね?」と言われて挙手や拍手をしたりして、従業員の過半数以上の合意を得なければならないってこと。
こんなんやってる会社本当にあるの???

少なくとも私の会社では3年半1回も行われないまま、代表者選出が行われていました。
(そもそも団体交渉の時に労基に会社が出してる書類を確認して、誰が代表か知りました)

この手続きをしてない会社は、裁量労働制を使えないので、違法です。


ほかにも
・●時までに会社に来なければいけないという決まりがある
・●時から●時までは会社にいなければならないコアタイム決められている
・遅刻すると減給
・早退するのに有給を使わなければならない
・裁量労働制で定められた業務以外の仕事の比重が大きい
など、全て違法です!

【③何時間分の固定残業代か、明確でない】

私が転職した時の給料は21万5000円だった。(手取りではなく交通費を除いた額面、残業代を含む)
しかし、これのうちいくらが残業代かわからない。
まずこれが違法だ。何時間分の残業代が支払われているか、明記しなくてはいけない。

しかし、求人にもそんなこと記載されてないし、入社時に契約書ももらっていない。

さすがに労基からアウトと言われたようで、1年くらいで、基本給+固定残業代と、給料明細でも分かれるようになった。

しかし、さらに違法が。
4月から基本給+固定残業代と分かれて示すようになったが、
それに関する契約書をもらったのは、6月。
もちろん4月から合意してることになっている。

もうめちゃくちゃだ。
そもそも残業時間が月に30時間以内で済んでいる社員は、果たして何人いるのだろう?

そういうわけで、こちらも違法として認めてもらうことになりました。


◾️あなたの会社の違法チェックリスト


このように、私の場合
1.タイムカード改ざん
2.裁量労働制の不適切な運用
3.何時間分の固定残業代か、最初から明確でない
の3つを、メールや音声などの記録を出しつつ認めてもらいました。
しかし、まだ全てのこちら側の主張を認めてくれたわけではなく、誤魔化そうとしている様子が多々見られるので、団体行動を行い、裁判に進める考えもあります。
編集の仕事は大好きなので、これからも続けたい。だけど、編集の仕事がどんどん安くなってしまっては、まともな働き方ができなくなります。業界全体で意識を変えなくて、どうにかしなくてはいけないと思うのです。
本が売れなくなる今の時代に、ただ人件費を減らして、1人あたりの仕事量を増やすだけでは、ただただ辛いだけです。

また、何がアウトか知ってから、手元に残っている資料やメールを見ると、証拠がゴロゴロ出てきます。

では、最後に裁量労働制で働いている人用のチェックリストを書き出すので、自分の会社に違法がないか、ぜひ確認してみてください。

・出勤しなければいけない時間、コアタイムなどが決められている
・タイムカードを改ざんさせられている
・22時以降働いても深夜残業代をもらえない
・遅刻や早退で有給の消化や減給がある
・日報や週報を書かされており、スケジュール管理に指導が入る
・文章に赤字を入れられ、書き直しを命じられるなど上からのチェックがある
・2人、3人など複数人で作業をしている
・仕事の進め方について指導が入る
・裁量労働制で定められた業務以外の仕事の比重が大きい
・社員のうち、誰が従業員の代表者なのか知らない
・代表者選出をした記憶も記録もない
・自分の固定残業代が何時間分なのかわからない
・固定残業代が基本給と分かれて記載されていない

これらが1つでも当てはまれば違法な裁量労働制の運用で、残業代を請求することができます。
請求できる残業代は2年分です。
退職後も請求できます。

証拠の心当たりはなくても、違法の心当たりがある人は、裁量労働制ユニオンまで、ぜひご連絡ください。

【ユニオンの相談窓口】
電話番号:03-6804-7650
(平日17~21時/土日祝13~17時 水曜定休日)
メール:info@bku.jp(ブラック企業ユニオン)
    siryo@bku.jp(裁量労働制ユニオン)
※相談無料・秘密厳守です。

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