見出し画像

凶兎のきば【占いの裏】

『「雪の日にドロボーした奴はモフに喰われる」有名なことわざだろう?
 モフといえばそりゃあそりゃあ恐ろしい人喰いウサギで、クマに劣らない体格を持ってやがる。極め付けはどデカい牙。晴天の日にはエサの捕獲に、雨天の日にゃ悪の成敗に使う。まあ、親の仇とかそんなところだろうな。
 モフが凶暴なんじゃねぇ。牙が凶暴だなありゃ。天気が悪い日に近づこうとして見ろ? たちまち即死だぜ? うぅ……背筋が凍るよ。
 だがな、もう四〇年は前の話だが、俺は仕留めたんだぜ。モフを。その牙は今、占いに使われとる。雨の日にあいつで傷をつけて血が出ちまったら、そいつは犯罪者なんだってよ。人喰い兎の牙が今じゃ法廷で使われてる。
 モフの子孫を怖がっとる奴もいるよう……』
 
その長い長い自慢話には、大胆な血痕があった。

キュレーター 波止場のカモメ

Photo by Dan Farrell on Unsplash

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?