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2023年7月の記事一覧

pray

僕のバスローブがベランダで空に祈ってる
袖が速く乾きますようにって

僕の小鳥が籠で喋ってる
僕の名前 好き 好き 大好き

靴ひとつなきゃ
傷だらけになる脚の裏で
大地踏みしめて小石に悲鳴を上げる
僕等にんげん 人間 ニンゲンさ

闇の奥で正気でいられるか?
全てと切り離された時
君に残るものは何だ

誰も連れてはいけない門をくぐり
どんな言葉で祈りを捧げる
知っていたか気付いていたか
本当はす

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匂い

「そんなもんさ」で済ませられるように
時が過ぎるのを待っていた
「僕はこうなのさ」で逃げられるまで
目を逸らしてうつむいた
水面に映る顔が問いかけても
もう暗いからと後にした

息さえ出来ればいいさと
ひとつひとつ夢を投げ捨てた
本当のことはみんなもう
埋め立ててしまった

命綱が焼き切れて
底へと落ちる間だけ
僕は心残りと出会う

君に言えなかったこと
僕に言わせなかったこと
聞こえないふりをし

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生まれる

生まれたらもう
胎には戻れない
それが悲しいのか
悶え苦しみ泣く
胎が空っぽになり
次はまた別の場所から
栄養を吸い取られるタンクになる

変化は強制され
上手く変態を遂げない蛹は死ぬ
生まれるか死ぬか
時はそのどちらかへと命を押し出す

地球にとどまる人間が
宇宙へ生まれ出ることがあるのなら
二度と呼吸を必要としない身体へと
変化するのだろうか

筋肉も骨も無用となり
臍の緒のごとく剥がれ落ち

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