経年変化
皮革、木材
経年によって変化していくもの好きだ。
思い返せば幼少期から好きだった。小学校から帰ると、卓球ラケットを握って玉を突いた。ラケットのグリップが汗によって少しずつ黒ずみ、艶やかになっていく過程を見るのが好きだったからだ。同じ理由でけん玉にも勤しんだ。
誕生日に硬式用のかなり本格的なキャッチャーミットを買ってもらった。無論、私はキャッチャーではない。野球部でもない。サッカー部だ。キャッチャーミットは育てるために買った。
大型のスポーツ店で数々のミットの中から吟味した。野球のことはわからないので形と匂いで選んだ。一緒に革を柔らかくするクリームも買った。
ひとりでキャッチボールをする。
右手から左手にあるミットに向かってボール投げる。距離にして20cmというところか。
パチン!っと乾いた音が鳴る。回数を重ねても少しも柔らかくならない。なかなか皺も刻まない。しかし、未来に待つクタクタになったミットを想像し、うっとりとしていた。
私は今日もジーンズを履き、革靴を鳴らしている。
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