見出し画像

まごまごナノマシンの鎧

先輩の手伝い。電車で向かう。
雨だ。
かなり余裕をもって朝から準備したのがかえって裏目に出た。普段から全力タイムアタックみたいな朝をすごしているばっかりに、いざ時間にゆとりを持つと贅を尽くした時間の使い方をするのでかえって全然間に合わなくなる。やれ無様なことよ。
常に大事に抱えている”時間がないから”という免罪符の効果は絶大だ。”自分の本来の実力はこんなものではないぞ!”、”もっとできるんだぞ!ほんとは!えぇ!”と、ありもしない潜在能力を主張しながらちからいっぱい虚勢をはることができる。嗚呼なんて素晴らしい!責任を逃れた諦めがこうまでも人を強くさせるのか!!
実に心地が良い。
実際には無意識のうちに最低限必要な時間を見積もっていて、これ以上時間を与えられたところで一体どうすればより丁寧にすばらしく、あの人みたいになれるのかを知らない(正確には知ろうとしない)だけなのだ。そして、その符がなくなって「あれっ!あ、どこいった!どこにもないぞ!」と一度見てそこに無いことは確認済みのポッケやカバンを何度もまさぐることで余剰の時空を埋めにかかる。
すると今朝の準備では、温めたごはんは他のことをしているうちに冷めてもう一度電子レンジの中で回るし。風呂に入らなくてはと3回くらいハッとする。嘘だ。そこまでではない。ただ、名前の無い行動を繰り出している。その動きが意味のないことだと悟られないように。細心の注意を払いながら。さながら太極拳の手練れのように戸惑うことを知らず、未来と過去の呪縛から解き放たれて流線型の軌道を描く。
そうやってぼやぼやしていると、現実世界ではヒゲも剃れないし、髪も整えられない時間になってしまっていた。かつて「時間にゆとりを持って行動しましょう。」とだけ教えられてきた子どもの成れの果て代表のひとりとして世に伝えたい。「必要なのはゆとりではない。速さだ。」
知識と経験と覚悟が得られるのであればゆとりなど全くの不要。それは2秒だってかまわない。「お前に足りないもの。それは、情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ。そしてなによりも、速さが足りない。」そう叫ぶ人をみて粟立つ心を忘れたくないと心から願う。最近忘れがちだ。嫌だな。

少し遅れて現場に合流。
なんとか設営を終わらせて、素敵な個展が始まった。

外が晴れたのでソファで何か見たい。
衝撃。撃滅。抹殺の。
覚悟はいいか?
って聞いてくれるの優しいよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?