見出し画像

アドバンテストと第三回団体交渉が行われました。

 総合サポートユニオンは、株式会社アドバンテストと、組合員Aさんの長時間労働による労災について団体交渉を行っています。
 Aさんの仕事は、国家プロジェクトImPACTの委託を受けた光超音波顕微鏡HadatomoZの開発で、100時間以上の時間外労働の結果、健康を害し、休業を余儀なくされました。Aさんは多くの持ち帰り残業を行っていたのですが、会社は持ち帰りは指示していない、と労働時間制を否定し、議論は平行線をたどっています。

 去る2月17日、第三回目の団体交渉が開催されましたので、ご報告いたします。

これまでの詳しい経緯は、こちらをご覧ください。
● 過酷なノルマと過労死ラインを超える残業、パワハラの実態
https://note.com/sguion/n/nd7ffefdb2298
● 労働時間の証拠を隠蔽??
https://note.com/sguion/n/ne0d7d0a7c21a
● 東京都に労働組合法違反の救済申立を行いました。
https://note.com/sguion/n/na0b5b166bcf3


【技術者の団体交渉参加をかたくなに拒否する会社・・・・】
 Aさんの所属していたプロジェクトチームには5人の所属していましたが、このうちの4名が持ち帰り残業をおこなっていました。プロジェクトチームでは持ち帰って仕事をすることが常態化していたのです。口頭などでの明示的な指揮命令がなくても、持ち帰り残業には「黙示の指揮命令」があったと考えられます。
 そこで私たちは、Aさんが持ち帰りで行っていた業務の必要性や緊急性について、団体交渉で明らかにすべく、Aさんのやっていた業務内容の技術的な側面が分かる技術者(開発責任者兼統括リーダーM氏とプロジェクトリーダーI氏)を団体交渉に参加させることを会社に求めています。
 しかし会社は、この要請を拒否。人事担当者のみで交渉が行われています。今回も交渉の席上で改めて技術者の参加を求めましたが、拒否されました。その理由は「交渉参加者は会社が決めるから」「労基署にかかわることだから」など理由にならない勝手な理由です。しかしそれでいて技術的な話は「わからない」と胸を張っておっしゃられるのだから参ってしまいます(専門家にしかわからなくて恐縮ですが、人事の方はXYステージもご存知ありませんでした)。

 ここまで拒否されると、会社には何か隠さなければならないことがあるのではないかと疑いたくなってしまいます。


【社内ルール、チームで決めたルールについて問題にしました】
開発スケジュールに無理が生じ、それを力業で乗り切ろうとした場合、様々な破綻が生じます。その1つに社内ルールや社外ルール、チームで決めたルールが破れることが含まれます。今回このルール違反について内部告発も兼ねて丁寧に会社に説明しました。会社からの回答待ちです。The Advantest Wayの「RESPECT」が正常に機能するか、試金石となるでしょう。ルールを力業で捻じ曲げるところに労働問題が隠れていることをよく考えて欲しいと思います。

https://www.advantest.com/ja/about-advantest/the-advantest-way

【人員不足について】
Aさんのプロジェクトでは人員不足が常に問題になっていました。それはAさんが過重労働を強いられた主な理由のひとつのです。
プロジェクトのリーダーだったI氏も常々人員不足について言及し、会社にも人員を増やすよう要求していました。
ところが、会社は「M開発責任者とプロジェクトリーダI氏は、人員不足はないと言っている」と繰り返し、事実を認めようとしません。人員不足は国への報告書にも記載されていますが、それも「I氏が、社内の他の仕事を行うために増員計画があった。社内の仕事は取りやめたので人員不足ではなかった」と説明します。
これは驚くべき主張で、AさんはI氏が社内の他の仕事を行うことを全く聞かされていませんでした(I氏も社内だけでは業務が終わらず、自宅に仕事を連日持ち帰っており、プロジェクト以外の仕事を行う余裕はありませんでした。)。

私たちは交渉で次の通り説明しました。
1、アドバンテストは東北大学が作製したセンサーを組み込んで「システム開発」(センサーなどの部品を組み合わせてシステムとして動作させる)の役割で2016年10月に参加した。
2、ところが、いざ東北大学が開発したセンサーを試作システムに実装し評価を行ったところ、期待通りの性能が得らなかった(図1)。
3、そのため、センサーの開発に一人人員を割かなければならず、人員不足となっていた。

画像1

図1 株式会社アドバンテスト 委託研究開発実施状況報告書(成果) 平成28年度(税金を使ったプロジェクトのため、成果がWebで国民に公にされています)
https://www.jst.go.jp/impact/report/data/program10/h28/yagi_2813.pdf

上記の事実は、委託元である国に対して、報告されていましたが(図2)、実現はしませんでした。人員増が実現しない中で、I氏は「気合と根性」で「なんとか乗り切」ると皆を鼓舞しました(図3)。厳しい様子がお分かりいただけると思います。

画像2

図2 2016年12月に行われた国との公式打ち合わせでの説明資料(I氏作成)。困っていることとしてマンパワーの不足に言及している。


画像3

図3 2017年7月に行われた国との公式打ち合わせでの説明資料(I氏作成)


【交渉で会社が唯一認識された技術的内容】
図4のメールは当時I氏が同僚Bさんに送ったメールです。AさんはCcと本文中(赤塗部分)に登場します。人事部にこのメールを見せて「なぜこのメールはAさんにとってプレッシャーになるでしょうか?」と聞きました。「本来システム設計仕様書の方が信号接続図より先に完成してないとならないものだからではないでしょうか」と回答を頂きました。正解です。「システム設計仕様書→信号接続図」の順序が正常な製品開発プロセスです。唯一理解して頂いた技術内容でした。しかし、深夜・休日にI氏とメールをしながら仕事を遂行していく中で、こういう圧力の掛け方をされたAさんがどれだけ辛い思いをしたか、人事部の皆様にはわからなかったようです。

画像4

図4 I氏が同僚Bさんに送ったメール。赤塗部はAさん。


【アドバンテストの皆様へ】

 最近本件が社内でも話題になり少し社内がざわついているようです。このような恥ずかしい内容が公表されることに、心を痛めている方もいらっしゃると思います。しかし、会社の対応があまりにも不誠実で、私たちもやむにやまれぬ思いであることをどうかご理解ください。
 私自身、公表することに大きな葛藤があり苦しいです。決して気持ちの良いことではありません。当時を思い出すこともとてもつらいです。しかし、理不尽な状況に黙ってしまったら今後どうやってアイデンティティを維持するかという問題に直面し、こちらも大きな苦悩でした。結局、主張は最後まで押し通そうと決め総合サポートユニオンに入り、交渉を重ねています。
 ここまでの道のりではなるべく事案を内々に済ませようと努力をしてきました。2018年3月に人事部へ内部通告をしてから、かれこれ2年が過ぎようとしています。しかし、実状を可能な限り丁寧に会社に説明しても会社は否定し続けました。最後の選択肢として「社内がダメなら、世論にこの問題をがどのように映るのだろうか」という一点に訴求せざるを得ませんでした。もうしばらく続くと思いますが、ご了承下さい。
 noteで社会発信したことで、私のことを知っている複数の社員の方らか「note見たよ、応援している」と声をかけて頂きました。ありがとうございます。
 私たちには今、一人でも多くの方のご協力が必要です。会社の対応も多くの声が合わさればきっと変えることができると信じています。


画像1


総合サポートユニオンの活動を応援してくれる方は、少額でもサポートをしていただけると大変励みになります。いただいたサポートは全額、ブラック企業を是正するための活動をはじめ、「普通に暮らせる社会」を実現するための取り組みに活用させていただきます。