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青春のほろ苦い1ページ ~AKB48『Seventeen』~

この曲は、メンバー人気やファン人気が比較的高くて、コンサートやフェスなどでもわりとよく披露されているような印象がありますね。

失恋ソングではあるけれども、アップテンポの明るい曲調になっていて、それがかえって切なさを際立たせている。

1番Aメロの歌詞には、

僕が生まれて育った
海のそばのこの街
久しぶりに帰ったら
ショッピングモールができてた

とありますけれども、この「僕」は、いかなる目的で帰省したのでしょうか?
ただ単に、夏休みか何かで親の顔でも見に帰ったのか、それとも何か他に大事な目的でもあったのか……。

1サビには、

今でも 君が一番だ
卒業アルバムの右の端
やっぱり 君が一番だ
何度めくって
確かめただろう

とありますから、例えば、故郷を出てから何年か経ち、仕事のほうも落ち着いてきたので、「君」に告白(もしかしたらプロポーズ?)するために帰ったとか。

ところが、2サビの歌詞に「結婚したって聞いたよ」というフレーズがあるわけです。
そうなると、「君」が結婚したのをいつ知ったのかによっても、帰省の目的は変わってきますよね。
帰省する前に人伝ひとづてに聞いて知っていたのか、それとも、帰省して地元の友人だか知人だかに聞いて初めて知ったのか……。
後者であれば、告白しに帰ったということも考えられますけれども、だとすると、「君」が結婚していたのを知って、もう少し動揺してもおかしくはないはずですから、おそらく前者なのでしょう。
そうであるならば、「君」が幸せに暮らしているかどうかを確認するために帰ったとも考えられる。
そしてそれはとりもなおさず、自分の気持ちに区切りを付けるためということに他ならないのではありませんかね。

1番Bメロには、

時はいつでも 魔法の杖で
道の景色を変えるけど
波の音と
潮の香り
あの頃のままだよ

とあり、2番Aメロには、

君の実家の酒屋は
コンビニになったんだね
店の中を覗いたら
レジに君が立ってた

とある。
故郷に帰ってみると、ショッピングモールができていたり、「君」の実家の酒屋がコンビニになっていたりと、目に映る街の様子は変わってしまったけれども、聞えてくる波の音や漂ってくる潮の香りは、昔そこで過ごしていた頃のまま変わらない。

スタイリストになるのを夢見ていた「君」は、その夢を諦めたのか、今ではコンビニの店員になっている。
結婚して子供もいて、幸せそうに見える。
そういう「君」の人生の移ろいと、「僕」の「君」への変わらぬ思いを、街の様子の変化と故郷の変わらぬ空気感に重ね合わせているのでしょう。

そして、2サビの歌詞

結婚したって聞いたよ
好きだと言うのが遅すぎた
子どももいるって聞いたよ
話しかけずに
さらば青春

結局、「僕」は、「君」の幸せそうな様子を確認しただけで、話しかけることもせずに立ち去る。
「今でも 君が一番だ」と言うくらい今でも好きなわけですから、結婚して子供もいる「君」に話しかけるのははばかられますし、そもそも一体何を話せば良いのやら……。
そしてなぜか「さらば青春」と、自分の青春にピリオドを打っている。
少々大げさな感じがしなくもありませんが、そういった心境に至る理由は、歌詞のラストで判明するわけです。

ラスサビの歌詞

今でも 君が一番だ
思い出の中 輝いてる
やっぱり 君が一番だ
このまま ずっと
初恋の人

ここまで、「君」が「僕」にとってどういった存在であるのか、はっきりとはしていなかったのですけれども、最後の最後に「初恋の人」とある。
2サビの歌詞に、

結婚したって聞いたよ
好きだと言うのが遅すぎた

とありますから、おそらく片思いだったのでしょう。
それもただの片思いではなく、初恋だったわけです。

引用:秋元康 作詞, AKB48 「Seventeen」(2010年)


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