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短篇集

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創作の物語を投稿しております。 ものすごく短いものもあるのでサクッと読めます。 ぜひ一読を。
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記事一覧

新説桃太郎

むかしむかし、あるところに桃太郎という青年がいました。 彼には母と父がおらず、祖母と祖父…

あんたは何ができるんだい?

長く薄暗い廊下。等間隔に並んだ乳白色の蛍光灯が申し訳ない程度の明かりを灯し、両壁には自分…

ほんのちょっとの世界。

僕は世界を少し愛している。 こんなことを言うと、お前は幸せ者だとかなにもわかっていないと…

夢現の階段

「俺さ、お前に言ってなかったことがあるんだ」 沈黙が立ち込める部屋の空気を彼がざらっと塗…

心と躍る。

心が躍った。 これは比喩ではなく、本当に「心」が躍った。 私は人間ではない。 そもそも、数…

目が覚めた

今日は目覚ましが鳴る前に目が覚めた。 まだ外は暗く、空には満月が浮かんでいる。 携帯で時間…

月とハイボール。

ハイボールを3杯。 少し体がほてってきた。 ベランダに出てタバコを吸う。 体も冷えて酔いが少し冷める。 澄んだ空気が気持ち良く、この季節のタバコが1番好きだと改めて思う。 遠くに観覧車が見える。 もう動いてはいないが、その存在感に目を奪われる。 ひとりでいる時間が増え、それに慣れている自分に少し驚く。 昔は隣に誰かいなければ不安になっていたのになと、過去の自分を他人のように感じる。 しかし、この冷たい空気は寂しさも運んでくる。 この季節は自分を見つめ直し、人との関わりを考えさ

散歩と缶コーヒー。

冬の夜の散歩。 冷たく心地よい風を感じて缶コーヒーを飲む。 この時だけは手袋を外し、コーヒ…

暗闇と光

街灯は足元を照らしてくれる。 しかし、灯りのせいで星が見えない。 私は今、真っ暗闇の中にい…