見出し画像

リレー小説バトル

世田谷学園文芸部がお送りする部誌「虐睨 第11号」。
巻頭を飾る特集は、中学三年と中学二年の、血で血を洗うリレー小説バトル。
中三チームが、その実力差を見せつけて後輩を捻じ伏せるのか、
はたまた、中二チームが自由奔放な想像力で下剋上を果たすのか。
勝負の行方を見届けるのはあなたしかいない!


かがみあわせ【中学三年チーム】

第一走者:井上大志

 鏡の中には弟がいた。弟がよく好んで履いていた灰色のチノパン、赤色のダサいチェックシャツ。そして、縁の無い伊達メガネ。俺と弟は瓜二つなのだ。双子、それも一卵性の双子なのだから当たり前だろう。
 俺は満足して弟のクローゼットを閉め、彼が普段使っているだろう椅子に座った。胸の中で不定形の冷たい物体がざわざわ動いていると錯覚させるほど強い緊張を、鎮めるために俺は机の上の物を調べ始めた。辞書や輪ゴムで留められた写真の束、それらに付けられた付箋を読むと、やはり彼は俺とは正反対の几帳面な性格なんだと気付かされる。
 そして、俺はパソコンに手を伸ばした。ここからどう情報を自分にダウンロードするのかが今後の鍵となる。元々このパソコンは父のお下がりで、家族で共有していた物だ。思い出す前に指が勝手に動き、パスワードを入力する。
 パソコンを起動すると、二人の幼い弟が誕生日ケーキを囲んでいる写真が画面に映し出された。確か七歳の誕生日の時に撮られた写真だ。弟のように壁紙にはしてないものの、楽しかった記憶がある。思い出すと勝手に頬が緩むほどだ。
 弟に届いたメールに一通ずつ目を通していく。編集者からと思われるメールは特に注意深く読んだ。どうやら今は書き上げたミステリー小説の原稿を推敲中らしい。弟ほど売れているわけではないが、俺だって一応は小説家なのだ。読んだ人間に見る目が無かっただけで、俺の小説の面白さは誰にも負けていない。それこそ弟にもだ。
 ポケットの中のアイコスを取り出し、吸いながら俺は自分を落ち着かせようとする。思い返せば、俺と弟はずっと一緒だった。
 出産時に元々体の弱かった母親は亡くなってしまったが、父親は一人で俺たちを愛情たっぷりに育ててくれた。読書好きだった父親の影響を受けてか、俺たちは二人とも同年代が読む本よりも数段難しい本を読むようになった。ただ本を読んでいる時間が、二人で一緒に遊んでいる時間を上回ったことは一度もない。それほど仲が良かったんだ。
 俺たちは大人となり、弟は日本の文学賞を総なめにした新進気鋭の小説家として地位と名声を得て、俺は売れない小説家として毎日アルバイトをしながら生きていた。この間の差は、開いているように見えて、ほとんど差はない。紙一枚分、まさに紙一重の差だと俺は思っている。
 評価とは必ずしも正当に行われるものではないのだ。だから時には少し強引な行動が必要だ。俺が犯した罪を考えれば、非は全て俺にあるように見えるかもしれないが、実際は一対一、つまり五分五分と言ったところだろう。
「ただいまぁ」
 間延びしたように聞こえる声が玄関から聞こえる。ただ、その声にはいつもと違い抑揚があまり無かった。
「お帰り。旅行はどうだった?」
 小柄な彼女には似合わない大きなスーツケースを手で受け取り、微笑んだ。実際に会うのは一年ぶりだが、彼女はやはり美しいままだった。弟の妻である彼女は、小学生の頃から変わらず元気で、誰に対しても聖母のように優しく振る舞い、俺の憧れの人だ。ただ、一つ変わったことがあるとすれば、服の上から分かるほど膨らんだ腹だ。

第二走者:波止場かもめ

「うんー、楽しかったよ。」やはり元気がない。棒読みすぎる。
「え、大丈夫?」
「ちょっと道混んでて。疲れちゃった。」

 俺の心配を察したのか、彼女は少し早口で弁解した。疲れていながらもテキパキとした彼女の手つきからは、やはり真面目さがうかがえた。弟は本当に幸せ者だ。本当に。
 ぼんやりと彼女の華麗な荷ほどきを眺める。
「うん、ありがと。じゃあ一旦昼寝しようかな。」深く頷いていた。
 ソファに横たわり、古いせいか少し埃の匂いがするクッションに顔をうずめる。なぜか眠れない。荷解きを全て彼女に任せている罪悪感もあった。目を瞑っている間に、その罪悪感はどんどん大きくなっていった。
「ごめんごめん任せっぱなしで。手伝うよ。」
 紙一重、こういう所なのかもしれない。
「いいよ、仕事溜まってるって言ってたでしょ。」溜まる仕事も無い。きりが無い言葉にするだけで罪悪感は晴れるものなのか、今度は眠れそう。劣等感から逃げるように眠りについた。

 弟は、親父譲りで不器用な俺と違って些細な気配りをする男だった。小さい頃はよく、細かく配慮しすぎる弟のことを「男らしくない」とバカにしていた。弟の性格の方が人に好かれるということは分かっているが、ナメられたくないという気持ちが勝つ。人に媚びる生き方はしたくなかった。

 起きて時計を見ると、もうすっかり夕方になっていた。起き上がると寒気がし、Tシャツに汗がびっしょりと染み込んでいた。周りを見回しても人は居らず、アンティーク調の時計の秒針だけが鳴り響く。
 沈黙が居た堪れなくなり、テレビをつける。今日も退屈で平和なニュースばかりが流れる。コマーシャルが始まりぼんやりと眺めていると、弟の新作小説の広告が流れてきた。家族の仲が壊れていく様を描くミステリー小説。漠然とした不安に駆られた。
 ここからは忙しい日々が続いた。

第三走者:春山林

 弟は小説の仕事をいくつか残していた。雑誌の掲載する短編、連載中の小説の続き、本の紹介文、大きな仕事こそ無かったものの仕事など二ヶ月に一回ほどしかこない自分からしてみれば、相当な量の仕事だった。
 この仕事が終わってから殺すべきだっただろうかと思案して、しばらくしてその考えを引っ込める。自分と違い弟は売れっ子だった。この仕事が終わっても新しい仕事が来るだけだ。
 ファイルを探してみるとほとんどの仕事は綺麗にファイル分けされ、わかりやすく整理されていた。弟はかなり几帳面で、自分が図書館で読み終わった本を近くの適当な本棚に戻そうとするといつも叱ってきた。
 思い出したら胸の中がイライラしてマウスを乱暴にクリックしながら仕事のデータを黙々と探して拾い続ける。
 そんな作業の最後に雑誌に掲載する作品を見つける。これで最後かと思いきや、その文章は途中で終わっていた。それを見て自分はこれから自分がやり続けなければいけない事を改めて認識した。これからは弟の代わりに自分が小説を書き続けなければならない。
 自分は緊張しながらも弟の書いた小説にじっくりと目を通し、そこに自分の文章を継ぎ接ぎしていった。
『先生、調子大丈夫ですか?』
 電話越しに聞こえてきた声が自分を固まらせる。
『送ってもらった小説、中盤くらいまでは良かったんですけど、終盤くらいからいきなり何の脈絡もなく新しい設定が登場して、色々とメチャクチャになっちゃってますよ。なんか文章もちょっと下手になってるし。』
「あ…えーと…」
 言葉が続かない。弟の書いた小説を自分は引き継ぎ完成させようとした。しかし弟はミステリー作家で自分はSF作家、そもそも弟が仕掛けたトリックもわからず、無理矢理夢オチのような形で話にケリをつけようとした。
 しかし編集者から見ればそんなの許せるはずがない。あいつらは少しでも話にデキの悪い所があると、そこをいつまでも攻め続ける。あいつらはそんなやつだ。
 編集者から浴びせられる罵声に怯え目を瞑った瞬間
『まぁ、そんなこともありますよね。』
「え?」
 帰ってきたのはひどく優しい言葉だった。
『大方話のオチを考えないまま書き続けちゃって、こんな風に無理矢理終わらせるしかなくなっちゃったんでしょう? 誰だって何回かそういうことありますよ。さすがにこのままってわけにはいきませんけど、自分の方でも推敲してみるんで大丈夫ですよ』
 その言葉に驚き呆然としていると、
『先生?』
 と編集者の心配そうな声が聞こえる。
「ああ…大丈夫。後…その…すみません」
 辛うじてその言葉を吐き出す。
 その言葉に編集者は、
『全然大丈夫ですよ。仕事以外にも奥さんのこととかで忙しいんでしょう? そんなに気にする事ありませんよ。』
 そういう風に軽々と言ってのけた。
「…ありがとう」
 そういうと返事が聞こえる前に電話をきった。
 意味がわからなかった。編集者というのは小説家に罵声を浴びせ、どうでも良い所を指摘し続ける存在では無かったのか。自分を担当してきた編集者はそんな奴らばかりだった。あの編集者の態度が弟が売れっ子だからなのか、それとも弟が人柄が良く良好な関係を築いているのか、そのどちらかなのか、あるいは両方なのかはわからなかった。
 しかしどちらにしたって自分は弟の何倍も劣っている。それを実感した。なぜ自分達は双子だというのにここまで違うのか。なぜ五分五分ではないのか。そんな考えが頭に何回も何回も何回も巡り続ける。
 それを断ち切るように携帯を地面に打ち付け、乱雑に音をたてて階段を降りる。

階段を下り終わった後でこの行為を彼女に聞かれている可能性を初めて考慮する。いくらか不自然だったと自分を戒め、リビングのドアを開ける。
 そこには彼女が倒れていた。その後のことはなぜか記憶に良く残った。大急ぎで救急車を呼んだ後は、彼女と一緒に病院に行き、そこで彼女の出産にも立ち会った。彼女が腹に宿しているのは弟の子供。そのことは考えるだけで顔に出てしまいそうなので、できるだけ考えないようにした。
 しかし、彼女の容態が急変したため、出産には立ち会えなかった。

 そして待合室で待つこと数時間。看護師の一人が自分の前にやってきた。
「旦那さん。子供は無事産まれましたが…奥さんはお亡くなりになりました。」
 その言葉を聞いても全く動揺していない自分自身に驚いた。彼女は弟に取られたとはいえ間違いなく、自分の初恋の相手だった。にも関わらず自分の心は全く揺れなかった。
「そう…ですか…」
 だから動揺しているような演技をする余裕すらあった。
「心中お察しします。」
 彼女は自分の演技に簡単に騙され、深刻そうな顔をしていわた。
「そして奥さんの子供ですが、そちらは無事です。」
 これにもあまり関心が持てなかった。弟ではなく自分の子供なら違うのだろうが。
 その後は彼女の遺体を案内されて見た。可能な限り血は拭かれていたものの、ニオイは消えておらず鼻にこびりつくようだ。さすがにその痛々しい姿を見ると少し心が痛んだ。そして最後にタオルに包まれた二人の子供を受け取った。彼女は出産で死に、彼女の子供は双子、その事実に気づいて初めて背中がゾクリとする。
 そして子供の内一人を見るとその子供は自分の方を見て笑った気がした。

(了)


「地球は青かった。」【中学二年チーム】

第一走者:金沢かずえ

「地球は青かった。」
 数年前にある大学の研究チームが発表した論文には根本的な誤りがあった。地球は青い。そう思い込まされていたが。しかし実際には地球は青くなどなく……。
 テレビ中継や新聞の取材班などの様々な人が、まさに今飛び立とうとしているロケットからは見えた。僕は人類の歴史に刻まれるような冒険に今から出かけるのかとドキドキしてくる。バーをつかむ。しだいにバーは小刻みに揺れ始め僕たちの緊張感は高まった。残り3秒、残り2秒、残り1秒。ついに発射の時刻を告げ、我々は地球から飛び立っていった。

第二走者:行田人

 打ち上がってから5秒間ほど僕は、緊張でどうにかなってしまいそうだったが、その後、機体が安定してきて、打ち上げが成功して良かった、と少しホッとしていたら、「村上、何気抜いてんだよまだまだこれからだろ」と隣に座っていた田川が言ってきた。田川は僕の幼馴染で、僕らは小学校の頃に一緒に星に魅せられてしまい、それから僕たちは星を間近で見たいということから宇宙飛行士になろうと努力した結果、奇跡的にも同じロケットに乗れたのだ。このロケットには僕、田川、筧さん、七海さん、如月くんが乗っている。ディスプレイが変わり、地上の司令部が映った。非常事態が起こった時のために地上との連絡は繋ぎっぱなしにする、と事前に言われていたため、僕はディスプレイを操作して連絡が途切れないように設定した。

第三走者:行田人

 まだこの時は誰も気づいていなかった……
まさか地球があんなだったなんて……
 任務は「様々な惑星の調査」である。そのため僕らは今最初の調査目標の惑星デコイに向かっている最中だ。僕は少しお腹が空いてきたので、みんなに「ご飯食べない?」と提案した。みんなもお腹が空いていたのか僕の案は直ぐに可決され、みんなそれぞれ持ってきていた宇宙食を開け、食べ始めた。僕はショートケーキを頬張った。地上で食べるショートケーキと寸分違わぬ味で、あまりの感心に僕は「最近の宇宙食はよくできてるなぁ」と呟いてしまった。みんなが黙々と食べていたから、その声がとても響いてしまい、とても恥ずかしくなった。

第四走者:神野祐介

「Mr.Kakei,something is approaching! Be careful!」
ディスプレイからそう聞こえた瞬間、機体が大きく傾いた。ショートケーキがどっかにぶっ飛ぶ。
「何!」七海さんがそう叫ぶ。
「通信部との連絡が途絶えた!アメリカの機体やイギリスの機体ともつながらない!」冷静な筧さんが動揺している。
ドン、また何かがぶつかる音がする。
反射的に窓の外を見る。
「何だよあれ……」思わず呟く。
窓から見えたものは黒い物体、ウニのような見た目をしている。
「おい!また来るぞ!」ドン!田川が叫ぶと同時に機体が大きく揺れる。
ビービービー酸素濃度が薄くなっています酸素濃度が薄……
「しまった!今の衝撃でどこかが壊れたんだ!」筧さんが叫ぶ。
「ISSまではあと?」如月くんが冷静に質問する。
「あと四時間の予定……」絶望だ……
「ウニがまた変形した!」
すぐさま窓の外に目を移す。

第五走者:音井奏介

「攻撃される!早く反撃の準備を!」
そう言われると即座に僕は非常用攻撃ボタンを押した。
機内の激しい音とともに発射口にロケットのジェットエネルギーが集まり、発射口が光だした。
今度はウニのような物体はカラスの頭のような形に変形し、再び我々に対し攻撃の準備をし出した。
「Warning! 35 seconds left until that’s attack!」
「おい村上早く!あと30秒しかねえ!」
「だめだ、あと35秒はかかる!」
「くそ!ここまでか!」如月くんが言う
ウニの攻撃により、機体が大破する。しかし僕は機体が大破しても、まだなんとか
生きていた。(こんなところで、死にたくない)そう言ったつもりだったが、なんの音も聞こえない。真空空間で音が出るはずがなかったのだ。体が真空に包まれる。無音と窒息の苦しみで、視界が真っ暗になった。
 〜
「おい村上!何寝てんだ!もう地球とさよならしたんだぞ!」
僕は田川にお言われ、目を覚ます。
「まじ⁈地上に手振りたかったんだけど!」
「それより、ご飯食べない?」
みんなも空腹だったようで、宇宙食を食べることになった。

第六走者:神野祐介

 僕はショートケーキを頬張った。地上で食べるショートケーキと寸分違わぬ味で、あまりの感心に僕は「最近の宇宙食はよくできてるなぁ」と呟いた。
その後、急に七海さんが
「ねえ、なんで皆そんなに普通でいられるの?さっきのは何?なんで私たち生きてるの?てかループしてない?何?ドッキリ?」と捲し立てて喋った。
「だよな!七海さん、覚えているのか!」筧さんも急に変なこと。言う。
「さっきのは本当だったということですか……?」如月くんまで…
「え?なんのことすか?」よかった。田川は普通のようだ。
「何も……覚えていないのか?」筧さんが田川に尋ねる。
「はい…なあ、なんか心当たりある?」
「いや…全く…」そう答える。
「ウニが来るよ!」七海さんが叫ぶ。
ウニ…?
特に何も来ない。
「…あれ?」
「おい、田川ちょっと」田川に耳打ちする。
「なんかおかしくないかこの人たち」
「ああ、地球を出た瞬間、急に」そうだ。確かに。
「なあ、この人たち、本当にこれまで僕たちが接してきた皆なのかな?」うん?どういうことだ?
「どゆこと?」
「だからさ、宇宙人とか…」
「そんなわけ…」そう言いながら、ウニが!と叫んでいる人たちに目をやった。まさかそんなわけ……。

第七走者:金沢かずえ

 ウニだなんだ言ってる奴らは困惑したような表情で目を合わせあっている。
僕と田川はより一層やつらへの不信感を募らせていた。
今までと違う仲間の輪に入るは少し怖かった。
「筧!七海!どういうことだよ」僕は改めて全員に尋ねる。
「今はウニがやばいの!」少しキレ気味で七海が答える。
三人が攻撃に備える構えを見せている中でまたしても僕と田川はポカンとしてしまった。
機体の警報がなる。
機体が大きく揺れる。
「またかよ!!」筧が叫ぶ。
無線からは、地球への緊急帰還がかかっていた。

第八走者:音井奏介

 機内についているモニターを見ると、正面からトゲトゲした黒い物体が僕らに攻撃したのが見えた。
「このままじゃまずい!もう押すよ!」
「しょうがない…やってくれ」
七海が言った言葉を如月が承認すると、音声が流れ始めた
「Warning! 35 seconds left until that’s attack!」
「…これは…非常用攻撃ボタン?」僕がそう言い切る前に田川が怒鳴った。
「おい七海!何やってんだ!如月!お前も承認すんじゃねえ!全部の燃料使い切るんだぞ!地球にすら帰れなくなるかもしれねえ!」
 10秒ほどの沈黙ののちに、筧が言った。
「今計算したが、帰れないことはない。ウニは進行方向の真正面だ。もし外したとしてもジェットエネルギーのパワーで後ろに吹っ飛ばされる。理論的には少なくとも成層圏に入れる。」
「でもなんの成果もないまま帰ったら僕たちは社会的にも死ぬんじゃないか?そんなの嫌だ」
 その時、ウニが変形しだすとともに音声が流れた。
「3、2、1、FIRE」
 機体は前方に大きな光を発射し、後ろに吹っ飛んだ、全員が機体内のコックピットの方に吹っ飛ばされた。七海さんたち3人は前側の光の先を見て「やった! 命中だ!」と言った。田川と僕は真後ろの星を見た。表情が固まった。
「これが、地球?」そういうと、機体は大気圏に突入し、森に向かって高速で落ちていった。
 気がつくと、
「お!やっと気がついた。」そこには七海さんと田川の姿があった。
「ここは?如月さんと筧さんは?」
「2人は元気してるよ、そして結果を報告に行ってて今いない。ここは病院だよ、奇跡的に森に落ちたことで木々が緩衝材になってみんな生存したんだ。」
「はっ、そうだ!地球は青くなかったんだ!信じてもらえないかもしれないが、僕と田川は確かに見たんだ。灰色の地球を!」その話をみんなは聞いて、信じた。「それなら田川も言ってたし、あんなウニがいたんだから地球の色が違うことくらいあっても驚かないし、信じるよ。」七海さんがそう言い、
「よくわかんないけどタイムリープもしたみたいだしね」と付け足した。僕と田川がポカンとしていると、
「ああそっか、2人は覚えてなかったね」2人がドアの方に向かっていくと「そろそろ帰る。じゃあね」さよならを言う間もなく2人は外に行ってしまった
 数ヶ月後、空から黒い物体と化した如月さんと筧さんの報告は世界的に有名になった。宇宙には未知なる生命体がいること、地球が灰色だったこと。地球の色に関しては研究チームから反対されているが、ウニのことは世界的に認められたようだ。我々は目的は達せなかったものの、この新しい発見のおかげで多額のお金をもらい、今はそれぞれ別々に暮らしている。

(了)

Photo by K. Mitch Hodge on Unsplash

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?