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only

彼女の一番だったことがない
ブラウン管の中から
世界を眺めるように
心は水槽を漂っている

彼女の一番は彼のものだった
彼の一番も彼女のもので
私を一番と言う人が私は怖かった

私だけではない
私だけになり得ない
今世では

誰かのたった一人になるために
必要なものがあるのなら
どんなことでもすると
必死な私がいるけれど
そこにあるのは願いと餓えだけで
半端に条件が揃っても満たされはしない

私は成就を諦め
パスしようとしたボールを
自分でダンクシュートしなければならない
そんなに
跳べるの?

溢れ出す行き場のないエネルギー
集約させろ紡げ放て
誰に受け入れられなくとも
スキップが出来るならそれでいいよ

地図を持たず旅に出るから
藤村の詩を暗唱して
ゆっくりと

あてなどないのに
それはまるで呪いのように
私に留まることを許さない

探してしまうのは
求めてしまうのは
足りないからじゃない
生きているからだ

仕方のないこと
欠乏から出発した生存者は
終わらない戦場を生きる
耳鳴りが途絶えるまで

隙間なく満たし合おうと
心の奥まで望み合った時
きっと奇跡と呼べる瞬間を
私達は通り過ぎるだろう

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