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仕掛け絵本

先回に,ピケットフェンス・アニメーションをとり上げましたが,その紹介動画の中に,動物が動く「動物園」の絵本がでて来ます.私はこの絵本を今はなくなってしまった下北沢のスタディルームというお店で子供たち用に買ったことがあります.残念ながらその本はだいぶ痛んで壊れてしまいました.

ピケットフェンス・アニメーションとは原理は異なりますが,縦ストライプ状に切込みが入っている2枚の絵が重なっていて,ページをめくるときの横に引く力で,手品のように互いに入れ替わって見える「動くクラフト絵本」(表紙写真)も私の手元にあります.(注)ストライプに見えますが構造の説明には適切な表現ではないかもしれません.手元にある本の壊れている頁の写真を示します.残っている絵は白鳥ですが,失われたもう一枚の絵はアヒルの子(多分)で,同じような構造をしている絵でしょう.ストライプというより段差のある積層構造になっていて,ストライプの幅だけ動くと,段差のそれぞれから,別の絵が顔を出すはずです.

皆さんは,例えば,3角柱をたくさん並べてできている看板などを見たことはおありでしょうか?3角柱の3つの面には,それぞれ絵が描いてあり,並んだ3角柱の面が一斉に120°回転するたびに,全面の絵柄が一斉に変わるのです.ストライプ状の切れ込みを通り抜けるたびに2枚の絵柄が変化するのはこの看板の原理と同様なことです.回転に伴って,本のように綴じてある数字板がパラパラと落ちてデジタル表示する時計もありました.

その他の方式では,レンチキュラーレンズ(かまぼこ型がたくさん並んだレンズ)が画像表面に張り付けてあって,右目に入る映像と左目に入る映像が異なることを利用して,立体映像を見せる仕組みもあります.私も昔,これがたいへん気に入り立体的に見える絵葉書をいくつか持っていました.

また,もっと古い私たちが子供の頃には,本の頁を開くと頁の間に挟まれた図形が立ち上がり立体物になるものが良くありました.私もこれに凝って小学生の頃の自由研究でよく作製した記憶があります.この方式は,さらに洗練され,今でもクリスマスカードなどで,繊細な建築物や孔雀などを表示する素晴らしく複雑なものを見かけます.

今日,デジタル,コンピュータの時代になり,バーチャルリアリティVR,コンピュータビジョン,3Dプリンターなどの技術が発達し,その座を奪われた感があります.VR像については,我々の数学月間の会のホームページhttp://sgk2005.saloon.jp/lobbyに,多面体の一覧表(出原氏)へのリンクを掲載しましたのでご覧ください.本年秋には多面体のテーマ企画を計画しています.

しかし,力や光学や数学を駆使したアナログ時代の仕掛けの巧妙さや素晴らしいアイデァを惜しみます.まだまだ色々なアイディアがあり,色々な分野に使われるでしょう.私も,万華鏡や御殿毬のような多面体を仕掛け本で作って見たいと思っています.

仕掛け絵本には,アナログ時代の知恵が駆使されています.仕掛け絵本の専門店でメッゲンドルファーというお店が鎌倉にあります.私もずいぶん昔のことですが一度行ったことがあります.楽しい本がたくさんありました.仕掛け絵本の作り方を書いた本もありました.以下はお店のウエブサイトからの引用です.ーーーー
仕掛け本とは:
ページを開くと折りたたまれた紙が立ち上がる飛び出しや、めくったり、回したり、つまみを引いて動かしたり、ページに穴が開いていたり、本を開くと絵が動いたり、ページを開いたり触れると音が鳴るしかけ等々、本の中に何かしらのしかけが施されている本のこと。しかけ絵本が元々は天文学や医学書等から始まった事からも分かるようにしかけを使うことで難しいことも分かりやすく説明することが出来、触ったり聞いたりなど小さな子どもでも興味を持ちやすくすることが出来るので、勉強するというよりも楽しく遊んでいるうちに覚えてしまう感覚です。ーーーー引用終わり.


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