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【小説】オレンジ色のオトコ_00

 自分では絶対に買わないオレンジ色のラベルがそこにある。テーブルのうえに、ぽつんと取り残されたそれは、アイツが置いて行った飲みガラだ。もう3日もそのままにしてあるのはその光景を気に入っているからだろう。

「わりぃんだけどさ、それ、あと任せてもいい?」

それ、と指さした先にはさっきまでソイツが口を付けていたペットボトルがあった。緑色のキャップに、オレンジ色のラベル。自分では絶対に買わないし、飲まない。まちがいなく、コイツが持ってきた飲み物だ。何も言わずに置いていくこともできるのに、訊ねるその性格が嫌いじゃない。あぁ、うん、いいよと返事をする。するとソイツは思いっきり目じりを下げて、にんまりという音が似合うような口角のあげ方をし、「んんー!」と喉から声を出す。

そのだらしない笑い方も、おどけ方も、すき。すきだけど、そこまで。コイツがわたしをすきになることはない。

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1,083字

一部成人向け表現を含む小説をまとめたマガジンです。

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