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きうひい【コンパクト レトロ】

 キューピー人形は、1909年に米国で誕生したキャラクターとされているが、実はそれには前史がある。江戸時代後期、吉原の遊女たちの間で一大ブームを巻き起こした「きうひい」である。赤ん坊を模した小ぶりの人形は、釉薬を塗った焼き物で作られており、つるりとした肌触りが好まれたという。
 もとは「稀有けうひな」に由来し、吉原で死産された子どもを悼んで作られた素焼きの人形だった。
大正期に逆輸入の形で日本に入ってきた「きうひい」は、再びブームを巻き起こすが、江戸期のルーツは次第に忘れ去られていき、現在では舶来の文化として理解されている。
 今回展示したものは、大正期に逆輸入された中でも最初期のものであり、四つの「きうひい」が背中合わせに配置されている。そこには、互いに出会うことのないままに命を落とした子どもたちの悲しみが表現されているのかもしれない。

キュレーター 羽根川 樹里

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