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2023年2-3月に読んだ本

時の余白に(正・続・続々) / 芥川喜好

目が覚めるという表現では足りない、自分の中の蒙に光があたり、それを「面白い」と呼ぶということを実際に体感できるほど新たな眼差しを得ることのできる本だった。しばらくはこの本を案内書として、日本の近代が置き去りにしてきた美術の中に、自分自身と本来は地続きのはずの美意識の在り方を探していこうと思う。「続々」が現在新刊として発売中。

美の考古学 / 松木武彦

約80万年前に出現したとされる「左右対称の石斧」から、7世紀になり「古墳が衰え古代寺院が建立される」中世の始まりまで、人類にとって美がどのように発展し、社会的な意味を持ってきたのかを認知考古学の立場から教えてくれる一冊。美を形状だけでなく、数、文様と図形、色彩、質と量、など様々な角度から分析し、それがもたらす心理的効果を紐解いているので、分かりやすく読みやすい。個人的には、土器や石器、動物の皮や骨などの自然素材のマテリアルがほとんどだった時代に、金属が入ってくることによる認知革命に大きなインパクトを感じた。

旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記 / 松木武彦

上述の本の前著。ページ数もこちらの方がかなり多く、より網羅的で教科書になるような充実した内容。

見立て日本 / 松岡正剛

氏神、寸志、案山子、門付、客神、苗代、節供、鎮守、など知っているようで実は良く分かっていない日本の様々な文化や言葉を、ときには和歌や古典から語源を紐解き、ときには現代のニュースと重ねて弄びながら解説してくれるので、次々と楽しく読み進められる。(写真のユーモアに毎回にやりとしながら。)

調香師の手帖 香りの世界をさぐる / 中村祥二

資生堂で40年以上に渡り香料の研究に従事してきた著者による、香りの世界への手引書。香りから嗅覚、身体、臭い、文化と歴史など、香りにまつわる古今東西の様々なトピックスが出てくる中で「バラ」が断トツに多く出てくるのが興味深い。もうすぐ5月になるとバラの季節。これまでバラの香りにはマダムな印象しか持っていなかったけど、この本を携えて神代植物公園に行ってバラの香りのイメージを更新したい。


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