SwordkillJane story4

朝方、シェルターに帰ってきて、目覚めたら夕暮れ。

ぐっすり眠り込んでいたようだ。

餌を催促するミーシャを持ち上げると合成食の缶詰を開けた。

一心不乱に食べる猫を撫でながら窓の外を眺める。

もはや消息さえわからない宇宙へ飛び立った避難船にSOSを送っている電波塔が

美しい夕焼けに映えていた。

かりそめのノアの箱船。

今の地球を見たら彼らは何を想うか。

あの時、あの船に乗っていたら。



幾重にも細菌兵器防護幕が垂れ下がったシェルター。

マシーネの監視衛星から逃れるための地下での生活。

日の光も遮り

妙な匂いの混じった人工的な酸素とざらつく食事。

陰鬱な光景に

お嬢様育ちのグレッツェンは耐えきれなかった。

もう、我慢ならない。

何故、わたしがこんな目に。

避難船に優先的に乗れるはずが側近の裏切りで最後尾にまわされた。

普段から、こき使っていたのでなんとも大層な仕返しをしてくれたものだ。

ここぞとばかりの嫌味たらしい満面の笑みを浮かべて乗船した船窓から、こちらを見下ろしていた。

忘れようとしていた怒りが込み上げて携帯端末を叩き付けようとした瞬間、振動と共に青い受信ランプが光った。

モニターを見ると

望みをかなえるの表記。

以前からコンタクトのあったマシーネからミッション遂行の知らせ。

グレツェッンは、ひととおり目を通すと

アンニュイな目覚めから目を覚ますため窓辺のブラインドをつかんだ。

これでここから解放される。

これ以上、狭苦しい息苦しい生活はまっぴらごめんだ。

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