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結晶群とその一般化(3)

  1. 結晶空間群の発見

  2. 群拡大理論に基づいた空間群の構成

  3. 群の一般化.特性の対称性

  4. 対称性の重ね合わせ.対称化と非対称化

3次元結晶群(点群,あるいは,空間群)は,3次元の幾何空間に作用する対称操作が作る群でした.一般化の第一歩は,幾何学的次元とは異なる何らかの超幾何学的な1つの特性(代表して「色」と呼ぶ)空間を付加する[3次元+1次元]ことで得られました.A.V.シュブニコフは,+/-の2値をとれる特性を,3次元幾何空間の各点に付与しました.これが,反対称群(シュブニコフ群;黒白群)であり,多値の特性を各点に付与したものが色付き群(ベーロフ群;多色群)であります.
もし,付加する特性次元が3次元空間と同様な幾何学的次元であれば,4次元結晶群になります.

  • シュブニコフ(反対称;黒-白)Ш群

  • ベーロフ(多色)Б群

色付きの空間構造を色の見分けができない眼鏡を通して見れば,すべての点が同一色に見え空間の幾何学的構造だけが見えます.このことから,色付き構造を記述する群$${Б^{(p)}}$$(色特性$${p}$$色)は,同型な結晶群 $${G \cong Б^{(p)}}$$ があることになります.$${p}$$色の色付き構造のうちで同色の同価点系が作る$${G}$$の部分群を$${G^{*}}$$とすると,色特性の数$${p}$$は,部分群$${G^{*}}$$の群$${G}$$に対する指数(それぞれの群の位数の比で整数)になります:$${p=(G^{*}:G)}$$

$${G^{*}}$$が$${G}$$の指数$${p}$$の正規部分群であるなら,$${G}$$に同型な$${p}$$色の色付き群$${Б^{(p)}}$$は,群$${G^{*}}$$を色置換群$${P}$$で拡大した正規拡大$${Б^{(p)}=G^{*}\otimes P}$$として得られます.

■ シュブニコフ結晶空間群Шは,Шと同型な古典空間群$${G}$$の指数2の部分群$${G^{*}}$$(注:指数2の部分群は常に正規部分群)を,位数2の反対称演算の群,
$${m'=\{1,m'\}}$$,  $${2'=\{1,2'\}}$$,  $${\bar{1}'=\{1, \bar{1}'\}}$$,  $${4'=\{1,4'(\textrm{mod}2)\}}$$,あるいは,反対称格子や,反並進を含む並進群$${\tau '(\textrm{mod}2 \tau)=\{1, \tau '\}}$$で拡大して得られます.

■ ベーロフ$${Б^{(p)}}$$結晶空間群
$${p}$$色の色付き3次元結晶空間の対称性に関します.$${Б^{(p)}}$$群は,色の見分けの出来ないフィルターを通して見れば1色に見えますから,これに同型な何等かの古典群$${G}$$,$${G\congБ^{(p)}}$$があり,$${G}$$の正規部分群で,指数$${p}$$のものを$${G^{*}}$$とすると,$${G/G^{*}}$$に同型な,色置換群$${P}$$を用いて,$${Б^{(p)}=G^{*}\otimes P}$$のように正規拡大の型で$${Б^{(p)}}$$群が得られます.あるいは,以下の$${p}$$色巡回置換の並進群を用いて拡大します.
$${\tau^{(p)}(\textrm {mod}\tau)=\{ \tau^{(p)}, ( \tau^{(p)})^{2}, \cdots , (\tau^{(p)})^{p}=\tau \equiv 0(\textrm {mod}\tau) \} }$$

このような$${Б^{(p)}}$$群を標記するには,その生成群を明示しての次のように標記します:$${G/G^{*}}$$

Ш群や$${Б^{p}}$$群は色付きの結晶空間群を念頭に記述しましたが,色付きの結晶点群に限定して記述するのは,理解しやすい良い方法かもしれません.色巡回置換による群は,Niggli,Indenbom,Belov,Neronova(1959,1960)が,古典群の正規部分群を含むものはWittke(1962)が研究しました.色付き群の分解表現は,Shubunikov,Koptsikが導き,73種類のWittke-Garrido群$${G_{WG}^{(p)}=G^{(p)*}・G^{*}}$$と,これに同型なVan der Waerden-Burckhardt群$${G_{WB}^{(p)}=G^{(p_{1})*}・G^{(p_{2})*}}$$を導きました.全$${G_{WB}^{(p)}}$$と$${G_{WG}^{(p)}}$$の数え上げは,Koptsikの下で,Kuzhukeev(1972)の修士論文でなされました.
部分群$${G^{(p_{2})*}\subset G_{WG}^{(p)}}$$は,最後に決まった色を保存し,群$${G_{WG}^{(p)*}}$$の中の色置換の型$${G^{(p)*}}$$は始めの点の採り方に依存します.

色付き空間群の導出は,1969年ザモルザエフにより始められ,3色,4色,6色までの空間群の数え上げが行われた.色付き空間群の色の塗り替え演算が,色並進群にあるものと,色並進を含まない群とに分類でき,さらにそれぞれに共型なものと非共型なものに分類できる.色空間の対称操作は幾何的結晶空間の対称操作と連動するために,許される色数$${p}$$は制限があり,最大で48色,以下24,16,12,8,6,4,3色です.正規拡大による色付き空間群の数え上げは完了しました.

■演習
2次元2色(黒-白)結晶点群を求める

2次元結晶点群10種
2次元黒-白結晶点群
黒-白平面群の例 Pg'
色並進による3色平面群の例 P_{b(3)}g

$${3^{(3)}}$$による3色平面群

3^(3)による3色平面群の例 P6^(3)


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