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2023年5-6月に読んだ本

街とその不確かな壁 / 村上 春樹

村上春樹による村上春樹トリビュートというような作品でしょうか。ちょうど同じ時期に、シネマティック・オーケストラの初期アルバム『Every Day』の20th Anniversary Editionが新曲を交えてリイシューされていたので聴きながら読んでいて、懐かしさと新しさが同居して時間感覚が痺れていくような感覚に存分に浸れた。

取材・執筆・推敲 書く人の教科書 / 古賀 史健

熱い本だった。最後のページまで全力で駆けるように書かれていて、ぐいぐいと引っ張られるように読み進めることができる。本書の中で何度も言及される「読み手としての自分を鍛える」ことの大切さは、文章だけでなく、生きていくこと全てに通じると思う。実践的な内容も素晴らしい本だけど、何よりも魂のこもった熱い文章そのものに打たれる一冊。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 / 藤吉 豊、 小川 真理子

本のタイトルそのままの内容で、パラパラと読めてしまうのだけど、著者の方々がベストセラー100冊の内容をしっかりと噛み砕いた上で、例文などの具体例を豊富に載せているので、わかりやすく参考になるものも多い。ファスト教養のような本のタイトルだが、中身は充実していて、何度か読み直したい本だった。

書きあぐねている人のための小説入門 / 保坂 和志

タイトルとは全く違う内容だった。小説に限らず「何かを表現するとはそもそもどういうことだろうか?」「世の中には読みきれない、見きれないほど無数の作品があるのに、なぜ自分が何かを創作するのだろうか?」という、大きな問いに対してどのように向き合っていくか。という思考過程が一冊の本なったような内容だった。「Ⅴ章 風景を書く - 文体の誕生」は特に素晴らしく、「文体」という言葉が意味することをくっきりと更新してくれた。保坂和志の小説をもっと読んでいきたい。

反音楽史 / 石井 宏

小学校の音楽室に飾られている肖像画 - バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス… なぜ二百年から三百年も前のドイツ人の作曲家だけが「楽聖」として讃えられているのか。まるで、ほかの国には優れた作曲家はいなかったかのようではないか。こうした偏向極まる音楽観を打ち出したのは一体誰のどういった仕業なのか。という疑問を、数々の文献資料などを論拠に暴きだし、事実を曝け出し、問答無用に一刀両断していくという、切れ味が尖すぎている痛快な一冊。

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