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集中力革命②

ひなは、ゾーンの中で絵を描くことに夢中になっていた。キャンバスに向かい、自由な発想で色を重ねていく。まるで時間を忘れ、ただ絵を描くことだけに没頭していた。

「ひなちゃん、その絵すごくいいね!」
ふと我に返ると、ミキがレンズ越しに話しかけてきた。
「ありがとう。ゾーンのおかげで、集中して描けるようになったの」
ひなは嬉しそうに答えた。

学校では、ゾーンの普及により生徒たちの成績が目に見えて上がっていた。テストの点数は軒並み高得点。先生たちも驚きを隠せない様子だった。
しかし、その一方で直接会話をすることが苦手になる生徒も増えていた。休み時間になっても、多くの生徒がゾーンに没頭し、教室は妙に静まり返っていた。

そんな中、絵のコンテストが開催されることになった。
ひなは迷わずゾーンを使って作品を仕上げた。描き上げた絵は、ひなの感性とゾーンの力が見事に融合した傑作だった。
結果は見事な優勝。ひなは歓喜に包まれた。

しかし、祝福の言葉をかけてくれるクラスメイトは少なかった。みな、ひなの作品を見ても、うわべだけの反応しかしない。
「どうしたのかな…」
ひなは少し寂しさを感じていた。

「ねえひなちゃん、優勝おめでとう!」
ミキだけが、心から喜んでくれた。
「ありがとうミキちゃん。でも、みんな冷たいんだ…」
「みんな、ゾーンに夢中になりすぎてるのよ。だからリアルなコミュニケーションがおろそかになってるのかも」
ミキの言葉に、ひなは初めて気づいた。

「確かに、ゾーンは便利だけど…友達と直接話すことも大事だよね」
ひなは、ゾーンから視線を外した。
「うん、そうだね。ゾーンに頼りすぎず、自分の力を信じることが大切だと思う」
ミキも同意した。

それからのひなは、ゾーンで絵の技術を磨きつつも、友人たちとの会話を大切にするようになった。
放課後は一緒に絵を描いたり、おしゃべりを楽しんだりする時間が増えた。
ゾーンという便利なツールを上手に活用しながらも、大切なのは、テクノロジーに頼りすぎないこと。

人とのリアルな絆を大切にしながら、自分の心に正直に生きていくこと。

ひなはそれを、絵を通して学んだのだった。

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