思いは誰かの心に届く ~AKB48『歌いたい』~
この曲は、AKB48の38thシングル「希望的リフレイン」のカップリング曲になります。
AKB48名義の曲ではありますけれども、センターはSKE48の柴田阿弥が務めていて、構成メンバーも半数以上が姉妹グループのメンバーで占められています。
もっとも、表題曲の「希望的リフレイン」からして、選抜メンバーの3分の1以上が姉妹グループのメンバーで構成されているわけですからねぇ……。
このころのAKB48のシングル曲は、総選挙がらみのケースもあって、やたらと姉妹グループからの参加者が多く、名義は確かにAKB48なのですけれども、その実態はJPN48だったと言っても良いのかもしれませんね。
何やらミュージカル調の曲で、NGTの三村妃乃に歌ってもらいたい曲ではありますね。
ちなみにこの曲は、STU48の課外活動ユニット「STUDIO」3rdが行っている公演の1曲目にラインアップされています。
「STUDIO」は、STU48のパフォーマンスユニットで、1st、2ndでは激しいダンスで観客を魅了してきました。
けれども、大谷満理奈、門脇実優菜、榊美優といったダンスパフォーマンスに秀でたメンバーが相次いで卒業してしまい、その後3rdでSTUDIOにmini STUDIOが合流することにより、池田裕楽、小島愛子、清水紗良といった2期生の歌唱メンが加わることになったわけです。
また、後に2.5期生の岡村梨央も加わっています。
そういったこともあって、「STUDIO」3rdの公演ではダンスから歌の方にシフトすることになり、セットリストを組んだ今村美月の意思を反映して、1曲目にこの曲がラインアップされることになったわけです。
この公演の方向性を示唆した選曲ではありますよね。
とても良い曲だと思うのですけれども、ほとんど披露される機会がありませんでしたので、こうした形で日の目を見ることになったのは喜ばしいことです。
1番Aメロ
「歌」で象徴されていますけれども、ここで言っている「歌」というのは「挑戦」だったり「行動」だったり、あるいは「再起」だったり、聴き手それぞれの置かれている状況に応じて、そういったものに置き換えることができるわけです。
つまり「歌い始める」というのは、何かに挑戦すること、何か行動を起こすこと、あるいはもう一度立ち上がること、そういったことを意味していることになります。
孤独から抜け出して踏み出して行く勇気を得るために、「かすかな光」すなわち、ささやかな希望を頼りに何か(ここでは歌うこと)を始めようと決意するわけです。
そのささやかな希望というのは、憧れだったり、夢だったり、目標だったりするのでしょう。
1番Bメロ
今ここでは誰にも理解されない、あるいは誰にも共感されないとしても、自分の歌が誰かの心にきっと届くはずだということでしょうかね。
つまり、自分を信じて突き進んで行こうということなのでしょう。
「この壁」というのは、そうした自分を阻むもの、それは自分の心の内にあるネガティブな心理であったり、何か具体的な困難さ、あるいはもしかしたら行く手を遮る何らかの障害物のことを指しているのでしょう。
それらを乗り越えていくことで明るい未来が開けてくる。
ここではそう言っているわけです。
1サビ
ここの「理由にはならない」というのが、何の理由にならないと言っているのか少々わかりにくいところなのですけれども、文脈からいっておそらく、何かを諦めることなのではありませんかね。
つまり、悲しいことや悔しいことがあったとしても、夢を追い求めるのを諦めることはできないということなのではありませんかね。
ここでは、歌うことを諦められないと言っているのでしょう。
自分にできることは心を曝け出して歌うこと。
そうすれば、たとえ目の前にいない誰かにでも、自分の気持ちは歌に乗ってきっと届くはず。
この主人公は、そう強く思っているわけです。
2番Aメロ
後ろを振り返らず、前だけを見て歩んで行こうという決意表明ですね。
その決意を自分自身に促すために、歌い始める、つまり何らかの行動を起こそうとしているわけです。
さしずめここでは、歌で自分を鼓舞しているといったところでしょうか。
2番Bメロ
自分の思いは、どこかにいる誰かに届くはずだと信じているわけです。
直後に「みんなの歌声が」というフレーズがありますから、自分のことだけではなく、自分と同じように何らかの行動を起こし意思表示をする人たちについても、その思いはきっとどこかの誰かに届くはずだと言っていることになります。
「大切なその人」というのは、特定の誰かのことを指しているわけではなく、自分の思いを受け止めて共感を示してくれる不特定多数の人たちのことを指していると言って良いのでしょう。
いろいろと否定的な声が聞こえてきて自分の声がかき消されたとしても、共感してくれる人たちのことを想うことで、繋がりを感じることができるということを言っているのではありませんかね。
2サビ
どれほど非力であろうとも、どれほどちっぼけな存在であろうとも、そうしたものも集まってくれば、それはひとつの大きなメッセージ、つまり大きな力となりうる。
どうせ無理だとか、できっこないとか、泣き言ばかり言っていないで、まずはできることから始めてみれば良いではないか。
勇気をもって踏み出した小さな一歩は、きっと誰かの励みにもなるはず。
といったところでしょうか。
Cメロ
自分は孤独ではない。
うまくいかないことがあったり、心が傷つくようなことがあったりしても、声をかけて手を差し伸べてくれる仲間がいる。
仲間たちが励ましてくれるおかげで、自分は歌い続けることができる。
ひとりでは続けることが難しいことでも、仲間がいてくれることで、困難を乗り越えて継続することができるということなのでしょう。
大サビ
どれほど困難な状況の中に置かれたとしても、必ず希望の光を見出すことができるはずだ。
そう信じているということなのでしょうけれども、かなりポジティブな思考ですよね。
もっとも、もうダメだとネガティブな思考の中に閉じこもってしまうよりも、それこそハッタリでも良いから、こうしたポジティブな構えでいる方が道が開けてくる可能性、少なくともその兆候に気付く可能性はぐっと高まるということは言えるかもしれませんね。
ラスサビ後半のフレーズには、自分の思いに共感してくれる誰かが必ずどこかにいるはずで、そうした人たちと繋がりをもって、手を携えていきたいといった意味が含まれているのではありませんかね。
「生きているその限り 私は歌いたい」というのは強い意志表明であり、そこには「私は決して諦めない」という意味が込められていると言って良いのでしょう。
困難に直面しても諦めることなく夢を追いかける。
そうすれば、自分の思いは必ず誰かの心に届くはず。
この曲には、そうした希望に満ちたメッセージが込められています。
引用:秋元康 作詞, AKB48 「歌いたい」(2014年)
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