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踏み出して行く勇気 ~AKB48『Loss of time』~

この曲は、AKB48の59thシングル「元カレです」のカップリング曲で、チームKの曲(田口チームKの唯一のオリジナル楽曲)になります。
別れを描いた曲ではありますけれども、いかにもチームKの楽曲といった力強さを感じさせる曲調の歌になっています。
もっとも、別れを描いているとは言っても、この曲の主題はそこではなくて、何かを犠牲にしてでも前へ踏み出して行こうとする勇気がメインテーマなのですよね。

1番Aメロ

夜の窓に映ってる自分に
問いかけてみたけれど 何も答えない
部屋の灯り 消したら 空見上げ
都合のよすぎる流れ星 探した

窓に映っている自分に問いかけても何も答えが返ってこないというのは、まだ自分の心の中に迷いがある、もしくは決心が付きかねているということを表しているのでしょう。

「都合のよすぎる流れ星」というのは、願い事をすべて叶えてくれる流れ星のことを言っているのでしょう。
この主人公は、今まさに何かを選択しなければならない状況に置かれているのだけれども、なかなか決心が付かない。
それならば、選択などしなくても、自分が思っていることをすべて叶えてくれる流れ星でも現れてくれたらなあということなのではありませんかね。

1番Bメロ

ここからあの街へは
君のこと 連れては行けない

状況はわかりませんけれども、「あの街」へ行くことと、「君」と一緒にいるということとが両立しないということなのでしょう。

この主人公は、何か大きな挑戦をしようとしているのでしょう。
その際に、「君」の存在が足手まといになるとは考えてはいないでしょうけれども、「君」に構っている余裕も、「君」のことを思い続けている余裕もないということなのではありませんかね。

1サビ

どれくらいの勇気 僕が手にすれば
夢を見られると言うのだろう
不確かな希望だけじゃ何も生まれないよ
夜明けまでに決心しなくちゃ
サヨナラ

思っているだけでは何も始まらない。
本気で夢を叶えたいのであれば、今すぐ行動を起こすしかない。
けれども、それには何らかの犠牲が伴うことになる。
それでもやるのかどうなのか、葛藤しているのでしょうね。
タイムリミットは夜明けまで。
「サヨナラ」という言葉が表している通り、この主人公は本当のところ決心が付いているのでしょう。

2番Aメロ

どこの道を選べばいいのかを
一目でわかるような地図が欲しかった
それが例え 近道じゃなくても
いつかは必ず 辿り着くならいい

確実に辿り着けるのであれば、近道ではなくて、どんなに遠回りでも構わないということでしょうかね。
どんなに時間がかかろうとも、どれほどの苦労が待っていようとも、確実に辿り着けるのであれば、その手立てを知りたいということなのでしょう。
けれども、そんな手立てなど無いわけです。
そもそも、確実に辿り着ける程度の対象であるならば、何かを犠牲にしてまで行う「挑戦」には値しなくなってしまう。

2番Bメロ

一番 大事なのは
今すぐに君に話すこと

そりゃそうだ……。
主人公はもう決心が付いている。
後は、「君」に話を付けることだけなのだけれども、どうやって話を付けるのやら。
「君」は君で、どういった心境になるのだろうか。
寝耳に水なのか、それとも薄々感付いていたのか……。
別れを切り出されて、どういった反応を見せるのでしょうかね。
泣いてすがり付くのか、理解を示して笑顔で送り出すのか……。
このシチュエーションにおいて、そういった「君」の側から歌った曲がアンサーソングとしてもう1曲作れそうな気がしてきますよね。

2サビ

どれくらいの不安 人は乗り越えて
旅へ出ることを決めるのだろう
理想と現実の狭間 何を信じろと言う?
まずそれより 朝が来る前に
ゴメンネ

「旅へ出る」すなわち挑戦することには、先の見えない不安もありますし、どうなってしまうのだろうかという怖さもあるわけです。
どんなに素晴らしい理想を掲げたところで、それを実現させる力が自分にあるのか、あるいは実現可能な環境・状況にあるのか、いろいろと考えてしまいますよね。
けれども、そうした不安や迷いを吹っ切っていかなければ、「挑戦」することなどできないわけです。

その前に……、
まずは「君」に詫びを入れて、別れを告げなければならない。

Cメロ

準備万端なんてありえないよ
問題だらけから 勢いで飛び出すだけだ
どこで躓(つまず)いても また起き上がろう
何かを得るためには 目を瞑(つむ)って行け

起こりうる事態を想定して、いろいろと準備はするけれども、想定外なことはいくらでも起こるわけです。
そういったことをあれこれ考えていたら切りがなくなるのですよね。
ある程度の準備が整ったら、失敗することもあるということを前提に、勢いに任せて行動に移すしかない。
失敗したら、何度でもやり直せば良い。

何かを得たければ、危険を承知で突っ込まなければならないときもあるわけです。
「目を瞑(つむ)って行け」というフレーズが意味しているのは、痛い目を見るかもしれないリスクを負って行けということと、この主人公にとってどれほどの存在だったのかわかりませんけれども、「君」すなわち大事なものを捨てて行く覚悟を持てということではありませんかね。

ラスサビは1サビの繰り返しになっていて、最後の文言が、

未来に迷う時間はもうない
Loss of time

になっています。
これから先の未来についてあれこれ迷っていても、それは時間の無駄でしかない。
今すぐ勇気をもって踏み出せということなのでしょう。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「Loss of time」(2022年)


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