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形容詞回避と客観的データ提示による効果的な裁判文書作成

はじめに

訴状や準備書面や弁論要旨などのいわゆる裁判文書は、法律手続としての訴訟手続のプロセスにおいて中心的な役割を果たし、その質は裁判の結果に対して大きな影響を与える。口頭主義と言ったところで裁判記録として残されるのは紙媒体であることが大原則で、紙として残らない発声に価値を見出すことは困難である。
このような大切な価値を有する裁判文書を作成する際には、明確かつ効果的な表現が求められる。曖昧な感情を伝えることは求められていない。それでは折角の訴訟活動が空回りしてしまう。本稿では、形容詞の使用を避けて代わりに客観的な数字やデータを提示することで裁判文書の効果を最大化する方法について検討する。

事実の明確化

裁判文書において最も重要なのは、事実を明確に伝えることである。形容詞を使用すると、感情や主観が文書に含まれる可能性がある。それに対して、具体的な数字やデータを用いることで、事実を明確かつ客観的に伝えることができる。例えば「大きな損害」という表現ではなく、具体的な金額を示すことで、事実の明確化を図ることができる。具体的な金額を示した上で評価としての「大きな損害」との表現を用いること自体は決して悪くない。事実と評価をいずれも表現すべきであるが、前者を欠いた後者の存在に裁判上の価値を見出すことは不可能である。

信憑性の向上

客観的なデータは信憑性を提供する。形容詞を避けることによって、裁判文書の信憑性と専門性を向上させることができる。信憑性の高い裁判文書は、裁判所や対立当事者に対して有利な状況を作り出すことができる

証拠の提示

証拠は裁判のキーとなる要素であり、その提示方法は裁判の結果に影響を与える。客観的なデータは強力な証拠となり得る。具体的な数字やデータを基に証拠を提示することで、裁判所に対して説得力のある裁判文書を提供することが可能である。客観的な数字などのデータを客観的な資料に基づいて客観的に主張・立証するとの意識を常に持っておくこと。証拠が薄いケースにおいて書面上の表現が過激化することもあるが、過激な表現は証拠の薄さを印象付けるとのマイナス要素なのでむしろ証拠が薄いケースほど「え、当たり前ですけど?」といった涼しい顔をするくらいのメンタルの強さは持っておきたい。

分析と解釈

裁判文書における分析と解釈は重要である。データを基に分析を行うことで、裁判文書の質を向上させることができる。また、データに基づいた分析は裁判所に対する説得力を高める効果がある。この辺りはまさにChatGPTの得意分野ではないか。データに意味を与える。意味を与える際にはストーリーと文脈を踏まえる方がより効果的だが、ここの作業は人力でやった方が良さそう。ChatGPT時代における人間側の役割はまさに「ストーリーを与えること」である。

結論

形容詞を避けて代わりに客観的なデータを提示することで、効果的な裁判文書を作成することが可能である。裁判文書作成においては、事実と証拠を明確にし、信憑性を確保することが重要であり、これには客観的なデータの使用が不可欠である。その上で、データを分析し、解釈する。この過程において必要なのがストーリーと文脈である。そしてそのストーリーと文脈を踏まえた解釈をするために必要となるのが「語彙力」だということも踏まえておきたい。弁護士として活動するためには豊富な語彙力が要求される。

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