星花火【短編小説】

 今日は新技術を駆使した史上初の星花火大会だ。二酸化炭素排出量を少なくするために花火が禁止されてしまい、それに代わり発明された物が星花火である。
「これから星花火の解説を始めます」
女の人の声のような音がスピーカーから聞こえてくる。
「星花火は磁気を発している星を地球から強力な電磁石で引きつけ、動かすことでの花火のような華やかさを再現します。」
最近の技術の発展への驚きでぽかん、としていると
「それでは星花火大会スタートです!」
という声が聞こえてきて慌ててスマホのカメラを起動させた。
まもなく、急に星が降りてきて、舞い始めた。
あまりの綺麗さに言葉を失う。会場が急に静かになる。花火大会でいつも騒いでる陽キャ達もこの瞬間は言葉を失っている。程なくして、その静寂は「近づいて来る!」と言う声で破られてしまった。どういうことなのだろう、近づいてくる?何が?
「あぁ!花火を見ろ!」だれかが言う。それに従い花火をみると岩のようなものが空を覆っていた。え?え?星が…近づいている…
「ぶつかる、危ない!」と声がすると今度は逆に遠ざかって見えなくなってしまった。と思うとまた近づいてきた。それが繰り返され、困惑していると
「申し訳ありません。電磁石の誤作動で星が制御不能になってしまいました。地球にぶつかってしまう危険性があるので直ちに避難してください。」スピーカーからそう声が発された
えぇやばい、早く逃げよう!、もうダメだ〜とみんなが口々に言っているのを尻目に僕は走った。
足が動かなくなるまで走った。もう足が動かなくなり、視線を星花火会場に移す。すると星がずっと空を覆って動かない。安心はできないが、会場に戻るのはもっと危険なのでタクシーでそのまま家に帰り、寝た。
朝起きて、会場の方を見ると、まだ星がそこにいた。
 次の日の朝も星がいた。
 一ヶ月後もまだ星がいた。もう長いこと太陽光発電ができていない。
 一年後もまだ星はいて、その地域はもう太陽が差さない村と化してしまった…

行田 人(中学2年)

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