もしも作曲家が音楽をとりあげられたら…★劇評★【舞台=無伴奏ソナタ(2018)】
子どもの頃から「純粋培養」という言葉が嫌いだった。選ばれし者を、条件を整えて、ひたすら効率的に育てていくことは科学的には正しいのだろうが、人から何かを強制されることに強く反発していた私は、絶対に「純粋に培養」されたくなかった。スーパーエリートだったわけでもなく、そんな候補には幸い選ばれなかったが、これが、近未来の管理社会と結びついたら、それはそれは恐ろしい物語になる。米国のSF作家、オースン・スコット・カードの短編小説を演劇集団キャラメルボックスが2012年に舞台化し、2014年に再演。今年2018年に主要キャスト以外をほぼ一新して再々演されている舞台「無伴奏ソナタ」がまさしく、そんな社会を描いているのである。才能を見出され、幼少時から専門職を強制される管理社会の中の政府と個人との息詰まる攻防と、救済を求めて慟哭する人間らしさの漂流が描かれる近未来への警告に満ちたこの作品は、初演以来、張り詰めた緊張感の中で激しく魂をぶつけ合う多田直人と石橋徹郎の演技がますます凄みを増している。演出は成井豊と有坂美紀。(舞台写真撮影・伊東和則)
舞台「無伴奏ソナタ」は5月16~20日に東京・東池袋のサンシャイン劇場で、5月22日に宇都宮市の栃木県総合文化センターで、5月24~25日に愛知県東海市の東海市芸術劇場で、6月2日に長野県松本市のまつもと市民芸術館で、6月23~24日に大阪市のサンケイホールブリーゼで上演される。
★舞台「無伴奏ソナタ」公式サイト
http://www.caramelbox.com/stage/mubansou-sonata-2018/
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