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【SGDトーク】グリーンインフラと地域デザインの発想 (ゲスト:塚本文氏)<アーカイブ動画のみ有料>

持続可能な社会の実現に向けて、みどりには何が期待されているのでしょうか?業界や肩書きなどのボーダーを超えた関わり合いの中でこそ、社会の様々な課題も解決していけるのかもしれません。

今回のゲストは国土交通省の塚本文(つかもとあや)氏。「SGD×行政」のテーマの3人目のゲストです。「グリーンインフラと地域デザインの発想 」と題して、2021年11月4日(木)に開催されたSGDトークの模様をお届けします。

SOCIAL GREEN DESIGNや、SGDトークについて知りたい方は以下のURLからご覧ください。

当日の大まかなスケジュールは以下の流れで行われました。
第1部 19:00-19:20 SGDイントロダクション「SOCIAL GREEN DESIGNとは」
第2部 19:20-20:20 塚本文氏によるトーク「グリーンインフラと地域デザインの発想 」
第3部 20:20-21:30 モデレータとのディスカッション
塚本文さんのトーク内容から振り返っていきます。

※塚本さんのお話は個人の意見を述べたものであり、組織を代表するものではありません。


身近なところから何ができる? 

塚本さんのトークは今までのご活動と、トークのタイトルにもある「グリーンインフラ」の紹介から始まりました。

塚本さん:本日は、国土交通省の職員としての経験も踏まえつつ、みどりに関わる一個人の目線から、近年の政策のキーワードとして注目されている「グリーンインフラ」に関して話題提供します。もともと私がみどりに関する仕事を選んだきっかけは、中学生〜高校生時代に環境問題に関する報道を目にしたことでした。中でも、身近で目に見える”自然環境”に着目し、大学ではランドスケープデザインを学びました。その後、デザインそのものから、心地よい空間が実現するために必要なルールづくりに携わることを目指し、今に至ります。これまでの業務では、都市の生物多様性確保に向けた指針づくりや、グリーンインフラの普及などに関わってきました。

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塚本さん:一方、職業生活のほかに、個人としても色々と挑戦しており、まちづくりに関するワークショップに参加したり、学生時代の仲間とコンペに応募したこともありました。

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塚本さんによれば、「今日、このトークには、知識も経験も豊富な方が多く来られており、その前で何を話そうか悩みました。そこで、今日は”ノートの罫線”の役割を担えたらと思って来ました。皆さん自身の中にある思いを、形にしていく時間を共有できればと思います」とのこと。その後、塚本さんから視聴者に対し、みどりによりどのような未来を実現するか?という問いかけを経て、グリーンインフラに関するお話へと続きました。

グリーンインフラとは?

塚本さん:グリーンインフラ(GI)は、自然環境が有する多様な機能を活用した社会整備手法であり、その内容は地域の状況等により様々ですが、近年、生物多様性保全や雨水管理の観点などから欧米にて先行的に展開され、日本でも取組が広がっています。日本の政府計画に初めて登場したのは2015年で、GIの取組は「社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める」ものとされています。その後、2019年のグリーンインフラ推進戦略の策定、2020年のグリーンインフラ官民連携プラットフォームの設立など、国内の取組も進展してきました。

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塚本さん:グリーンインフラ官民連携プラットフォームは、行政、企業などのほか、個人でも会員になることができ、多様な主体によるグリーンインフラの社会実装に取り組んでいます。このプラットフォームには、企画・広報部会、技術部会、金融部会の3つの部会が設けられています。

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社会課題を解決するグリーンインフラ

塚本さん:グリーンインフラは、キーワードとしては比較的新しいものですので、もしかしたら遠い存在と感じる方もいると思いますが、ぜひ、ご自身の取組との関連性を意識していただけたら嬉しいです。グリーンが社会課題の解決につながるという意味ではSOCIAL GREEN DESIGN と近い考え方かもしれません。グリーンインフラの事例には、気候変動への対応や、健全な水循環を目指すもの、投資を促す魅力的な空間づくり、日常生活を豊かにするものなど、様々なものがあります。この「機能の多様性」がグリーンインフラの特徴のひとつです。これはかつて私が勤務していた公園をイメージして描いたスケッチです。書ききれないほど多くの活動がみられます。

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自然環境はボーダレス

塚本さん:SOCIAL GREEN DESIGNで扱う「みどり」の説明にもありましたが、自然環境の中にはいわゆる草木などの緑だけではなく、様々な要素が含まれていますよね。それを水平・垂直・時間という3つの軸で整理してみました。草木は土壌の上に立ち、その中を水が流れ、樹木の大きさによって訪れる生物が変わり、時間によって変遷し、そうして形成される自然環境の内容によって法令による保全対象が検討される、など・・・。こうしてみると、自然環境をとりまく様々な要素の間に境界はなく、全てが隣り合って共存しているのではないかと感じます。ところで、過去のトークの中では、プレイヤーの「専門性」の話題がありました。自然環境がボーダレスということを踏まえると、一見、自分の専門と異なる分野の人でも、お互いの専門領域が「隣り合っている」という視点に立つことで、連携しやすくなる気がするんです。

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塚本さん:今日のSGDトークは、「行政」の第3回ですね。前回までに各ゲストから話題にあがった行政のあり方について、私なりの見方も交えて整理してみました。まずは、行政と民間との関係です。この両者の関係は、ともすると一方通行になる場合もあり得ますが、最近は民間事業者の方々のご意見を反映させる制度や事業により、「相互作用」の関係性が進んでいると見受けられます。これをもう一歩進め、行政も民間も、お互いが一つの公益的な目的に向かって役割分担している「相補関係」が、今後のあり方の一つなのかもしれません。

また、前回までに、職員の専門性に関する話題が何度か出てきました。グリーンインフラの分野では、みどりだけでなく、そこに携わる「人(プレイヤー)」にも注目されています。そのとき、職種や経歴は「フィルター」ではなく、「背景」として語られるのではないでしょうか。

最後に、仕事の担当領域についてです。行政の各部署にはそれぞれ所掌がありますよね。グリーンインフラの特徴は多機能性、多様な主体の連携ですが、仕事上も色々な主体との連携が広がってきたように感じます。そこで、これからの仕事のあり方も、隣の領域との間にあるのは「境界線」ではなく、「のりしろ」で繋がっていると考えて、いろんな領域がくっつきあいながら進められたら面白いのではないかと思います。

10年後・30年後にみどりで何ができる?

塚本さん:では、ここから、冒頭の「みどりによりどのような未来を実現するか?」という話題に入りましょう。SGDでは「みどりでいかに社会課題を解決していくか」という視点で様々な議論が進められていますが、同様に、「社会はみどりに何を期待しているのか」についても意識を向ける必要があるように感じます。
 ここ最近の大きな社会の動きの例として、SDGsが挙げられますが、その目標年は2030年(約10年後)とされていますね。また、カーボンニュートラルの実現は2050年(約30年後)までとされています。では、10年、30年で、私たちみどりに関わるプレイヤーはどのような社会を目指していくか・・・。

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塚本さん:あと10年で何ができるか?みなさんそれぞれイメージしてみませんか。私が思い浮かべたものを1つ出してみます。これは私が学生時代の友人たちとともに、約10年前に応募した団地再生のアイデアコンペのイメージスケッチです。この提案では、人口減少で住み手が少なくなる団地に対し、改築や少しずつ減築して住みやすくしながら、オープンスペースを充実させ、自給自足のような暮らしを実現するとともに、それを管理する人の育成、住人が皆で楽しめるアクティビティを暮らしの中に取り入れていけば、次世代の豊かな居住空間ができるのでは、ということを表現しています。これを提出した当時は夢物語のような提案だと思っていましたが、約10年が経った今、各地で様々な取組が進展しているのをみると、もしかしたらこれも実現可能なのかもしれない、と思っています。

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塚本さん:一方で、10年間でまだ達成できていないものにも目を向けてみましょう。生物多様性COP10において採択された愛知目標は、ほとんどの目標が達成できなかったと評価されています。こうした経緯も踏まえ、IPBES(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)は、「今後の自然の保全と持続可能な利用、および持続可能な社会の実現」に向け、「経済、社会、政治、技術、全てにおける変革(transformative change:社会変革)が求められる」と報告書に示しています。これまでのSGDトークを聞いて、グリーンインフラの展開においても「社会変革」が求められているのではないかと感じています。持続可能な10年、30年後を作っていくために、取組を進めていきましょう。ありがとうございました。

ディスカッション 「グリーンインフラを進めていくには?」

塚本さんのお話の後、エクステリアがご専門の小松正幸さん(株式会社 ユニマットリック)とランドスケープデザイナーの三島由樹さん(株式会社 フォルク)を交えた様々なディスカッションが行われたので、その一部をご紹介します。お2人はSOCIAL GREEN DESIGN 協会の理事でもあります。

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小松さん:グリーンインフラという概念を作り広く啓蒙することによって、行政も民間も前を向いて進んでいけるところがあると感じました。私自身は民間の立場で住宅における造園や外構に関わってきましたが、実際の現場ではグリーンインフラを意識して設計・工事をしている人はあまりいないのが現状です。どのようにしたらグリーンインフラを民間の現場に取り込むことができるでしょうか?

塚本さん:まずは、グリーンインフラが、「他の誰か」のものではなく、「自分ごと」だと感じていただけるようになるといいですね。そのためには、グリーンインフラの社会的、金銭的価値の評価が大事ではないかと思います。同時に、評価されるまでもなく、グリーンインフラが生活に不可欠なものであるという社会の共通認識が広がり、文化になることも必要ではないかと個人的には考えています。

三島さん:日本は緑に恵まれていますが、今まで作られたみどりに対していかに無自覚だったのか?について考えていく必要があります。これから業界外の人が持つ疑問である「何のために作るの?」という部分が大事でしょう。それを塚本さんがどのように考えるのかに興味があります。

塚本さん:人によって答えは様々だろうと思いますが、私の場合、みどりの仕事の役割は都市空間のバランスを保とうとするものではないかと思っています。だから子供たちに「みどりは何のために作るの?」と聞かれたら、「体の調子を整えるのと同じようなものだよ」と答えるかもしれませんね。

視聴者からの質問例

今回も、視聴者から本当にたくさんの質問をいただきました。質疑応答の一部をここでご紹介させていただきます!

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視聴者①:行政と民間の「相補関係」というワードがとってもいいですね!相補関係に向かう際に、行政としてどのように民間や市民にアプローチしていくのが良いとお考えですか?

塚本さん:それぞれの現場によってお答えは違うと思いますが、例えば、行政の中に地域の提案を一元化して受け止める窓口を設け、実現にあたってはエリアマネジメント団体と連携している地域もあると聞きます。計画策定や目標設定段階から民間の方と協働するようなスキームで設計されている事業もありますね。

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視聴者②:草花を活用した取り組みは地域のコミュニティの再活性化に寄与しています。コミュニティガーデンという取り組みがありますが、福祉や教育、安心安全、地域振興などの地域課題の解決につながっていると思うのですが、いかがですか?(基礎自治体の職員の方より)

塚本さん:現場の事例のご紹介ありがとうございます。ご指摘のとおり、分野横断型の課題解決は、グリーンインフラの重要な特徴の一つですね。ご紹介いただき、ありがとうございます。

「SGD×行政」共通の質問

これからの社会に必要なみどりとは?

塚本さん:すごく難しいですが、シンプルに「愛着」かなと思っています。対象となる緑は違ったとしても、それぞれに愛が込められていることが、大切なのではないかと。愛着という言葉に全てを込めて、モデレーターにお渡ししたいです。(塚本後日補足:愛があるからこそ、自分ごとにできるのではないかと思います。)

小松さん:私が考えるみどりの役割は、究極的には生物が生きるために必要なものとして、植物があると思います。植物、自然と共に豊かで潤いのある暮らしを広げていきたいです。

三島さん:10年後にはアクションが形になっていて、30年後にはそれが文化になっていたらと考えています。今まではみどりに焦点を当てる時代でしたが、これからはそれをどう扱うかという時代となります。ここ100年で緑に対するリテラシーが下がったので、それをこれから取り戻していきたいです。みどりを意識しないくらいそれが生活の中に溶け込んでいるような社会を作っていけたらと考えています。

塚本さん:ぜひ、ご視聴いただいた皆様とも、連携していけたら嬉しいです。ご視聴ありがとうございました。

【SGDトーク】SGD×ガバナンス #03

・2015年以降、日本では自然環境が有する多様な機能を活用する「グリーンインフラ」という概念が急速に普及しつつあり、官民連携も進みつつある。
・グリーンインフラが様々な分野と連携することによって、社会課題を解決するとともに、日常の中に彩りある空間を実現できる。
・行政と民間のボーダーはなく、ある目的に向かって、肩書きや担当領域に捉われることなく相補的により良い姿を目指す。
・持続可能な社会の実現に向けて、社会から見てみどりに何が期待されているのか?という視点で、10年後、30年後にできることを考えていく必要がある。

【SGDトーク】 SGD×ガバナンス #03プロフィール

ゲスト

塚本文(つかもとあや)
国土交通省 職員
国土交通省公園緑地・景観課、昭和記念公園などに勤務し、緑に関する政策検討や公園運営等に従事しつつ、まちづくりとグリーンデザインについて提案。団地再生コンペティション2013優秀賞、parkERs “Indoor park ONLINE talk show”登壇、グリーンインフラ官民連携プラットフォーム企画広報部会幹事等。

モデレータ

小松正幸(こまつ まさゆき)

株式会社ユニマットリック 代表取締役社長 / (一社)犬と住まいる協会理事長 / NPO法人ガーデンを考える会理事 / NPO法人 渋谷・青山景観整備機構理事 / (公社)日本エクステリア建設業協会顧問 / 
E&Gアカデミー(エクステリアデザイナー育成の専門校)代表 / 1級造園施工管理技士
RIKミッション『人にみどりを、まちに彩りを』の実現と「豊かな生活空間の創出」のために、エクステリア・ガーデン業界における課題解決を目指している。

モデレータ

三島由樹(みしま よしき)

株式会社フォルク 代表取締役 / ランドスケープ・デザイナー 
1979年 東京生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。ハーバード大学大学院デザインスクール・ランドスケープアーキテクチャー学科修了(MLA)。マイケル・ヴァン・ヴァルケンバーグ・アソシエーツ(MVVA)ニューヨークオフィス、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助教の職を経て、2015年 株式会社フォルクを設立。 これまで、慶應義塾大学、芝浦工業大学、千葉大学、東京大学、日本女子大学、早稲田大学で非常勤講師を務める。登録ランドスケープアーキテクト(RLA)

(執筆:稲村行真)

アーカイブ動画について
▼今回のSGDトークの全ての内容は、以下のYoutube動画にてご覧いただけます。ご希望の方は以下よりご購入ください。

https://form.run/@SocialGreenDesign-archive

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