見出し画像

参加レポ:セックスレス30年(セックスカウンセリング研修会)前編

昨日6月9日に開催された、日本性科学会主催の第53回セックス・カウンセリング研修会に参加してきました。学会でセックスレスが定義されてからちょうど30年ということで、会のタイトルは「セックスレス30年」。これは行かねば、と。オンライン参加の選択肢もありましたが、カウンセリングのロールプレイや懇親会のために現地参加。会の様子をざっとまとめてみたいと思います。

抄録集と参加証
(職種をどう書くか迷いました)

セックスレスの定義から30年

セックスレスという言葉を生み出した阿部輝夫さんのお話。セックスレスの定義が変わるようです。

(変更前)
特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシャルコンタクトが1ヵ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合。
(変更案)
特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交セクシャルコンタクトいずれもが1ヵ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合。

セックレス・カップルの定義(太字部が変更部分)

なんか変わってるっけ? 「や」は定義の言葉として逆にあいまいになるのでは?と微妙な心境になりましたが、要は、セックスも、セクシャルコンタクト(キスやペッティング等ですね)も、両方ない状態がセックスレスであることをより明確に示したい、という趣旨でした。

ちなみに、この後行われた学会総会(私は非会員のため不参加)で、この変更案が採用されることになった、と当日の懇親会で耳にはさみました。

若者の性行動

社会学から林雄亮さんのお話。1974年から約6年おきに実施されている、若者の性交経験や性に対する関心等の調査結果が紹介されました。

日本性教育協会「青少年の全国性行動調査」より引用
2005年調査以降、高校生・大学生の性交経験率は減少傾向にある。

興味深かったのは、ジェネレーションごと(バブル→団塊ジュニア→ロスジェネ→ミレニアム→Z)のデート、キス、セックスを何歳で経験したかの結果でした。なんとなく予想されるのは、昔より今のほうが経験率は低く(高年齢化に)なっているのだろう、ということです。キス、セックスはだいたいそのような傾向でした。一方でデートについては逆で、ミレニアムとZがそれ以前の世代よりも、若い年齢でデートを経験しているという結果でした。なぜでしょう。今後の考察が待たれますが、低リスク低リターンなコミュニケーション(デート)は得意だが、高リスク高リターンのコミュニケーション(キス、セックス)には、どこか二の足を踏んでしまう、という見方ができるのかもしれません(もしそうだとして何が若者にそうさせるのでしょう?)。なお最新の2022年版調査結果は現在作業中とのことでした。

中高年のセックスレス

学会認定セックス・カウンセラーの荒木乳根子さんのお話。こちらは、40代~70代の夫婦や単身者対象に、2000年から2022年まで延べ4回にわたり行われた、中高年のセクシュアリティの実態の調査結果についてでした。

登壇者の荒木さんの共著(2016年発行)
(数年前に興味深く読んだ記憶がある)

中高年においても、セックスレスはやはり増加していました。いくつかの考察うち、次のことが印象的でした。

有配偶者女性と単身女性を比較すると、単身女性は相手との性交意外の身体的触れ合いが多く、性交渉も濃密だった(前戯の有無・要する時間・満足度など)。配偶者間の性交渉が女性にとって喜びの少ないことが、女性の「ノー」の一因となっていることが推測された。

本研修会抄録集より引用

要は、セックスがあるかないかよりも、その中身がよい(肉体的に・精神的に)と感じるかどうかなのだと思います。もしセックスしても当人にとって中身が伴わなければ、そしてその経験が積み重なれば、「もうしない」と言わざるを得ないということではないでしょうか。

荒木さんが最も強く語っていた(と感じた)のは「セックスはよろこびを共有できるツールなのに、それを手放してしまうのはもったいない」という言葉だったように思います。ミソは、個人に焦点を当てたよろこびではなく、よろこびの共有、という部分だと思われました。幸いにして懇親会で荒木さんとお話しする機会が得られました。そのとき私のような者にも、この言葉についてを、ゆっくりとした口調で、しかし何かを見据えるような真剣なまなざしで話してくれました。

そんな荒木さんに甘えてしまったのか、あるいはお酒の勢いもあり、「セックスレスって切り口としては斬新で分かりやすいんですが、実際に個人で起こっていることの本質とは違うのでは」という大風呂敷なことを私から投げかけてしまいました。百歩譲ってこれはOKとしても、その次の言葉に詰まってしまったことが、悔しいと言うか情けない思いです(セックスでどういう体験をしてきたか、しているかということが、セックスレスという切り口よりも大事では、のようなあまり的を得ない話をしてしまいました)。もしまたお話する機会を得られれば、次はよりしっかりと対話できればなと思っています。


1本にまとめようと思いましたが、案の定長くなりそうなので、今回はここまで。研修会の後半はまた近日中にまとめたいと思います。

後半の目次(案)

  • ドイツ語圏ではセックスレスについてなぜ語りにくいのか

  • アセクシュアルの視点からのセックスレス

  • セックスカウンセリングのロールプレイング演習

最後までお読みくださりありがとうございました。


※ヘッダー画像、文中グラフの体裁修正、本文冒頭部分を修正。(2024/6/14)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?