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利益トップ企業の変遷と資産運用業の残念なところ

いま、あなたの心の中には、どの様な音楽が流れていますか。
 
3月12日付の日本経済新聞の見出しに「利益トップ企業半数交代 32業種集計、値上げ・改革効果」と言うのがありました。

内容は「業種の利益トップ企業が入れ替わっており、2024年3月期の予想純利益を5年前と比べたところ、電機や食品など半数の16業種で首位が交代する見通しとなっており、インフレなど経営環境が変わるなか、値上げを浸透させた企業や事業構造改革を進めた企業が順位を上げている。」と言うものです。
 
具体的には、日経業種分類に基づき金融を除く32業種について24年3月期の予想純利益と新型コロナウイルス禍前の19年3月期の純利益を比べたところ、上位に浮上する企業の特徴の一つは、インフレが進むなか強みのある製品で値上げを浸透させたこととなっています。

具体的には、食品は首位が明治ホールディングス(HD)から味の素に交代する見込みとなっていて、味の素は調味料や食品の値上げを進め、3期連続で最高益を見込んでいるそうです。

その一方で、明治HDは生乳や輸入原料などのコスト上昇や円安の影響が想定以上に大きく、値上げで補えず、同じ商品を数度値上げしたことで販売数量も減っており、24年3月期の連結純利益は19年3月期比で18%減となる見通しとなるそうです。

そしてもうひとつの特徴が、事業構造改革が奏功したことのようです。

電機はソニーグループが首位に浮上し、ソニーGは低採算だったエレクトロニクス事業をテコ入れしつつ、ゲームや音楽などエンターテインメント事業に注力したことによります。一方、東芝は5年前に半導体子会社売却で多額の利益を計上しまししたが、昨年12月に上場廃止となっています。

さらに、電機では日立製作所が8位から2位に上昇しています。旧日立化成や旧日立金属など非中核事業を売却してIT(情報技術)や鉄道、エネルギーなどの事業に集中する事業構造改革戦略が軌道に乗り、安定して稼げるようになったと言う事です。
 
さて、インフレ、と言っても原材料等の価格上昇、物流等にかかる燃料費と人件費等の上昇など、さらに企業においても人材確保のための賃金アップなど、これらを製品やサービスなどに転嫁することができれば、味の素のように健全な利益を上げることが出来る様です。

さらに、事業構造改革により、自社の強みなどに特化することでも、利益水準を切り上げることが出来る様です。

ちなみに、事業構造改革も、物流費の上昇も反映できない、いや、自ら反映させることを遠慮している業界があります。

それが、投資信託を運用する資産運用業(金融商品取引法では“投資運用業”)です。

資産運用業には、大まかに3つの種類があります。

1つ目は、投資一任業です。これは、投資者と「投資一任契約」(投資に関わる権限を資産運用会社に委任する契約)を締結し、資産運用会社が投資家に代わって投資全般の管理・運用を行います。
主に、投資一任契約に基づいて手数料を受領します。

2つ目は、投資信託委託業です。こちらは、投資信託を設定・運用します。投資信託委託業は、投資信託約款の作成、目論見書の作成、受益証券の発行、信託財産の運用指図(投資者の資金を管理する信託銀行に対して指図します)、運用報告書の作成、運用する有価証券の銘柄選定と議決権行使など、さらに毎日の投資信託の基準価額の算出をなど、多岐にわたる業務を行っています。
主に、投資信託から信託報酬を受領しています。

3つ目は、不動産投資信託(J-REIT=リート)の運用会社です。
リートとは、「不動産投資法人」と呼ばれる会社のような形態をとっていて、株式会社でいうところの株式に当たる「投資証券」を発行し、投資者は、この投資証券を購入します。
投資者の資金は、不動産などに投資し、購入した物件の賃料収入や、物件の売買で得られた収益を投資者に分配します。
運用会社の主な業務は、投資する不動産の選定、賃貸条件の戦略決定、不動産の価値を維持するための修繕計画の立案、さらに財務戦略と資金調達なども行います。
主に、不動産投資信託から信託報酬を受領しています。
 
このうち、特に顕著なのが、投資信託委託業におけるデフレスパイラルです。

例えば、目論見書や運用報告書などは印刷物として銀行や証券会社などの販売会社を通じて、投資者の手元に交付する義務があります(電磁的交付も可能です)。
この印刷や販売会社への送付にかかる物流費用などは、インフレにより上昇しています。

また、日々の基準価額算出にあたっても、販売会社からの設定解約(売買)申込状況をシステムを利用し一定の時限までに把握します。
さらに、毎日の基準価額算出にあたっても、株式等の終値を証券取引所などから受領し、システムを使って、こちらも一定の時限までに算出します(翌日の日経新聞朝刊に間に合うように)。
これらのシステムコストも、システム運用会社からは人件費等に見合う分の値上げを迫られています。

この様な状況でも、投資信託委託業者は、信託報酬を引き下げ続けています。
更に言えば、公募追加型株式投資信託(ETF除く)におけるインデックス型の割合は、2023年には29%超になっているようです。

ある意味、インデックス型の信託報酬の水準は米国の水準に近いものがあります。
ただ、その信託財産の残高は、米国は$30,921Bil(4,545兆円)、日本は$2,027Bil(297兆円)とも言われています(2023年9月)。

残高に大きな差がある中で、信託報酬だけが米国並みになっています。

これは、監督当局や、マスメディアなどによる信託報酬バッシングによる影響、さらにはデフレマインドの蔓延などが要因のひとつだったと思います。

これからは、新しいNISA制度でさらにインデックス型への投資が見込まれます。
これも、アクティブな投資信託への投資から始まり、その中でインデックス型の投資信託が発展してきた米国とは違いがあります。
アクティブ型の投資信託の意義などの理解が少ない中で、これから投資を始める日本では更にインデックス型投資信託への投資が進むと思いますし、インデックス型投資から始めてしまうことにより、アクティブ型投資信託への理解が進む可能性は少ないと感じています。

これとは別に、投資信託委託業者は、ESG投資を始めとして、アセットオーナーとしての役割も期待されています。
この辺を伝えようと思うと、更に字数が増えそうなので、止めておきます。

某有名な独立系運用会社の代表者もおっしゃっていましたが、現状では、生まれ変わっても投資信託委託業だけは、やりたくないというのが、ワタシの本音です。

そうは言っても、受益者の皆さんの力に、少しでもなればと思い、今日も精一杯、走りたいと思います。

改めてお伝えしておきますが、これは、あくまでも個人的な感想です。
特定の個人・団体等とは一切、関係ありません。

本日の1曲は、YOASOBIで「群青」です。

本日は、ここまで。お付き合いいただき、有難うございました。


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