たなか

ここで文章を練習したり、思い立ったことを書いたりします。日記みたいになるかもしれません。

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最近の記事

我慢比べ

 2018年の9月初めごろだっただろうか。  大きな、とても大きな台風が日本にやって来た。台風21号とかいう名前だったと思う。  徳島県辺りに到達した後、北北東方向へ大地を舐めるように進んで行った。僕の住む街も通り抜けた。  ただ通りすがる傍ら、もののついでのことをしたまでと言うかのように自然の猛威とやらを奮った。  横殴りにコンクリートを叩く雨音、街道を吹き荒ぶ風音が屋内にまで轟いた。  とりわけ、暴風は凄まじい勢いだった。  信号機をひん曲げ、街灯に頭を垂れさせた。

    • とびらのむこうがわ

       僕は、マンションに住んでいる。  マンションといっても、語源で意味するところの豪邸ではない。どこにでもあるような鉄骨鉄筋コンクリートの集合住宅だ。  ここにオートロックはない。駐車場もない。コンシェルジュなんて勿論いなければ、宅配ボックスだってない。そのような上等なものの類いは、ここには一切ない。  これさえ壁にくっつけておけばもう十分だろう、義務は果たしているだろう、と言わんがための集合ポストがあるのみだ。  この集合ポストにしたってあるにはあるのだが、ぞんざいに扱

      • 昨日、くるみの食パンをひと切れ、そのまま食べた。あんまり、おいしくなかった。 就寝すると夢を見た。食パンを焼く夢だ。グリルで焼く夢だった。表面がほんのりと、茶色に染まっていた。潜在意識の提案か。 朝起きて、実際に焼いてみた。くるみが香ばしい。食べてみた。おいしくなった。以上。

        • ショートショート|数学ギョウザ

          品評:100010001101111001000000100111001001111010101000010000001100101011000010111010000100000011101000110100001101001011100110010000001110011011010000110100101110100001000000110111101110010001000000111100101101111011101010010000001100001011100

        我慢比べ

        • とびらのむこうがわ

        • 昨日、くるみの食パンをひと切れ、そのまま食べた。あんまり、おいしくなかった。 就寝すると夢を見た。食パンを焼く夢だ。グリルで焼く夢だった。表面がほんのりと、茶色に染まっていた。潜在意識の提案か。 朝起きて、実際に焼いてみた。くるみが香ばしい。食べてみた。おいしくなった。以上。

        • ショートショート|数学ギョウザ

          ショートショート|コロコロ変わる名探偵

          「は犯人がわかりりました」  探偵がそう言うと、部屋は静まりかえった。皆が固唾を飲んで見守る。 「さ殺人ん犯は、井上だだ。死亡す推定時こ刻のにに22時頃、か彼にはアリバイがない」 「いや、井上はその時間、皆とカフェテリアに居た」  誰かが訂正した。 「では、う上野、彼だだ」 「……上野もカフェテリアに居た」 「でででは、ええ江本だ」 「江本もカフェテリアに居た。……おい、どうした?」  探偵は白目を剥き、泡を吹いていた。 「くそ、フリーズのようだ。実験を中

          ショートショート|コロコロ変わる名探偵

          ショートショート|君に贈る火星の

           男が居た。男は、美しい女に恋をしていた。女の気を惹こうと、月並みな努力はしたものの、男に振り向くことはなかった。 「そんなことをしても、あなたを好きにはならないわ」  男は願った。何を捧げようとも、女を手に入れたいと。願いを聞きつけ、悪魔が現れた。 「たとえ何を捧げようが、願いを叶えたいというのは本当か?」 「ああ、そうだ」 「女は何を望んでいる?」  男は女が言っていたことを思い出した。 「そうね、火星の景色をこの目でいっぱいに見てみたいわ。それができるなら

          ショートショート|君に贈る火星の

          ショートショート|しゃべるピアノ

           あるところに ちいさな おんなのこが いました。  おんなのこは ピアノを まいにち れんしゅう していました。  ピアノは そんな おんなのこを ずっと みていました。  さいしょは へた だったけど まいにち まいにち れんしゅうすると どんどん じょうずに なりました。  ピアノは おんなのこが がんばっていると しあわせでした。  なんねんも なんねんも れんしゅうして おんなのこが 少女となり なだらかな曲せんを帯び始めたころ、上達は頭打ちとなった。苦心

          ショートショート|しゃべるピアノ

          ショートショート|空飛ぶストレート

          「我々で最後のようだな」 「ああ。地上の人類は滅亡するに違いないさ」  シャトルの点検を終え、乗り込む準備が整った。  彼らは地球を脱出しようとするところであった。人類の絶滅を防ぐために戦ってきたが、もはやこれまでと不利を悟り、地球を見捨てることにしたのだ。  彼らの敵は多かった。賛同する者もいた。しかし、しない者の方が多かった。彼らは、賛同しない者を敗北主義だとか、非生産的だとレッテルを貼り、その者たちをも敵であるとして攻撃した。  シャトルが発進すると、誰かがつ

          ショートショート|空飛ぶストレート

          短編小説|きれいに食え

           それは、ある大衆食堂でのことだった。  そこには、二人の男がいた。とある会社の上司と部下だ。上司が部下を昼食に誘ったから店にいるわけだが、それは、コンビニエンスストアの弁当ばかり食べている部下を憐れんでのことであった。部下の方は、普段の昼食に特段、不満を持っていたわけではないが、「たまには二人でメシでも食いに行くか」という上司の言葉を聞いて、「それも悪くないか」と思い軽い気持ちでついてゆくことにしたのだ。もとより、上司という者の誘いを部下が断わるべくもない。それは時代錯誤

          短編小説|きれいに食え

          短編小説|みんなも玄米を食べよう

           とある日、なんとはなしに、玄米なるものを食べてみようと思いついた。健康や美容に良い完全栄養食だとか言われているらしい。  思い立ったが吉日だ。僕は、その日のうちにお店へと足を運ぶことにした。お米屋さんに行くのは生まれて初めてなのだ。期待と不安が胸をよぎる。  目的地は街の小さな個人商店。地域密着型というやつだろう。  すたすたと徒歩で行き、一度、外から様子をうかがう。  お米屋さんの中には店員さんとお客が一人ずつ居た。店員さんは、赤いエプロンを身に着けた、気立ての良

          短編小説|みんなも玄米を食べよう