ハゲー

【アドバンテスト】過酷なノルマと過労死ラインを超える残業、パワハラの実態

大手半導体試験装置メーカーのアドバンテスト(https://www.advantest.com/ja/)で働くAさんが労災ユニオン(http://rousai-u.jp/)に加入しました。Aさんの要求は、長時間労働とパワーハラスメントが原因で精神疾患を発症し休職に追い込まれたことを会社へ認めさせることです。

◆過重なノルマと長時間労働で体調不良に

Aさんはアドバンテストで、国家プロジェクトである革新的研究開発推進プログラムImPACT(https://www.jst.go.jp/impact/program/10.html) から委託された開発業務に携わっていました。その仕事内容はサブリーダーとしてチームをまとめつつ、基礎評価からシステム仕様検討・設計までと幅広く、要求される難易度が非常に高いものでした。具体的には製品システム仕様を決めるための基礎検証、システム制御機構の検討(駆動系制御、インターフェース制御、画像アルゴリズム、筐体・信号線、安全設計機構)に加え、同僚のサポートも行っていました。

更に、既存製品の製造サポートも行っていました。そんな状況の中、基礎評価が予定より遅れ、システム制御機構の検討に影響を与えたため、挽回することが必須でしたが、それをカバーするための時間は、定時時間内では圧倒的に不足していました。

ところが、会社内では「月9時間まで」という厳しい残業規制がありました。月の残業が9時間を超えると「36協定の残業時間が17.77時間となっています。仕事の調整をお願いします。」などとメールにて時間内で退社するよう常に求められました。そのため、Aさんは仕事を自宅に持ち帰えらざるを得ませんでした。

ただし、持ち帰り残業といっても、管理職とは連日のように深夜・休日にメールのやりとりを行っていましたし、プロジェクトの工程表も存在しています。Aさんが膨大な量の仕事を自宅へ持ち帰り、サービス残業としてやっていたことは、管理職でありプロジェクトリーダーでもあるI氏が認識していました。

100時間を大幅に超えるサービス残業が2カ月以上続き、Aさんは肉体的にも精神的にも追い詰められ、健康を害してしまいました。

◆体調を崩したAさんに追い打ちをかけた上司のI氏「さっさとやれよ」

Aさんはこのままでは倒れてしまうと感じ、I氏にスケジュールの延期を求めました。ところがI氏はAさんの話には一切耳を傾けず、「なんでみんなスケジュール通りにやろうとするの? 前倒ししないの? 俺は早く仕事を終わらせたい。みんな遅いよね」と逆にAさんに圧力をかけました。

Aさんは睡眠障害により眠れなくなり、キーンと高く響く耳鳴りが発生。不整脈が多発し、苛立ちが強くなり、自然と涙が流れるなど、体調はどんどん悪化していきました。

それでもAさんは、ペースを落として仕事を続けていました。普通なら部下を気遣い休養を与える立場のI氏はさらにAさんをあおりました。「元気だった頃のパフォーマンスを期待する」、「ボールを持つな、さっさとやれよ」etc。Aさんはついに適応障害を発症し、休職することになってしまいました。

◆I氏のハラスメントメール「このハゲーッ!!」

I氏の乱暴な言い口はメールにも残されています。I氏は自分の思うとおりに仕事が進められなかったり、誰かが失敗したときに、その人間を口汚く罵る内容のメールをAさんに度々送っていたのです。

Aさんはまるで自分が言われているような気になりました。I氏が人を侮蔑している姿に恐怖したのです。

手元にはそんなメールがいくつかあります。I氏に怒られて取引先の人が謝罪メールを送ってきたときのことです。I氏はAさん宛に「このハゲーッ!!」というメールを送ってきたのです。「ハゲ」というのは取引先の人のことでした。管理職であるI氏は社内のパワハラ研修も受けているのですが、冗談にもほどがあります。

ハゲー

 同じようなメールがいくつかあります「人を敬え! 何様じゃ!」「バカなのか? さっさとリストラすればいいのに」などなど。

何様じゃ

リストラ


◆サービス残業は自己研鑽???~残業の事実を隠蔽する会社管理職たち~~

Aさんは適応障害で苦しむ中、当時のメール(図1参照)と成果物を証拠としてまとめ、人事部に事情を説明し、内部通告を行いました。

ところが会社はAさんのサービス残業を労働と認めようとしませんでした。
「開発研究責任者のM氏(図2参照)はサービス残業はなかったと言っている」(人事部のF氏(現在子会社の代表取締役))
「自己研鑽では?」(同人事部のK氏(現在子会社の取締役兼務))

Aさんにはとても信じられないような発言が相次ぎました。

AさんはK氏に対し、「私がやっていたのは全て国家プロジェクトの仕事です」と言いました。しかしその後も面談の中で、K氏は録音テープを回しながら、Aさんに「自己研鑽であった」と言わせるような質問を重ねました。これ自体がパワーハラスメントと言ってよいでしょう。

精神疾患に陥っている労働者を追い詰める上司がどこにいるでしょうか。人権侵害も甚だしいです。

Aさんは、このような会社の対応を、労働者の人権を無視した極めて不誠実な対応だと感じています。

図1


図1 Aさんが送信したメールの時間一覧(24H表記。紙幅の関係で省いたが、2カ月以上に渡り同様の状況が続いている)。適応障害に苦しむ中、Aさんが作成し人事部に内部通告。メールには相当量の時間を費やして作成した資料などの成果物が添付されている。赤字の時間は下記2つの条件を満たす。
条件1.プロジェクトリーダI氏を宛先に含む。
条件2.タイムカード管理上の勤務時間外(サービス残業中)のメール。

◆Aさんの想い

私は現在、復職して別の開発部署で勤務しています。復職先では無理なスケジュールを押し付けて煽る上司はいませんし、私以外の部員に対しても無理が生じないよう、突発的なトラブルが生じても、チームでうまく仕事のリカバリーができるよう、ボリュームとスケジュールを上司や同僚が上手にコントロールしています。また、「俺のために馬車馬のように働けばいいんだよ」とか、冗談でも「殺すぞ」などと言う上司もいません。今が普通の状態であることを改めて感じ、前の部署の異常さを身に染みて理解しました。

10カ月の休職中、自宅で引きこもっていたため、家族にはとても心配され迷惑を掛けました。特に妻を悲しませたことを申し訳なく思います。ほとんど人と話さなかったため、復職してもしばらくは人とうまく話すことができませんでした。復職して1年がたとうとしていますが、最近すこしずつ回復しているように思います。生まれつき吃音持ちでしたが、体調を崩した後から悪化し、現在も喋りにくさを感じています。少しでも元の状態に戻れるように、前向きに頑張っていきたいと思います。

体調面では耳鳴りと睡眠障害が後遺症として残っています。仕事が終わるとどっと疲れてしまい、仕事でも私生活でも体調を崩す前のような活動ができず、苦しい部分もありますが、じきに治ると信じて過ごしています。

この記事では、社名を匿名にしようと考えていましたが、第1回目の団体交渉での会社の対応を鑑み、公開することにしました。社内の取締役会以下の組織が対応するコーポレートガバナンス(https://www.advantest.com/ja/sustainability/corporate-governance)、またコンプライアンス(https://www.advantest.com/ja/sustainability/compliance)、では限界があること感じ、地域社会を含めたステークホルダーに訴えていく必要があると判断しました。今後の交渉事も、社会のフィルタを通すことで事実関係を精査していけたらと考えています。

当時の環境を図2にまとめました。当時のことを思い出しながら長引きそうな団体交渉を進めることは非常に辛いですが、私はエンジニアとして事実を捻じ曲げることの方が苦痛です。弊社の人事部・経営陣と最後まで闘う覚悟を決めました。

プロジェクトリーダI氏は、この分野の世界トップレベルのエンジニアであり、データを客観的に正しく評価する力があります。自分の部下への行為(パワハラ発言、正当な理由で出来ないと申し出た仕事を延期させなかったこと、etc)に対しても同様に、客観的に分析することができるはずです。ご自身の都合に合致させるような改竄を行わないで欲しいと思います。

弊社経営陣に対してですが、労災ユニオンで対峙する会社経営陣は、事実を捻じ曲げ隠蔽し、労働者をゴミくずのように使い捨てますが、そういったレベルまで成り下がらないで欲しいと思います。The Advantest Way を読み返し、意味を考えてみてください(https://www.advantest.com/ja/about-advantest/the-advantest-way)。本質を見失わず、誠実に対応して欲しいと思います。

アドバンテスト関係図名だし

図2 プロジェクトにおける弊社の役割と、工数増大要因の概略



総合サポートユニオンの活動を応援してくれる方は、少額でもサポートをしていただけると大変励みになります。いただいたサポートは全額、ブラック企業を是正するための活動をはじめ、「普通に暮らせる社会」を実現するための取り組みに活用させていただきます。