牌譜添削⑧雀傑3さん

さて、本日も牌譜添削いってみましょう!
今回の主さんは雀傑3さん。一度雀豪まで上がったものの、玉の間にはじき返されてしまう悔しいご経験の後、再び金の間で奮闘中の様子。再び金の間を突破し、次は玉の間も攻略できるよう、何かヒントをご提供できるように頑張っていきます!

●成績概観

金の間、玉の間合算

おお、再び2,3着多めのマツカヨ回避麻雀。私なんかに牌譜添削を依頼してくださるほど熱量が高く、真摯に段位戦に向き合ってらっしゃる方にはこのスタイルで苦戦されている方が多い傾向にありそうです。
攻守傾向も典型的低参加型。鳴きも少なく、リーチも少ない。守備を磨いたとしても、この和了率で今後玉の間を攻略していくのは厳しい。テコ入れが必要なのは圧倒的に「攻撃力」になりそうです。

●牌譜検証をして感じた課題

いくつか牌譜を見させていただいて、明確な課題が2つ見えました。しかもこの2つも関連している課題だったので、実質1つです。
逆に言うと、これ以外はとても丁寧に打たれている印象でした。なので、今回の添削を熟読頂き、正しく取り入れていただければ成績は劇的に向上するであろうという自信が結構あります。

①形を早く決めたがりすぎる

主さんは、5ブロック候補が見えると早々にそのブロックに決めたがりすぎる傾向が強いと感じました。5ブロックあればアガれるのは間違いないのですが、その中で強いブロックを選んでいくことや、どちらのブロックが伸びるかしばらくツモの様子を見ることも重要です。形を決めてしまうことは、手の形を限定して受け入れを狭めてしまうデメリットが非常に大きいです。外すターツが弱い場合はデメリットが小さくなり許容できることもありますが、そこを正しく評価するのは結構高度な技術です。
形を先に決めてもよい局面ももちろんあるわけですが、ブロック候補を限定してしまうデメリットを上回る他のメリットがなければなりません。具体的には、安全度・迷彩等です。
しかし、基本的には形を決めてしまった方が得になるケースの方が少ないので、ある程度自然に打つことが重要です。多くの方は、気付かないところで大きすぎる待ち受けロスをくらってしまったり、ミスをしてしまいます。正直相当な上級者以外にはスリム打法はお勧めしません。

②字牌を持ちたがりすぎる

①の課題に関連してですが、その分字牌を無理にでも1枚持つ傾向が強かったです。スリムに構えて字牌を持つことも時には重要ですが、主さんの牌譜では無理に字牌を持つためにスリムにしすぎて損をしているケースの方が圧倒的に多かったように感じます。

恐らく主さんも試行錯誤の上今のスタイルになっているのだと推察しますが、ちょっと考えすぎてしまっているのかもしれません。一度自然に打つスタイルに戻すことを推奨します。

●事例集

8/30 20:02の半荘東1局

打8mとしたところ

これは3mを切りたいです。他にもいくつか候補はありますが、8mは選択肢になさそうです。
確かにこの形では89mのペンチャンターツを最後まで使う確率は高くないかもしれません。でも、先に7mを引いた場合に有効であるという一応のメリットはあります。
それよりなにより、この手では3mが機能していません。上記の7m先引きメリットは小さいかもしれませんが、そのメリットを手放す理由がこの手には存在しないと思います。これは結構重要な視点で、形を狭めるというデメリットを受け入れるには、それに代わる相応のメリットが説明できる必要があります。

8/30 20:02の半荘東2局3本場

打3pで七対子に決め打ち

これは素直に南を切りたいです。
七対子のイーシャンテンではありますが、68mを引いたら一盃口含みのメンツ手の可能性も残ります。西や6sを先にアンコにした場合も同様です。
もちろん上記の可能性は小さく、ほぼ七対子になる手だとは思います。でもここでも上記可能性を捨てるに替わるメリットが説明できません。
この局面、南は既に2枚切れ、いくら字牌でも七対子の有効牌としても3pの方が優秀です。七対子はイーシャンテンから聴牌までが待ち受け3種類しかない狭い手(聴牌までに平均10巡かかると言われてます)です。うち一種が既に2枚切れは痛すぎます。

8/30 20:02の半荘東4局

打9pとしたところ

これも素直に9mを切りましょう。
恐らく8pが既に3枚見えて、この9pもう不要と思ったのだと思いますが、それは2つの理由で間違っています。
1つめは、繰り返しになりますがその残り1枚の8pの待ち受けを捨てる理由がないこと。9mは全く機能していませんし、対面以外には安全でもありません。むしろ安全度は8pを二人が早く切っていてワンチャンスになっている9pの方が上まであります。
2つめは、79p縦受けを見逃している点です。今のヘッドレスのこの形では、79pポンで手を進められることに気付いていたでしょうか? こういうロスに気付けないで中途半端に形を決める意識だけ持つのは、やはり不安ですね。

8/29 22:25の半荘東4局

打3mとしたところ

これも素直に南を切りたいです。
待受ロスが大きくてスリムにしてはいけない典型例として「中張牌(特に3~7)のくっつき」があります。今回、既にターツ候補は5個あります。しかし1つはカンチャン、あとは弱い3対子形含む複合シャンポンと、決して強い形ではありません。また、良形手変わりも多くなく36mのくっつきによる良形ターツ作りは貴重な材料です。
恐らく、3mは6mの筋フォローが利いているから不要と考えたのだろうと推測していますが、それは違います。今回、くっつきに求めるものは何だったでしょうか。はい、「良形ターツ作り」です。その場合筋フォローは関係ありません。6mの良形くっつきは57m、3mの良形くっつきは24m。重複は無く、どちらも貴重なくっつき候補牌なのです。

8/29 22:25の半荘南2局

打1sとしたところ

これも良くないです。素直に発を切りましょう。
恐らく1s1枚切れで、3対子なら不要だろうと考えたのだと思いますが、2s引きの一盃口形があることに気付いていますでしょうか?
また、発は生牌であり安全度も高くありません。むしろ3s2枚カベのある1s2枚の方が心強く感じるほどです。これまでの指摘と同じように、1sを切って受入を狭めることを上回るメリットがありません。

8/29 22:25の半荘南3局1本場

打6pとしたところ

前巡の9sも疑問手ですが、この6pも良くないです。これも中を切りたいです。
この手既に5ブロックありますが、ここで6pを切るとペン7sという苦しい形に依存することがほぼ確定してしまいます。その苦しい形を解消するために、6pは貴重な材料です。5pを引けば絶好の連続形、7pを引けば二度受けとはいえタンヤオ含みの両面、加えて6pを引いても形は苦しいながらタンヤオ変化があります。

●まとめ

正直なところ、似た内容で気になった事例は他にもたくさんありました。ただ、同じ理由であればあまりダラダラ並べても仕方ないと思い、このあたりにします。そのかわり、まとめを長めに書いていきます。
こういう「形を先に決めてしまう」、「字牌を抱える」というのもいずれは必要になる重要な技術であることは否定しません。私自身、段位戦では特にこういうスリムな打ち方が重要であると考えるタイプで、素直進行だけが良いとは思っていません。
ただお気を悪くされないでほしいのですが、主さんには正直これらの技術を取り入れるのは「時期尚早」だと思います。形を狭めることのデメリットを正しく評価し、かつそれを上回るメリットを検証できる人にのみ許される打法で、かなりの高等技術です。まだその域に達していない場合は、上記のように気付かない大損をすることになってしまいます。
逆に言えば、他に気になるポイントは本当に少なかったです。そこは自信を持っていいと思います。よって、主さんにはまずは素直進行に戻すことを改めてオススメします。ブクブクで後手になったとしても、ベタオリ手順はしっかりされていたのでそこまでひどいことにはならないと思います。どうしてもブクブク進行に抵抗がある場合は、「少なくとも1段目(~6巡目くらいまで)」は必ず素直進行にしてほしいです。それだけでずいぶん良くなるはずです。恐らく雀聖に行けるかどうかくらいまではあっという間に登っていけると思います。
そうして主さんが雀聖かそれ以上を伺う雀力をつけたころに、是非高等技術のスリム進行の話をしましょう。今から私もその日が来るのがとても楽しみです!

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