埼玉県の食品製造工場で働くベトナム人技能実習生の組合員が、労災事故の損害賠償を求めて会社に団体交渉を申し入れしました

総合サポートユニオンの組合員であるベトナム人の20代の女性(Aさん)は、2022年10月に技能実習生として来日し、会社の寮で暮らしながら、埼玉県にある食品製造工場で働いています。

働き始めて約1年後の2023年12月、Aさんは機械に手を挟まれて、右手を切断するという大怪我を負いました。労災事故が起こってから今年4月まで入院しており、右手を失ったためいまも働くことができません。今後は義手を作ってリハビリを行うことになっていますが、いまでも痛みを感じるとAさんは話しています。

Aさんには労災が適用されているため、医療費は無料で、労災の休業補償から給料の約8割を受け取っています。しかし仕事中に怪我を負ったにも関わらず、実質的に減給となっており、またもともとの給料が最低賃金ギリギリの水準だったため、生活に困窮するようになりました。会社から怪我に対する補償は一切支払われておらず、むしろ「怪我をしたのはあなたが悪い」と言われたとAさんは話しています。

・「機械については日本語で説明した」と会社は回答

そこで、Aさんは労災事故に対する責任を会社に追求するために、私たちの労働組合に加入しました。そして、5月7日火曜日に会社に団体交渉の申し入れを行いました。主な要求事項は以下の3点です。

1)労災事故に対する補償
2)在留期間の延長手続きを会社がきちんと行うこと
3)「寮規程」の撤回

まず、「労災事故に対する補償」についてですが、Aさんは昨年12月に工場内の機械に設置されていた刃に手を挟まれて、右手の切断を余儀なくされました。そもそもなぜ手が入ってしまうような構造になっていたのか、また安全講習などは行われていたのかについて会社に問うと、会社側は「機械の説明は日本語で行っている」「手を入れた箇所には(手が入らないように)カバーやセンサーはついていなかったし、いまでもつけていない」と回答しました。

この会社ではAさんの他にもベトナムやミャンマー、タイから来た労働者が働いていますが、労働者自身が十分に理解できない言語で機械の使い方について説明しても、それで安全が確保されるとは到底言えないでしょう。このように、十分な安全対策が講じられなかったことで今回の事故が起こってしまったと私たちは考えており、会社はAさんに対して補償を行う義務があるはずです。

・「在留期間の延長手続きを行うかはわからない」

そして、「在留期間の延長手続き」についてですが、Aさんは労災事故が起こってから今年4月まで入院しており、今後は電動義手を作ってリハビリに取り組む予定です。ただいまのAさんの在留期限は6月下旬までとなっていますので延長が必要です。私たちは在留期限の延長のための手続きを会社が行うよう求めましたが、会社側は「監理団体と相談してから決める」と言って手続きを行うかの明確な回答を避けました。

本来、労災受給中の労働者は解雇することができません(労働基準法第19条1項)。しかし、技能実習生であるAさんは、在留期限が切れてしまえばベトナムに帰国しなければなりません。労災受給中は解雇できないにもかかわらず、在留期限を延長せずに「放置」することで実質的な解雇が外国籍の労働者の場合、可能になってしまいます。そして、賠償など会社の責任が有耶無耶にされる可能性があります。

日本に来る際にAさんがしてきた借金はまだ120万円ほど残っています。今、補償を受けられずに帰国することになってしまえば、ベトナムにいる家族を養えず、今後の生活がますます苦しくなってしまうことは容易に想像できます。

・「土日祝日の外出時には会社に連絡をいれること」

また、会社は「寮規程」において、「門限(21時)」を設けたり、土日祝日の外出時には2日前に会社に報告するようAさんに求めていました。なぜ会社から土日祝日の行動にまで制限されて、移動の自由に制限がかけられなければいけないのか理解に苦しみます。そこで私たちはこの寮規程の撤回を求めました。

これに対して会社は、寮規定に関してはあくまでも「お願い」であり罰則などはないと答えました。罰則がないことを確認できたのはよかったですが、そもそもこの内容が文書で提示されAさんがこれにサインしている以上、規定を破ったら罰則があるとAさんが思っても仕方がありません。

なお、Aさんに限らず、日本で働く技能実習生などの移民労働者は、人権を軽視され、使い勝手のいい労働者として扱われていることが多々あります。そのような状況で、Aさんのように声を上げて権利を主張することはすごく大変なことですが、そうしていかなければ外国人差別の蔓延るこの日本社会は変わることはないと思っています。今後私たちは団体交渉などを通じて、この会社に賠償を請求し、Aさんや他の労働者の人権を尊重するように求めていきます。


技能実習生など日本で働く移民労働者からの相談が相次いでいます。特に労災被害に遭って、手指を切断するなどの大怪我を負い、その後解雇されたケースが少なくありません。このような労働者を支援し、活動を広げていくためにも、私たちの活動にご支援、ご協力いただけると幸いです。

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