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精索静脈瘤の手術体験談

この記事では慢性的にアソコが痛むようになってしまった結果、精索静脈瘤の手術をするまでに至った記録を綴っていきます。

精索静脈瘤はどちらかと言うと男性不妊の文脈で語られることが多く、私のように痛みが原因で手術を行う人は少数派でしょう。ただ手術としてはやることは変わらないので、迷っている方・不安に思っている方に少しでも情報を届けられますと幸いです。

ちなみに患部である部分、いわゆるキンタマはその呼び方以外にも「精巣、睾丸、陰嚢、タマタマ、タマ」など様々な呼び方がありますが、この記事では親しみやすさと、生々しさを除外する目的で「タマ」と一貫して呼ぶこととします。

※ 最初の方は「なぜ自分に何が起きたか & なぜ手術することになったか」について語るため「とにかく手術の情報だけ読みたいんだ!」という場合は"精索静脈瘤とはどんな病気か"の項までお進みください。

発症から手術に至るまで


発症

それは前触れもなく訪れました。
今でも忘れない 2018/12/27。忘年会の帰り道。

「ん?なんかタマがホールドされている感じがする…。」

鋭い痛みではないのですが、タマが心なしかズーンと重いのです。まるで誰かに握られているかのように。

この時は、この痛みが数カ月に渡って続くものになるとは思いもしませんでした。

検査したものの原因不明
さすがに数日続き不安になったので病院へ。症状をお伝えして触診、血液検査、尿検査、超音波の検査と行いました。

精巣腫瘍や精巣捻転などのタマ関連の危ない病気でないか一通り調べていただきましたが、結果としては異常は見当たらず「診断名なし」でした。

ただこの時左タマの上の微妙にボコボコしていることに気づいていただき「微妙に精索静脈瘤の気がありますね。ただあなたの場合はGrade 0でこれ取るとなったら手術しかないのでやる必要はないです」と言われました。

振り返ると完全にフラグでしたが、なんにせよここからしばらく原因不明のまま悶々とした日々を送ることとなります。

対症療法で過ごす日々
原因不明だったものの、痛みの出る傾向と対策はある程度把握できました。箇条書きにすると次のようになります。

・ きついズボンを履いている時
     -> 常にゆるめのスラックスなどを履くようにする
・座りっぱなし
     -> スタンディングデスクを導入して長時間同じ姿勢でいるのを避ける
・仕事で進まない議論などにイライラした時
     -> なるべく参加する意味のないミーティングには出ないようにする
・不安を感じた時
     -> 割とどうしようもないので、予定詰め込みすぎないなどのコントロー            ルを頑張る

面白いのが物理的なトリガーもあれば心理的なトリガーもあることです。こういった症状を調べていくうちに慢性骨盤痛症候群(CPPS)という病名に出会いました。アメリカでは何冊か書籍も出ています。名前の通り骨盤周辺の筋肉の緊張によって起る様々な症状を表します。

今回の主題とはそれちゃうので詳細には触れませんが、タマや直腸などに起る慢性的な原因不明の痛みに悩まされている方は、もしかしたら該当するかもしれないので下記を参考にしてみてください。このサイトでも紹介されている `Headache in Pelvis` という本がかなり詳しいです(一応日本語訳もありますが、訳がGoogle翻訳にかけただけのものをそのまま出しただけなんじゃないかというくらい酷いので、できれば英語で読んだ方がいいです)。

精索静脈瘤の手術を受けた今でもなお自分の病気はこの慢性骨盤痛症候群でないかと思っているのですが、この病気では長期間をかけて骨盤周辺の筋肉をほぐしていくことが療法として提唱されています。

こういった背景もあり、精索静脈瘤も痛みの原因の一部でないかとは疑いつつも、手術してしまうよりはまずは対症療法とリラックスを続けて痛みが取れないかトライすべきだと考えていました。何より手術の合併症とか怖いしお金もかかるし。

手術に関しては「このままあと一年くらい痛みがひかなかったら、治るか分からないけど腹くくって精索静脈瘤の手術かな?」くらいに考えてました。

そして手術へ

ただ結局は1年と経たず手術することを決断することになります。きっかけは2019年6月の中頃にたまたま気づきました。

「なんかタマ小さくなってね?あと静脈瘤めっちゃ太くなってね?」と。

タマが小さいのも恐怖でしたが、何より静脈瘤のグニョグニョ部分が直径1cmくらいはあるんじゃないかというくらい太くなっており、ものすごい異物感を漂わせていたのが特に恐ろしかったです。最初は気のせいかとも思ったのですが、日をまたいでもその感覚は変わらないので心配になった私は通っていたクリニックへ向かいました。

相談したところ、解決したかったら手術しかないので大学病院で相談した方がいいとのことで紹介状をいただきました。
そして紹介された大学病院に行きはしましたが、手術の方法を色々調べているうちに一番信頼できそうだと感じた銀座リプロというクリニックにも行き、結局はこちらに手術をお願いすることとなります。

ここでは診断が他のところと比べて独特で、まず最初にタマのサイズを計られました。掘りたてのじゃがいものような様々なサイズのタマを模したツールでタマのサイズと比較して測っていました。こんな計測用具あるんですね…世界は広い。

また、エコー検査では異常も見るのですが、静脈の幅も測ってどのくらい太い逆流している静脈があるのかというのも確認していました。単純な脳みそだと自分でも思いますが、この時点で信頼できそうだなと感じました。

診断結果は左側がGrade 3、右が一本だけやや太い静脈があったのでGrade 1。また左のタマは気のせいでなく実際に萎縮していました。正常なサイズの下限が14mlだそうなのですが私の左タマは13mlでした(右は16mlでした)。
ちなみに手術してもタマの機能は戻るがサイズは元に戻らないそうです。こんなになるまで放置してごめんな俺のタマ…。

痛みの直接の原因かは分からないですが神経が圧迫されて炎症を起こしている可能性はあるのとタマが萎縮してしまっていることから手術をすることに決めました。

精索静脈瘤とはどんな病気か

実際の手術の話に行く前に精索静脈瘤とはなんぞやという話とそれに対する手術を説明します。

真面目に調べているつもりではありますが、何分医療情報を素人の知識を元に判断するのは危険なので、必ず信頼できる泌尿器科の先生とご相談ください。あくまでここに書かれている情報は参考程度に留めてほしいです。

精索静脈瘤自体はありふれた先天性の病気で、成人男性の10~15%が罹っていると言われています。私並みに肥大化するものはもう少し割合が低いかもしれないですが。

まずタマとは別の話ですが、血管には動脈と静脈があり、動脈は心臓から流れてくる血液を送るためで静脈は心臓へ戻る血液を送るためのものです。そして静脈には血液の逆流を防ぐために静脈弁があるのですが、これが正常に機能せず逆流を起こしてしまい血液の滞留がおきている状態を静脈瘤と呼びます。

そしてこれがタマの上あたりにある精索と呼ばれる部位にできるのが精索静脈瘤です。

静脈瘤は特に破裂したりしないそうなので、特に命には影響ないそうなのですが、時に様々な不易をもたらすことがあります。

精索静脈瘤の場合だと、よく言われるのが男性不妊です。血流が悪くなることにより熱が逃げにくくなってしまい、温度に弱い精子の運動率が悪くなることによって起きるのではないかと言われています。

それ以外にも次のような悪影響があるそうです

- DNAが損傷する
- 男性ホルモンが減る
- タマ周辺の違和感・痛み

精索静脈瘤は次のように度合いが分類されGradeが大きいほど上記の悪影響が発現しやすくなります。

Grade 1    立位腹圧負荷(Valsalva maneuver)で触り、確認できる
Grade 2    立位(患者が立った状態)で触り、確認できる
Grade 3    視診で静脈瘤を確認できる

より詳細については次の記事がまとまっていると思うのでご参照ください。

手術について
手術の分類については上に貼った記事にまとまっているのでご覧いただければと。

ただ高位結紮術、腹腔鏡下術、低位結紮術の3種類がありますが、合併症のリスクや手術自体の体への負担(全身麻酔 or 局所麻酔、入院要不要など)を鑑みるに今手術を受けるのであれば低位結紮術一択かとは思います。2018年の4月から保険も適用されるようになったそうなので、金額面でも大きな差異はないと思います。

ナガオメソッドについて
上述した手法以外に「ナガオメソッド」というものがあります。
多分精索静脈瘤の手術を調べた方は一度は目にした単語かと思います。ナガオメソッドも低位結紮術ではあるのですが、そのプロセスが違います。

低位結紮術のプロセスはその術者によるところが大きく、動脈と精管を見つけたらあとは縛るという方もいるらしいです。この場合は他の大事な動脈やリンパ管やなども縛ってしまうので他の血流障害やリンパ浮腫などの合併症のリスクをはらみます。

ナガオメソッドでは一本一本確認して逆流している静脈だけを結紮してくれます。要するに雑にまとめると「めちゃくちゃ丁寧に手術してくれる」ということかと思います。

より詳しくはこのメソッドの考案者である長尾先生本人の記事があるのでこちらをお読みください。

[日帰り顕微鏡下精索静脈瘤手術(ナガオメソッド) | 銀座リプロ外科 医療法人社団マイクロ会](https://ginzarepro.jp/sinryo/nagao_method/)

ナガオメソッドの手術のお値段
ナガオメソッドは基本的には比較してメリットしかなさそうですが問題は手術費です。自由診療のため保険は適用されません。気になるお値段は

でした。いやはや恐ろしいですね。このお金で旅行行きたかった…。ちなみにこの金額はナガオメソッド考案した長尾先生本人に頼んだ場合の +20000円を含んでいます。

普通に保険適用の低位結紮術をした場合はトータル7万くらいで済むらしいので、比較すると20万強お金かかるため迷ったのですが、自分の体のことなのでここでケチって合併症でも起きたら絶対後悔するな〜と感じたのでこちらで手術をお願いすることに決めました。

私は早めに決めてしまいましたが、ここ以外でも保険が効くところで丁寧に手術をしてくれるところはあると思うので、頑張って探してみてもいいかもしれません。

手術前

手術を迎えるにあたって準備することとして陰部の除毛があります。全体的に剃ってきてとは言われますが、手術に対してだけなら切開する部分の周りだけで十分でした。

術後に大きいガーゼをテープで固定するのでそれを剥がす時の痛みを軽減したかったらもっと全体的に剃ったほうがよいです。このテープはかなら広範囲にはられます。なんならケ○毛も巻き込まれます。

自分はやらなかったけどやった方がいいこと
次の二つは事前にやっておくといいです。
- ブリーフの購入
- 保冷剤の購入

術後はタマが腫れてくるのでそれを抑制するために固定(ぶらぶらさせない)することと冷やすことが重要になります。そのため、ブリーフなどのぴっちり目の下着を履いてタマの下にタオルと保冷剤を入れることを支持されるので事前に用意しておくとよいです。独り身だと用意するの意外と大変なので元気に歩き回れる内に準備しておいた方がいいなと思いました…。

手術中

それでは手術当日の模様をお伝えします。

最初に麻酔をされ、それが一番痛いところです(どんな手術でもそうだとは思いますが)。一番痛いと言っても採血の針とかよりちょっと痛いくらいなのでそこまで怖がるほどでもありません。

それからしばらくすると切開して下の方に控えてる血管などを引っ張られます。(ちなみにこの間は目の上にタオルを置いてくれるので見ることができません)。この引っ張られている時は微妙に嫌な気持ちにはなりますが痛みはほとんどありません。

これが終わると目隠しを外していただき、実際の手術の様子をモニター越しに見ることができます。

※ 画像はイメージです


一つ一つ「この黄色いのは脂肪です」「この白いのが精管ですね」など解説いただけます。自分の神経を目視したのは我が人生初だったので貴重な経験でした。執刀する人の腕前によるらしいのですが、出血があまり多くなく思ったよりはグロくなかったです。頭の悪そうな感想ですが、体内って層があるというよりはいろんなものがグジュグジュ入り乱れてるんだなというのが意外でした。

あとはもう手術が終わるのを待つのみです。人によってはスマホいじったりもするそうですが、とてもじゃないですがそんな気分にはなれませんでした。ひたすらモニターを眺めながら「早く終わらないかなー」と心の中で祈っていました。

目隠しを取ってから体感30分くらいで切開したところを縫うのが終わりました。かかった時間 11:23 ~ 12:20 と1時間弱でした。終わってみるとすぐでしたね。

手術が終わったらこんな紙を渡していただき、一つ一つ何を残し何を縛ったかを教えてくれます。

手術後

記事執筆時点ではまだ6日しか手術から経過していないのですが、そこまでで起きたことを記します。

手術直後
手術直後は切開したところを巨大なガーゼで固定されるため、ペンギンのような歩き方になります。誰も手術当日に予定は詰めないと思いますが、長時間の移動は不可能と思っておいた方がいいです。

私は家で横になりお尻の下にクッションを敷いて挙上し、タマをアイシングしながらひたすらSwitchでファイアーエンブレムをプレイしていました。はたから見るとただの変態ですね。

切開したところについて
当たり前と言えば当たり前ですが、直接的な痛みを産むのは大体この部分です。最初は結構歩幅を短くしてゆっくり歩かないと痛みが出ます。ただそれも2~3日で終わり、さすがに小走りとかはできないですが普通のスピードで歩くことはできるようになります。

あと、衝撃加えたらとんでもなく痛いのでなるべく避けたいところですね。満員電車とかリスクの塊だと思うので時間ずらせるならずらした方がいいと思います。

タマについて
手術後は体積が増え、黒ずみぽよぽよしてきます。「術後はタマ周辺が内出血起こしたり腫れたりするが、軽度なら心配しないでください。1週間くらいで引いてきます」と説明されたので多分それのことでしょう。

特に痛みはなく支障はありません。なんとなく気持ち不安になるだけです。

実際にこちらは4日経ったあたりから黒ずんだ部分の面積が少なくなり、一つの球体から二つのタマへ再び戻りつつあります。

剃ったところがかゆい
あとこれは手術関係ないのですが、剃った陰毛のあたりが荒れます。めっちゃかゆいです、私の場合夏場にやったというのも関係しているかもしれないですが。本体の痛みよりこっちの方が辛い説ある。

可能であれば手術後2~3日くらいは休んだ方がより安心かとは思いますが、そこまで日常に支障はなく、手術翌日から普通に仕事(デスクワーク)もできたのであまり構えなくても大丈夫です。

おわりに

私は手術らしい手術は初めてでしたが、多分手術は何度やっても怖いものだと思います。自分の体なので手術の結果後遺症が残るなどを考えると不安になるのも当然でしょう。

精索静脈瘤の手術は比較的体への負担が軽い部類なのでそこまで怖がることもないのでしょうが、怖いものは怖いです。もし手術を検討されている方で、この記事を読んで少しでも不安を減らせたならば幸いです(逆に助長してたらすみません)。

あとこういった話って術後の経過とかが気になると思うので1年後とかに覚えていたら改めて経過エントリでも書いてみようと思います。その頃にはタマの痛み消えていてくれ。



他の体験談記事とか引用とか

https://shipponokimochi.com/ginzarepro/

[引用] サムネとジャガイモの画像は photoACより拝借いたしました
https://www.photo-ac.com/


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