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2021年9月に読んだ本

旅情熱帯夜/竹沢うるま

1泊数百円の宿で南京虫にやられたり、列車や舟に乗り込む際の超カオスに茫然自失になったりと、バックパッカーなら誰もが味わう苦味と、それらを超える人の優しさ、風景の美しさに出会う喜び。金子光晴や沢木耕太郎の本のように信頼のおけるオーセンティックなバックパッカーバイブル。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー1・2/ブレイディ・みかこ

主人公の「ぼく」が本当に賢くて優しくて、どうやったらこんな良い子に…が親目線では一番気になるところ。著者のブレイディ・みかこさんが「ぼく」との日々の会話をとても大切にしていることが印象的。そういえば、うちの息子もこないだ学校から帰るなり「お父さん、ISはどうして逮捕されないの?」と聞いてきた。そうした子どもの「なぜ」になるべくしっかりと向き合えるよう意識していきたい。

もうあかんわ日記/岸田奈美

著者の母親が感染症心内膜炎という心臓の病気になるところから始まるこの日記。自分も5年前に同じ病気で生死の境を彷徨ったことがあるので、岸田さんの母にものすごく感情移入しながら一気に読んだ。まるで自分が病室のベッドの上にいるとき、家庭では何が起きていたかという舞台裏を見るような感覚だった。最終話「聖火を手に、歩きながら駆け抜けて」の中で、著者が「ちょっとだけ泣いてる。」と書いている箇所、なんというか感謝の気持ちにあふれて、すごく泣けた。

プロジェクト・ファザーフッド/ジョルジャ・リープ

「こんな俺がどうしたら父親になれるのか?」貧困・暴力・抑圧が幾代にも渡って負の遺産として受け継がれている地域で、連鎖を断ち切るために必要なのは男たちが自分自身のことをさらけだし語り合うことだった。黒人男性限定のコミュニティに、白人女性ながら加わり4年間に渡りプロジェクトを遂行していく著者の強さにも痺れる一冊。

実力も運のうち 能力主義は正義か?/マイケル・サンデル

政治と現代社会の関係性を一つづつ検証しその姿を暴いていく。批評というのがどれほど創造的な行いなのかがよく分かり身に沁みた。この本に書かれているような批評を通じて、はたして自分たちにふさわしい政治とは何かを考えられるようになると思うけど、そうした機会は日本ではだいぶ少ないように思う。

LISTEN/ケイト・マーフィー

「聞く」という行為は「話す」ことに比べて学びの機会が全くないこと。その反映として「ちゃんと誰かに話をきいてもらった」という経験を持つ人が現代はあまりにも少ないこと。多くの人が話を聞いてもらうためだけに教会の告解室に長蛇の列を作ること。など「聞く」「聞かれる」の機会が損なわれている中で、「聞く力」を取り戻すにはどうしたらよいかを多方面から紹介する興味深いテーマの本だった。

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