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【林業日記21】木の名前を知らずに林業をしているところから脱したい。

「この木はなんて名前?」

そう聞かれても、ほとんど答えられない、新米林業女子、セイカです。

私の暮らす高知のこのあたりでは、杉やひのきなどの針葉樹林が多く、それらは林業という仕事を行う上で、知っておかないと自分の収入にも直結することなので、樹種判別をしながら、作業を行なっています。

さらに、私たち夫婦林業ヤドリギでは、下生えですくすく育った「クロモジ」という落葉低木もお茶にして生産販売しているので、これももちろんすぐに判別ができます。

生産販売している黒文字茶

しかし、それ以外に「じゃあ、この木はなんの木?」と聞かれたら、ほとんど答えられません。

私自身、林業という仕事に就く前、林業家という人々は樹種もたくさん知っているのだろうという勝手な思い込みがありました。

だけど、実際に「この木はこれだ!」と、明確に木の名前を答えられる人は一握り。(少なくとも私のまわりはそうです)

さらに、最近では剪定の仕事や特殊伐採の世界にも踏み入れているので、樹種がわからずにやっていてはいけないと前々から感じていました。

どんな世界においても、無知ほど恐ろしいことはありません。

無知ゆえに失敗して後悔するというのはよくある話で、それならば、知恵や知識をつけた上で施業するのは最善策といえるでしょう。

そう考えた私は自分が今できることは「木を知る」ことでした。

どの木にも名前があり、それぞれの特性があります。

花が咲く時期もちがえば、実がなる時期も異なり、剪定をするとなれば、それに適した時期もあり、それらはいずれも1本1本の木によって異なるのです。

例え、同じ木であったとしても、人間と同じように「人間」と一言でまとめても、人の性格や外見も多種多様であるように、植物も「センダン」と一言で樹種1つをまとめても、意外とよく見ると1本1本異なっていたりするのです。

そんな世界を垣間見せてくれたのが、高知県林業労働力確保支援センターが開催していた「樹木医入門講座」。

身近な友人にも樹木医さんがいるので、私にとって樹木医とは「植物を擬人化してみれるほど、植物愛がすごい人」というイメージでした。(いい意味です)

ちなみに「樹木医」とは公式サイトでは以下のような定義になっています。

樹木の生理・生態を理解し、調査、設計監理、維持管理業務に精通し、診断及び治療をとおして落枝、倒木などによる人的、物損被害の抑制や後継樹の保護育成ならびに樹木の保護・育成に関する知識の普及及び指導を行う専門家です。

「樹木医」とは/日本緑化センターより引用

3日かけて、その樹木医の世界を知るという講座があり、私も参加してみました。

ただただ、木の特徴を見ながら、植物の名前を覚える…という、よくある講座ではなく、実際に1本の木にフォーカスを当てて、もしも自分が樹木医だったら、どういう視点でこの木を今よりもいい状態にしてあげるかを考えてみる講座でした。

チーム別になり、私たちはセンダンが対象木でした
専用道具で土壌もチェック。

もちろんそれだけではなく、講座開催場所のまわりの山林を実際に散歩して、植物観察も。

敷地内にあったイスノキ。
ケヤキの虫こぶ

牧野植物園で実際に樹木医さんに園内を案内してもらいながら、どんな治療を行なったかなどを聞いて回ったり。

倒れかけていた桜の木。現在は治療中🌸

本当に今までみえなかった世界を知ることができ、とても心がわくわくしました。

そのひとつとして「不定根誘導」という治療法が印象的でした。

不定根誘導とは、なんらかの影響で弱った樹木(主に桜)の根を元気にさせるため、2次的に幹から発根させて土壌へ誘導し、それを新しい根として、木を再生させる手法のこと。

別の木ではこんなすごい見た目の桜も!

木の幹である場所から根が出ているのがわかるでしょうか。

一見、そういう謎の植物のように見えるのですが、木が生きるために根を新しく張れるように、人が手助けしてやると、このようになるそうです。

その根が土壌にたどり着き、新しい根として定着し、再生した例もたくさん見せてもらい、この不定根誘導という手法がいかに優れたものであるかを認識できました。

それだけでなく、いかに木にとって「根」が命の根源であるかということもすごく痛感。

根の張り方によって、その木の寿命が変わるといっても過言ではないほどに、木にとって根が本当に重要なんですね。わかってはいたものの、不定根誘導を見ていて、より痛感したことでした。

さらに牧野植物園という高知にある植物園がいかにおもしろい場所かというのも今になって気がつきました。

敷地内ではなんと、大麻取締法で禁じられている「ケシ」(つまり大麻)が栽培されているのです…!

もちろん無断ではなく、園長さんがそういった規制植物を取り扱う関係の仕事をされてきたそうで、研究目的として栽培がされているんだとか。

厳重に守られているケシ栽培の現場

そもそも植物園自体の存在意義として、植物の展示、公開を通して、植物多様性とその保全、植物学および自然環境教育、植物資源を活かす…等々があり、ただの憩いの場として存在しているわけではないんですよね。

なんとなくわかってはいたものの、言語として再認識すると、なるほど納得。とても尊い場所であるし、植物相手に仕事をしていく身としては、学び多き学校のようなスポットであるわけです。

さらに、この牧野富太郎という人物は植物への愛がすさまじく、植物に人生を捧げてきたスゴい人だと知っていましたが、実際に植物園で働いている方のお話を聞いていると、人間味あふれるエピソードがたくさんあって、とても魅了されました。人間味溢れる人が好きです。

すでに終わってしまいましたが、いい展示でした

そして、牧野植物園には比較的大きなヤドリギもあるとのことなので、「夫婦林業ヤドリギ」と屋号に入れているからには一度は拝みに行かねば…!

それでは今回はこのあたりで。ごきげんよう。

サポートありがとうございます!私たち夫婦は山を買うのが夢なので、その資金に充てさせていただきます!