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医学生の私が「文学」をまなびにコロンビア大学に留学した理由(自己紹介記事)

(この記事はhttp://bsfukufuki.hatenablog.com/entry/2020/01/26/044026の加筆修正版です。)

こんにちは。
セゾン(ふくふき)といいます。

日本の医学生で、いまはニューヨークのコロンビア大学「ナラティブ・メディスン(物語医療学)」を勉強しています。
ふだんはブログで大学院の入試や、英語の学習法等について話しています。

ナラティブ・メディスンって何?

なんで留学することにしたの? どのくらい留学するの?

留学先は何をしているところなの?

将来は医者になるの?

……ということをいつもめちゃくちゃ聞かれています(笑)!けれど、

そもそもなんで留学したの? これからどんなことがしたいのか?

普段なにしてるの?

みたいなことってブログでは実はなかなか話す機会がないんです。

しかもこういうことの答えって自分でもよくわかっていないんです。

もっとざっくばらんに話せる場所が欲しいな、と思い、

遅ればせながらnoteを始めてみました。そこで、自己紹介のかわりに、いまの自分への「答え」を、一問一答形式で書いてみます。

どこに留学しているの?

Columbia University School of Professional Studies, Narrative Medicine
コロンビア大学で「物語医療学」を学んでいます。

いつから留学しているの?

1月からです。ちなみに今日でNY生活18日目です。

そもそもセゾンってなにもの?

日本の医学生です。いまは半年間の留学の途中です。

物語医療学(Narrative Medicine)ってなに?

まず、こちら(アメリカ)での最近のムーブメントとして、
医学×人文学の学際領域・それによる医学教育の領域である「医療人文学(Medical Humanities)」という領域があります。

……わかりづらいですね(汗)。ざっくりいうと、医学部と文系の学部をくっつけちゃえ! 的な学部です。例えば、医療倫理とか、医療コミュニケーションとかがふくまれます。

私はその中で、「病気について語ること」を扱うコースで勉強しています。

たとえば、

医師や看護師・患者さんにインタビュー研究(質的研究)。

病気を語った文学作品・映画から「病気になるってどういうことなんだろう」ということをみんなで話し合う。

「病気を語る」こと自体を批判的に検討する(「語りたくても語れない人がいる」ことを考える)。

っていう感じです。

なんで留学したの?

もともと「哲学」や「文学」「アート」が好きで、医学部に入ってからも哲学科の学生と読書会をずーっとやっているそれなりに変な医学生でした。

「物語医療学」という学問に出会って、医療をアートや哲学とむすびつける
その「面白さ」「ふしぎさ」に惹かれて、、気がついたらここに来てました!

(コロンビア大は物語医療学の「総本山」なのです!)

気恥ずかしい話ですが、自分の「変な」興味・関心が、少しでも医療をよくする手助けになればいいなと思っています!……そしてその悪戦苦闘、もとい試行錯誤の過程をみなさんとシェアできればなと!

院生やってるの?

半分Yes、半分Noです。
院試には合格しましたが、まだ日本で医学生をやっている身分ですので、今はNon−Degree Studentという立場で留学しています。
修了証はもらえるけど、学位は取れない立場です。

聴講<Non-Degree<正規の入学生みたいな感じですね!

メリットとして他学部の聴講が容易なこと、学費が比較的安く済むことが
あげられます。将来的に、この大学院に入り直して学位を取ることもできるみたいです。

どんなことを学べそう?

「医療×アート、医療×人文学」というすごーく狭い領域の中で、さらに狭い「質的研究法(インタビュー)による研究」を学びます。
私のもともとの関心は「働くこと(Work)の社会学と、医療現場への応用」「医師への調査による質的研究法」 「薬害HIV問題からみえる日本の医療」で、今回はその土台作りのために留学しました。

それぞれの関心について

「働くこと(Work)の社会学と、医療現場への応用」
これまでの日本の質的研究(これ以降、便宜上「インタビュー研究」と呼びます)は、「病気になったとき」「貧困であること」といった「特別なこと」に注目した研究が多いんです。

「ふつうは観られない世界をみてみよう」という研究ですね。

もちろん「ふつうではアクセスされない世界」にも「ふつう」が広がっているということはすごく重要なことで、面白い研究ですよね。

反面、日本では「ふつう」に「働くこと」を知ってみよう!という研究があまり育ってこなかったようにも思っています。

会社で働くこと

異なる業種・職種の人が「一緒に働く」こと

違う考えの人と意見を「すり合わせる」こと

「うまくいかない」毎日の仕事へどうやって向き合っているか……

そうした「誰もが、普通に、あたりまえ」にしている(とみんなが思っている)「普通の人」の働きに目を向けてみたい。

というのが私の根本の関心です。

……私は医学生なので、それが医療現場に役立たないかな〜!役立つといいな〜!と思っています!

「医師への調査による質的研究法」
質的研究法の一つの意義は語る声なきもの、「弱きひと」の声に注目することにあります。実際、日本の社会学研究は伝統的に社会的マイノリティの語りに注目してきました。
けれど「医師」という属性はそうではありませんよね。
こうした「強いひと」への質的研究は(特に日本で)あまりされていません。
私は日本の医療の問題にアクセスするにあたって、まず
「通常の」「働く」ことが「医療職」にとってどういう経験なのか
に関心を持ってきました。
これはともすれば質的研究法の限界に挑戦するかのような手法ですが
医療で起きている構造を明らかにすることが他の領域での議論を活発にして
社会学全体に貢献することもあるでしょう。……あるといいな。

「薬害HIV問題からみえる日本の医療」
かつて日本で薬害HIV問題が起きたとき、医師へのインタビューが実施されました。いまも膨大な医師へのインタビュー録が(一般にオンライン公開されているわけではありませんが)のこされています。
この保管されている記録をお借りして「医師が語ることの困難はどこにあるのか」というテーマの短い論考を以前に書かせていただきました。
薬害という「特別な場面」だから浮かび上がった「(医療の本質に迫る)何か」があるのではないか? という可能性に、個人的に感じ入るところでしたので、今後ともなにか書ければと思っています。

「医療人文学による医学教育」
欧米では「医療×人文学」による教育がおおくの医学部でおこなわれていて、


たとえば「文学と医学」「医療のコミュニケーション」などがメディカルスクールの科目に組み込まれています。
コロンビア大学では、医学生に「診療で気付いたことを話し合って、文学的に解釈する」という教育をしていたこともあるらしいです!(笑)
日本で「医療倫理」「コミュニケーション」って言葉はまだまだきれいごとと思われがちですが、いつか、こういうことができたらおもしろいんじゃないかなー、と思っています。

生徒はどんな人が多い?

医者、人類学者、文学者、社会学者、それをめざしてる学生、などなど、いろいろです。
たとえば、メディカルスクールの学生で学部時代は西洋哲学をやっていたという人がいて、私はちょっとうらやましくなってしまいました。
コロンビア大にはオーラル・ヒストリーの研究拠点があるので、その生徒も来ていたりします。
また背景に関わらず、現在の医療制度・臨床に対して前向きに検討する姿勢が共通しているように思いました(これは教員も同じです)。
私は人文学系の関心を医療に役立てたく留学したのでこのことに満足しているのですが、思ったよりも実用的で、よい意味で批判的な学部だったと感じています。

留学して実際どんな感じ?

英語がめちゃくちゃしんどいです!
がんばってIELTSのOverall 7.0を取ってどうにか留学したんですが、
言葉が出てこなかったり、しゃべっても発音がまずくて通じなかったり、
七転八倒しながらがんばってニューヨーク生活楽しんでます!

NY生活はどう?

めちゃくちゃ楽しいです!
MoMAやメトロポリタン美術館など、NYは現代芸術に触れやすい街です。
また音楽も、カーネギーホールの隣のホールで現代音楽の初演会をやっていたりします。芸術が生まれていく瞬間を目撃できるのはすごくぜいたくな体験だな、と思っています。

留学したあとはどうしたい?

医師になりたいと思っています。
診療科は決めていませんが、どの科でもいま学んでいることは活かせるんじゃないかな? となんとなく感じています。
また現実の問題に目を向けても、代替医療ワクチン問題などさまざまな「医療についてのことば」が行き交う中で、私が学ぶ研究法や視点は必ず有用なものと信じています。
あくまで私のキャリアは医師として続くと思いますが、将来的に、どこかのタイミングで質的研究による医療の社会学に取り組めたらな、といまは思っています。
(国内大学院でよさそうな所があれば教えて下さい!)

また野望としては、私自身が教育者になるかにかかわらず、
日本での医療×文学、医療×人文系の教育キャリアを開いていければこれ以上ない幸せです。

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