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変身くん 第2話

Sゲームブッカー


 やがて、たけしは銀色の機械的な円盤内部の床に横たわっていた。それを一つ目でたらこ唇の間から黒い牙が一本飛び出し、犬のような耳を生やした異星人らしき2人の謎の生き物が意味不明な言葉で会話しながら覗き込んでいる。

 二人はたけしを診察台らしき台の上にうつ伏せに寝かせる。その台の横には補助台があり、何やらさまざまな物が入った銀色の箱が置いてある。

 右側の生き物が尾てい骨の辺りに毛のない尻尾を生やさせ、2人でたけしの体を仰向けにする。左側の生き物が砲弾が貫通した穴を粘土のような物で塞いでいる間に右側の生き物が頭髪を包丁のようなナイフですべて剃る。

 次に左側の生き物が大きな目玉を顔の真ん中に「ベチョッ」と埋め込むと、唇がたらこ唇に変化! 右側の生き物が頭頂部に犬のような2つの耳をくっつけ、最後に2人で意味不明な言葉を発しながら口の中に黒い牙を一本差し込む。それらはすべて銀色の箱から取り出していた。

 たけしは黒い牙を差し込まれた直後、命を吹き込まれたかのようにむくりと上体を起こす。診察台から下りると、たけしは二人の生き物そっくりになっていた! 両手を上げて「ガーー」と雄叫びを上げる。

 それはまるで生まれ変わったかのようだった。二人は「それ」に意味不明な言葉で応える。

 再び謎の光に包まれて、たけしは意味不明な言葉を発しながら住宅街に降り立つ。近くの家の塀に立てかけてあった木の棒をつかみ、スタスタと歩き始める。

 間もなく前方から本を片手に男子学生がこちらへ歩いてくるのが見えてくる。

「ウガーー」

 さらに意味不明な言葉も発しながら、本を読みながらでまだたけしに気づいていない「獲物」に向かって駆け出す。その猛獣のような気配に気づき、本から顔を上げる。

「怪物だ!」

 男子学生は冷や汗を流しながら持っていた本を投げ捨て、引き返すように逃げ出す。

 たけしは逃がすまいと木の棒を縦に振り、逃げる男子学生に投げつける。木の棒は後ろから男子学生の頭と胴体を「ズボーッ」と分断し、血濡れの木の棒が「カランカラン」と転がる。たけしは木の棒を拾い上げると、「ブンッ」と縦に振って付着していた血を落とし、スタスタと歩き出す。

 野球帽をかぶり、右手にバットを持ち、左手にグローブをはめ、その中に野球のボールを握った少年がこちらへ歩いてくるのが見える。殺人怪物に出会うとも知らずに。 

「ガーガー」

 たけしは唸り声を上げる。

「うわー! 怪物だ!」

 少年はたけしの姿を見て冷や汗を流す。たけしは木の棒を「ヒューー」と少年に投げつける。

「何か飛んでくる!」

 少年は「それ」をグローブでキャッチすることなく野球道具をすべて投げ捨てて逃げ出す。しかし、木の棒は後ろから少年の首に半分ほど突き刺さり、少年は血反吐を吐いて「ドタッ」と前のめりに倒れる。たけしは息絶えた少年に近づき、首から木の棒を「ズボッ」と引き抜くと、「ブンッ」とまた縦に振って付着していた血を落とす。その光景を星のアップリケの付いた帽子をかぶった少女が見かける。

「きゃーーっ! お化けだー!」

 その姿を見て一瞬動きを止めるたけしだったが、すぐに悲鳴に反応して条件反射的に木の棒を「ブンッ」と少女に投げつける。

「助けてー!」

 少女は背を向けて逃げ出すが、木の棒は少女の頭の上部を「グサッ」と破壊し、脳がまるまる飛び出す! 少女は血反吐を吐いて前のめりに倒れる。たけしから逃れる術はないのかと……。

 そのとき、近くの家の窓が「ガガッ」と少しだけ開き、この世の終わりのような光景を目撃していた謎の中年男の顔半分が覗く。

「なんて怪物だ。私が倒してやる」

 男はそう呟くと、窓を「トン」と閉める。

 その家の一室で白衣姿の男が作業台の上で何かの作業をしている。

「リーサンとかやぐを混ぜる」

 この中年男の正体は爆弾博士。大きなどんぶりに入った湯気の立つ謎の黒い液体を平たい棒で混ぜる。

「コラーを混ぜる」

 缶に入った黒い液体をどんぶりに注ぐ。

「メッチの粉を混ぜる」

 四角い紙を三角に二つ折りしたものから黒い粉もふりかける。

「薬莢に入れる」

 立てた蓋の開いた大きな薬莢にどんぶりの中の混ぜていた液体を「ドボドボ」と注ぎ込み、「パカッ」と蓋を閉める。

「よし」

 別な部屋に移動して、見るからに改造してある銃の上部弾倉の蓋を開け、先ほどの薬莢を入れると、「パカッ」と蓋を閉める。

「よし!」

 爆弾博士は改造銃を片手に、玄関のドアを開けて家を出る。そして、万が一のことを考えてドアを閉める。

「怪物出てこい!」

 改造銃の銃口をたけしに向ける。突然の謎の男の登場と、得体の知れぬ銃を突きつけられ、さすがのたけしも冷や汗を流している。

「ガーー」

 それでもたけしは威嚇の唸り声を上げる。爆弾博士もたけしの姿にか、先ほどの光景を思い出してか、改造銃の銃口をたけしに向けながら冷や汗を流す。

「ズーンドーンバーンベーンガーングーン!」

 引き金を引いた次の瞬間、住宅街に今まで誰も聞いたことがないような凄まじい発射音を響かせて、黒い液体の入った弾丸がたけしに向かって一直線に飛んでいく!

「バー」

 たけしは凄いスピードで迫る弾丸を木の棒で打ち落とそうとするが、その前に弾丸はたけしの胸に突き刺さる!

 たけしは木の棒を地面に落とし、たらこ唇からは血を流し、次第に体がドロッと溶け始める!

 その光景を見た爆弾博士は倒したと確信して背を向け、玄関のドアを開け、家の中へと戻る。たけしの体はさらに「ドロドロ」と溶け、目玉も落ちる。

 そのとき、原形をとどめないほどに溶けたたけしにどこからか転がってきた手斧がくっつく。爆弾博士はすべて溶かしたと思っていたが、黒い牙が溶けずに残っていた。それを見ていたあの異星人らしき二人の操縦する円盤が上空から現れ、すっかり溶けて水溜りのようになったたけしの真上で停止し、最初とは違う色の謎の光をたけしに浴びせる。

「ピューーー」


変身くん 第3話
https://note.com/sgamebooker/n/neffd6b260932?sub_rt=share_pb

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