菅野残留の今、あえて菅野以後の巨人投手陣を考える

巨人ファンにとって最高のお年玉になった昨日の菅野の巨人残留。もっとも今年の末にも再度メジャーに挑む気持ちはあるだろうが、今年彼がいるかいないかでは全く異なる。菅野残留でもう今季のセリーグは巨人優勝が決まった、という声が出ているくらいだ。「ネクスト菅野時代」について備えていた巨人ファンもほっとひと息というところだろう。そこで今回はそのことについてお気持ち表明したい。

1、2010年代の主役菅野と2020年代の主役は

この10年の巨人投手の主役は間違いなく菅野だ。

2011年のドラフトと日本ハムファイターズからの指名を拒否、そして1年の浪人期間を経て2012年のドラフトで、その日本ハムファイターズを倒して日本一になった巨人に入団し、ルーキーイヤーの2013年では日本シリーズでは無敗の田中将大に土をつけ、2年目の2014年は離脱しながらもセリーグのMVPになるなど名実ともにエースとなった。そのあとの活躍は言うまでもなく、菅野はとにかく2010年代の巨人の主役であった。

その菅野の後を継ぎ2020年代の巨人の主役になれる投手の現段階の最有力の候補は戸郷翔征であろう。巨人のキャンプ地である宮崎県出身で復帰した原監督の鶴の一声で獲得することになったドラフト6位。ルーキーイヤーから優勝決定試合に投げ、また1勝をあげるなど期待され、今年はセリーグ新人王を3つ年上の黄金ルーキー森下と争い9勝を挙げ、あの日本シリーズでも唯一ホークスにひきさがり敢闘賞を受賞。と、まだ二十歳にしてここまででも既にドラマに満ちている。

巨人の首脳陣もおそらくはそう考えているのであろうか。原監督は将来の中心人物への儀式とでも言わんばかりに戸郷を連れて納会ゴルフで一緒の組で回り、宮本投手コーチは戸郷を中心にした世代での台頭を望んだ。さらに投手は編成も戸郷をもり立てるように投手陣を整えているようである。

2、菅野時代の反省と新時代の巨人投手

今年の日本シリーズから見ても分かるように菅野一強の時代の弱点は菅野が倒れると総崩れになることである。あまりにも多くのものを菅野1人に背負わせ過ぎた。

それには菅野の先輩である先代エースの内海は年が7歳差と離れすぎていたこと、近い年代のエース候補であった澤村宮國は期待に応えられなかったことなど巨人の編成の失敗がある。同世代であった石川歩のドラフト抽選は外れたり、そもそも2つ上の辻内が、3つ上の東野が・・・とにかくそんな感じで結局菅野に並び立つ同世代のエース格としてマイコラスや山口など外からの補強に頼り、その投手達は期待に応えたり応えなかったりしながらも巨人を去っていった。

巨人も今シーズンまで【皇帝】菅野に気持ちよく投げてもらうための選手編成をしてきた。これは今季のスタート時の支配下投手だ。シーズンが終わり引退、トレード、自由契約になった選手には★をつける。

34歳以上 大竹(37)、★岩隈 (39)
33歳 野上
32歳 デラロサ、★澤村
31歳 【菅野】、サンチェス 、★高木 、★田原、★藤岡
30歳 鍵谷
28歳 戸根、ビエイラ 、★宮國、★池田

ここから選手会の役員もしていた澤村、宮國も含めチームから菅野の周囲の世代の選手を一斉に出したのは巨人も脱菅野時代に向けた取り組みを進めているのが感じられる。

一方で次世代の主役である戸郷の周囲の世代を見てみよう。今回は育成選手も()つきで含める。

22歳 堀岡、大江、太田、山崎伊、平内、山本一、(奈良木)、(山崎友)
21歳 (田中優)
20歳 【戸郷】、沼田、横川、(直江)、(戸田)、(平井)
19歳 井上、(堀田)
18歳 (笠島)、(木下)、(阿部)

目につくのは戸郷と同い年の直江大輔、横川凱も期待の逸材であること。そして2つ上の世代には原監督から菅野が長い間背負った19を与えられた将来のエース候補、菅野2世と噂される山崎伊織がいることだ。戸郷はこの19番を希望していたが来季から20番となったことは記憶に新しい。原監督の「19番と言わず、菅野がいなくなったあとの18番を自力でとって見せろ」というメッセージが聞こえてくるようである。

どうなるかは絵にかいた餅ではあるがここにいる投手を中心に2020年代の巨人は回っていくことは間違いあるまい。

3、菅野が残留した今季の巨人投手

さて菅野を中心にした巨人投手の過去と、戸郷を中心にした巨人投手の未来を書いてきた。実際に現在、2021年の巨人投手はどうなるのか?スポーツ新聞などで予想されている先発ローテーションを貼る。(成績は2020年シーズンのもの)

菅野(32) 14勝2敗防1.97
戸郷(21) 9勝6敗防2.76
サンチェス(32) 8勝4敗防3.08
今村(28) 5勝2敗防3.16
畠(27) 4勝4敗防2.88
井納(35) 6勝7敗 防3.94

これを見てもまさにエース継承が今季投手陣のテーマでありそうだ。そしてそれがスムーズにいくかどうかは2人以外の助っ人であるサンチェス、メルセデス、井納(FA新加入だが扱いはほぼ助っ人であろう)、そして今回触れなかった菅野~戸郷の谷間の世代の投手達にかかっている。

尊敬する内海の26番を手にいれた今村(28)は澤村宮國田原らがチームを去ったことで巨人投手で最も在籍が長くなった。恐らく菅野がいなくなった時の投手のまとめ役を期待されているだろう。同じ生え抜き左腕先発候補である2桁勝利経験のある田口(26)、背番号が1年で26から47となった高橋優貴(25)、彼らとの競争をハイレベルなものとして簡単に下の世代に主役は渡さんと1年ローテで回ってほしい。

そしてもう1人の先発候補である畠(27)。もともと彼は球の力があり「ネクスト菅野時代のエース」候補であったが、怪我が多く本格的な開花を待たれるうちにスターである戸郷が出てきた。近い世代のドラフト1位桜井(28)や楽天からトレードで来た古川(26)にも当てはまるが、彼ら右腕は先発と中継ぎを行ったり来たりのうちにいずれはトレード、人的補償、戦力外になりチームを去る未来が見えてしまう。まず先発を目指す、競争に敗れて仕方なく中継ぎへではなく、例えば巨人にとって手薄な右の中継ぎに特化した自分へとなる用意をしてもいいのかもしれない。

最後に言えるのは育成や世代交代がチームの目的ではなく、目的はあくまでもリーグ優勝や日本一であり、そのために必要であれば世代交代をするのだ。残留した菅野と原監督が後にどう受け継がせるのか注目のシーズンになりそうだ。

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